慢性寄生虫感染症の侵入監視及びその健康管理体制の確立

文献情報

文献番号
200726036A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性寄生虫感染症の侵入監視及びその健康管理体制の確立
課題番号
H19-新興-一般-007
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
宮平 靖(防衛医科大学校 国際感染症学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 赤尾 信明(東京医科歯科大学大学院医歯学研究科 国際環境寄生虫病学分野)
  • 大前 比呂思(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 黒木 俊郎(神奈川県衛生研究所 微生物学腸管系細菌グループ)
  • 春木 宏介(獨協医科大学越谷病院 臨床検査部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
14,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
急増する在留外国人の出身国では、国内では発生が無いまたは撲滅された感染症群が流行し、慢性感染症群の国内流入の可能性が指摘されているが詳細は明らかではない。本研究では慢性寄生虫/原虫感染症の在留外国人における実態調査とその監視体制の確立、迅速診断/治療法の開発、健康管理/教育体制の整備、ガイドライン作成を目的とする。
研究方法
在留外国人の多い地方自治体(神奈川県)をモデル地区として解析を進めた。
(1)在留外国人診察に力を入れている医療機関での健診。(2)キリスト教会での健診。(3)教育啓蒙活動の一環として「在留外国人の方々への健康手帳」を日本語、英語、スペイン語、中国語の4ヶ国語で策定し、無料で配布。(4)受診意欲刺激のために、特殊健診項目(超音波検査)を実施。(5)各種寄生虫感染症診断手法の実施。(6)新規感染制御手法の開発研究。(7)新規診断手法の開発研究。(8)神奈川県庁の訪問、協議。
結果と考察
在留外国人健康診断を実施し114名(タイ、ベトナム、カンボジア、フィリピン、韓国、ペルー、ブラジルなど)の受診者を得た。
回収糞便検体47検体のうち、1例から鉤虫卵を検出した。クリプトスポリジウムおよびランブル鞭毛虫の精査では、いずれのシストも検出されなかった。血清105検体のdot-ELISAスクリーニング検査結果は、赤痢アメーバ33検体(31.4%)、肺吸虫3検体(2.9%)、顎口虫2検体(1.9%)、多包虫1検体(1.9%)が陽性と判定されたが、最終結論ではない。マラリア原虫抗原検査、シャーガス病、内蔵リーシュマニア抗体検査では105検体すべてが陰性であった。中南米系12人の中で、シャーガス病の病態変化は心臓超音波検査では陰性。尿、血液検体からは日本住血吸虫症陰性、超音波検査では住血吸虫症病態所見例は見当たらなかった。
実験シャーガス病を用いたワクチン手法開発研究、マラリア制御手法の開発研究では、抗原特異的CD8Tの機能発現に着目した新規感染制御手法が開発されつつある。
結論
平成19年度の在留外国人健診では、114名の受診者の中で、1名の糞便より鉤虫卵を検出したのみであり、他は現症として寄生虫感染症の罹患を疑わせる結果は得られなかった。新規感染制御手法の開発研究では、マラリア等、細胞内寄生病原体に対する制御手法の解析を推進中である。

公開日・更新日

公開日
2008-05-02
更新日
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