内臓肥満の要因と動脈硬化促進に関する総合的研究

文献情報

文献番号
200722027A
報告書区分
総括
研究課題名
内臓肥満の要因と動脈硬化促進に関する総合的研究
課題番号
H18-循環器等(生習)-一般-045
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
下方 浩史(国立長寿医療センター研究所疫学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 山下 均(中部大学 生命健康科学部)
  • 安藤 富士子(国立長寿医療センター研究所疫学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肥満、特に内臓肥満は生活習慣病の重要な要因である。本研究ではその発生要因、機序及び遺伝素因を明らかにするため、動物実験による基礎研究と地域住民を対象とした臨床疫学研究による総合的検討を行った。
研究方法
基礎研究では、内臓肥満の病態進行と関連する分子として見出されたFABP3について、遺伝性肥満および糖尿病モデルマウスを用いて検討を行った。臨床疫学研究では国立長寿医療センター研究所・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)第2次調査から第4次調査までの4年間に参加した40-82歳の無作為抽出された中高年地域住民男性1,379名、女性1,355名を対象に、内臓肥満に関わる要因の縦断的抽出、内臓肥満感受性遺伝子多型の網羅的縦断的検討、飲酒と内臓肥満の関連に影響を与える遺伝子多型の探索を行った。
結果と考察
基礎研究:遺伝性肥満ob/obマウスと糖尿病db/dbマウスでのFABP3の発現量を検討した。骨格筋におけるFABP3蛋白レベルはコントロールマウスに比べてob/obマウスでは2.5倍に上昇していた。FABP3血清レベルはob/obマウスで212倍に上昇していた。ヒトFABP3遺伝子発現系と抑制系のシステムを構築した。また内臓肥満から動脈硬化を発症するモデルマウスの作製を行なった。
臨床研究:地域住民の縦断的検討で、男性では禁煙者で内臓脂肪が多かったが、BMIを調整すると喫煙者で内臓脂肪が多くなった。飲酒と内臓肥満の関連は縦断的にははっきりしなかった。また内臓脂肪と食品摂取との関連は男女それほど大きくはなかった。しかし歩数や余暇活動量など少ないほど内臓脂肪面積および内臓肥満の割合が大きくなっていた。腹部肥満リスクが有意に上昇する遺伝子多型の組み合わせを求めたところ、7種の遺伝子多型が内臓肥満と有意に関連した。候補遺伝子多型の網羅的解析から飲酒と相互作用を持つ15種類の多型を見出した。特定の遺伝子多型をもつ者では飲酒により内臓肥満になるリスクが大きく増加していることがわかった。
結論
内臓肥満関連分子であるFABP3は遺伝性肥満および糖尿病モデルマウスでの骨格筋における蛋白レベルと血清レベルが上昇していた。一般住民での4年間の縦断的解析で内臓肥満が運動、特に歩数と関連していることが示された。内臓肥満に感受性の高い遺伝子多型群及び内臓肥満に対して飲酒と交互作用を有する遺伝子多型を見出した。

公開日・更新日

公開日
2010-05-11
更新日
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