HIV診療支援ネットワークを活用した診療連携の利活用に関する研究

文献情報

文献番号
200727001A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV診療支援ネットワークを活用した診療連携の利活用に関する研究
課題番号
H17-エイズ-一般-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
菊池 嘉(国立国際医療センター エイズ治療・研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 秋山 昌範(東京医科大学 医療情報学講座)
  • 山本 隆一(東京大学大学院 情報学環)
  • 木内 貴弘(東京大学医学部附属病院 医療情報ネットワーク研究センター)
  • 岩本 愛吉(東京大学医科学研究所 先端医療研究センター感染症分野・感染免疫内科)
  • 岡村 牧男(特定非営利活動法人ネットワーク医療と人権)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV診療ネットワーク(A-net)は、HIV訴訟における和解勧告の所見に基づき、HIV診療支援を行うために、全国のエイズ拠点病院をコンピューターネットワークで結ぶシステムとして平成10年11月より試験運用が始まり、翌11年11月より本格運用に移行した。運用当初は登録患者数が伸びたが、ここ数年は、利用者・患者登録とも増えない、利活用されない状況が目立ってきた。利用が減りつつある現状を分析し、活用されるネットワークとなるためには、いかにすべきか検討する。
研究方法
A-net保守センターのデータからの利用状況を調べる。豪州でのHIV national data systemを視察し本邦で利用可能なものの導入を考える。ネットワーク上で簡易なデータ登録システムを試験運用する。
結果と考察
今年度のA-net利用者数は223名、登録患者数は511名であり、利用者が増えず、登録患者数が伸び悩んだ。稼動施設も118施設と減少し、このうち51施設では利用者が不在であり、事実上の稼動可能施設は70弱であるが、実際に登録データが増えているのは、熱心なユーザーがいる数施設に限られていた。累積データこは3万件を超えたが、要求されるデータが膨大であり、用手入力ではもやは限界に来ている。豪州でのデータシステムは、臨床施設から連結可能匿名化された紙ベースで報告され、中央でコンピューター化されていた。疫学情報に資する情報収集であるので、患者同意は不要であると判断されていた。ネットワーク上に、擬似カルテ環境を設けて、従来の多数のデータ情報の登録ではなく、必要最低限に簡素化しておこない、一時的なパスワード管理下(ワンタイムパスワードシステム)で行った。限られた粒ぞろいのデータ収集の必要性が考えられた。
結論
パフォーマンスが悪く、A-net離れが益々明確になりつつあることが如実に示された。臨床情報から、検査結果に至る広範なデータを用手入力で登録することが基本にあり、導入当初と格段に増えた各臨床施設の患者数では、実際の臨床上での運用に限界が見られた。HAARTのコントロールの指標である、CD4数とウイルス量と、どの薬をいつから内服しており、AIDS指標疾患の存否のみに限り、簡素化したデータ収集でも、疫学的なデータベースとしてのA-netの存在価値が示せる未来が示された。電子カルテを意図した従来のネットワークから、疫学情報の収集、発信を目指した新A-netの構築が次年度以降の急務であることが示された。

公開日・更新日

公開日
2008-06-05
更新日
-

文献情報

文献番号
200727001B
報告書区分
総合
研究課題名
HIV診療支援ネットワークを活用した診療連携の利活用に関する研究
課題番号
H17-エイズ-一般-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
菊池 嘉(国立国際医療センター エイズ治療・研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 秋山 昌範(東京医科大学医療情報学講座)
  • 山本 隆一(東京大学大学院情報学環)
  • 木内 貴弘(東京大学医学部附属病院医療情報ネットワーク研究センター)
  • 岩本 愛吉(東京大学医科学研究所 先端医療研究センター感染症分野・感染免疫内科)
  • 岡村 牧男(特定非営利活動法人ネットワーク医療と人権)
  • 橋本 康昭(東京都荒川区福祉部介護保険課)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV診療ネットワーク(A-net)は、HIV訴訟における和解勧告の所見に基づき、HIV診療支援を行うために、全国のエイズ拠点病院をコンピューターネットワークで結ぶシステムとして平成11年11月より本格運用に移行した。運用当初は登録患者数が伸びたが、ここ数年は、利用者・患者登録とも増えない、利活用されない状況が目立ってきた。利用が減りつつある現状を分析し、活用されるネットワークとなるためには、いかにすべきか検討するいかに臨床現場で利活用されるかの具体案を提出する。
研究方法
A-net保守センターのデータから、利用状況を調査し、年次ごとの推移を検討する。開発から8年以上経た今日においてもセキュリティーレベルが保たれているかを監査し脆弱性の有無を調べる。海外のデータベースも参考にしながら、疫学情報発信のために必要なネットワークのあり方を考案する。
結果と考察
過去3年間の利用状況は、平均して230名の利用者と、511名の登録患者から、3万件を超えるデータが蓄積されてきた。稼働可能施設は118施設であり、最終年度では利用者不在の施設が51施設に及び、利用に偏りが見られた。2年目に行ったセキュリティー監査では、開発後8年を経過した状況でも十分強固に守られていることが明らかとなった。疫学情報の発信という観点からは、有用な情報は得られておらず、ネットワーク上に患者氏名を明らかにすることなどからプライバシーへの懸念もあり患者登録が伸び悩んでいる状況があった。海外では、疫学情報に寄与するものであり、連結可能な匿名情報としてデータを扱っており、患者同意を必ずしも必要とはしていなかった。
結論
セキュリティーは依然として強固に堅持されてはいるが、仮想専用線網の老朽化などもあり、利用者離れが深刻となっている。膨大なデータ収集と、ネットワーク上でのカルテを目標とした当初の形態をあらため、内服中の抗ウイルス剤とCD4、ウイルス量とエイズ指標疾患のみに限っても、参加患者数を増やし、多数の施設から患者登録が行えた方が疫学情報の発信の上では有益であり、全国の370を超えるエイズ拠点病院すべてから参加可能なセキュリティーを備えた、ネットワークの構築が急務である。疫学情報の発信の観点からは、全数同意をとる現行のシステムを改め、現行のシステムのようにカルテの代用となるに様々な個人情報をネットワーク上で閲覧することはやめて、倫理指針に照らして、同意の必要性の有無に関しても検討し、新しいネットワークシステムを構築することが急務であることが示された。

公開日・更新日

公開日
2008-06-05
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200727001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
セキュリティー監査により、HIV診療支援ネットワークのセキュリティーは、未だ通用するものであることが示された。しかし、機器の老朽化から、この先の永続的な稼働は困難である。新世代の暗号化したシステムを導入することで、これまでと同等のセキュリティーレベルを保ちながら、データベースの共有できる可能性を提示した。
臨床的観点からの成果
現在までに、500症例の経時的な臨床データ3万件を超す蓄積がある。500症例の経時的な変化に加え、今後も症例数を増やすことにより、HIV感染者の治療開始後の余命、予後の検討に役立てることができる。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
研究成果が平成18年12月25日に開催された、第14回A-net部会の資料として用いられた。今後も、A-net部会の資料として活用される予定である。
その他のインパクト
日本予防医学リスクマネージメント学会、医療安全教育セミナー2007春季「医療安全と情報、教育」のモーニングセッション「リスクと情報」においてA-netの現状と課題として公開した。国立国際医療センター(エイズ治療・研究センター)及びエイズ拠点病院を中心に、我が国におけるHIV/エイズ診療の最高度の水準を維持・発展させるとともに、患者等への良質かつ適切な医療の提供に寄与している。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
-