疾病予防サービスに係わるエビデンス構築のための大規模コホート共同研究

文献情報

文献番号
200722008A
報告書区分
総括
研究課題名
疾病予防サービスに係わるエビデンス構築のための大規模コホート共同研究
課題番号
H17-循環器等(生習)-一般-012
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
上島 弘嗣(国立大学法人滋賀医科大学 社会医学講座福祉保健医学)
研究分担者(所属機関)
  • 今井 潤(東北大学大学院薬学研究科医療薬学講座臨床薬学分野)
  • 磯 博康(大阪大学大学院医学系研究科社会環境医学講座公衆衛生学)
  • 玉腰 暁子(愛知医科大学医学部公衆衛生学)
  • 清原 裕(九州大学大学院医学研究院環境医学)
  • 岡山 明(財団法人 結核予防会第一健康相談所)
  • 岡村 智教(国立循環器病センター)
  • 斎藤 重幸(札幌医科大学医学部内科学第二講座)
  • 辻 一郎(東北大学大学院医学系研究科社会医学講座公衆衛生学分野)
  • 中川 秀昭(金沢医科大学健康増進予防医学)
  • 児玉 和紀(財団法人 放射線影響研究所事務局 )
  • 中山 健夫(京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野)
  • 村上 義孝(滋賀医科大学社会医学講座福祉保健医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
74,777,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、1.実測検査項目を持つ複数のコホート研究を統合したデータベースを用いて危険因子と総死亡等との詳細な解析結果を提示し、わが国の公衆衛生施策推進に必要な成果を創出すること、 2.健診・医療費突合データから健診所見の医療費への影響を明らかにすることである。
研究方法
1.については13コホートの統合データベース(約18万人、平均追跡期間約10年)に対し、循環器疾患の危険因子である血圧、肥満と総死亡への影響の2テーマで解析した。統計モデルとして性・年齢階級別にポワソン回帰を用い、交絡因子およびコホートの影響を調整した総死亡率・ハザード比を推定した。また各コホートでの追跡調査も継続した。2.については滋賀県全26市町の住民健診データと医療費データを縦断的に突合し、肥満・高血圧などの危険因子と医療費との関連を検討した。解析対象は健診・国保データの双方が確認された40歳から75歳未満の者とした(45,141人)。そして危険因子別の年間医療費の差、肥満および危険因子集積の医療費への影響、保健指導による医療費適正化効果のシミュレーションを実施した。
結果と考察
1.では、血圧においては、各年齢カテゴリでベースライン時の血圧上昇に伴い死亡率が増加する傾向が伺え、40、50歳代の壮年期での血圧上昇の相対的影響が顕著であった。肥満 (BMI)については、18.5未満の人々で死亡リスクが特に高いことと、BMI 30.0以上でリスク増加傾向があるという結果が得られた。血圧、肥満ともに総死亡との関連を詳細な年齢別に検討した結果は他にない。また各コホートでの追跡の継続と解析が進み、多くの個別研究の成果が出されており、欧文学術誌に現在公表済みのもので既に50編を超えた。2.については、肥満、高血圧、高血糖を有すると将来の医療費が高い傾向が示された。また、危険因子の集積と医療費の増加に正の関連がみられた。これを用いたシミュレーションを汎用表計算ソフトで作成し、市町村の保健指導計画に役立てることができるように配布した。細部については更なる検討が必要だが、危険因子の医療費への影響を示した点で意義は大きい。
結論
本邦を代表する複数のコホート研究を統合した巨大データベースを作成し詳細な結果を示すとともに、各コホートの継続を行い広汎なエビデンスを学術成果として提供した。また健診・医療費の縦断的な突合解析によってまったく新しいエビデンスを創出した。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200722008B
報告書区分
総合
研究課題名
疾病予防サービスに係わるエビデンス構築のための大規模コホート共同研究
課題番号
H17-循環器等(生習)-一般-012
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
上島 弘嗣(国立大学法人滋賀医科大学 社会医学講座福祉保健医学)
研究分担者(所属機関)
  • 今井 潤(東北大学大学院 薬学研究科医療薬学講座臨床薬学分野)
  • 磯 博康(大阪大学大学院 医学系研究科社会環境医学講座公衆衛)
  • 玉腰 暁子(愛知医科大学 医学部公衆衛生学)
  • 清原 裕(九州大学大学院 医学研究院環境医学)
  • 岡山 明(財団法人 結核予防会第一健康相談所)
  • 岡村 智教(国立循環器病センター)
  • 斎藤 重幸(札幌医科大学 医学部内科学第二講座)
  • 辻 一郎(東北大学大学院 医学系研究科社会医学講座公衆衛生学分野)
  • 中川 秀昭(金沢医科大学 健康増進予防医学)
  • 児玉 和紀(財団法人 放射線影響研究所事務局)
  • 中山 健夫(京都大学大学院 医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野)
  • 村上 義孝(滋賀医科大学 社会医学講座福祉保健医学)
  • 大橋 靖雄(東京大学 医学系研究科生物統計/疫学・予防保健学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、1.実測検査項目を持つ複数のコホート研究を統合したデータベースを構築し、危険因子と総死亡等との詳細な解析結果を提示し、わが国の公衆衛生施策推進に必要な成果を創出することである。また平成18年度より新たに、2.健診・医療費突合データから健診所見の医療費への影響の分析が目的に追加された。
研究方法
1.については13コホートの統合データベース(約18万人、平均追跡期間約10年)の構築が完成した。本データベースから循環器疾患の危険因子である血圧、肥満と総死亡への影響の2テーマで解析するとともに、各コホートでの追跡調査も継続した。2.については滋賀県全26市町の住民健診データと医療費データを縦断的に突合し、肥満・高血圧などの危険因子と医療費との関連を検討した。解析対象は健診・国保データの双方が確認された40歳から75歳未満の者とした45,141人である。
結果と考察
1.では、血圧においては、各年齢カテゴリでベースライン時の血圧上昇に伴い死亡率が増加する傾向が伺え、40、50歳代の壮年期での血圧上昇の相対的影響が顕著であった。肥満 (BMI)については、18.5未満の人々で死亡リスクが特に高いことと、BMI 30.0以上でリスク増加傾向があるという結果が得られた。血圧、肥満ともに総死亡との関連を詳細な年齢別に検討した結果は他にない。また各コホートでの追跡の継続と解析が進み、多くの個別研究の成果が出されており、欧文学術誌に現在公表済みのもので既に50編を超えた。2.については、肥満、高血圧、高血糖を有すると将来の医療費が高い傾向が示された。また、危険因子の集積と医療費の増加に正の関連がみられた。これを用いたシミュレーションを汎用表計算ソフトで作成し、市町村の保健指導計画に役立てることができるように配布した。細部については更なる検討が必要だが、危険因子の医療費への影響を示した点で意義は大きい。
結論
本邦を代表する複数のコホート研究を統合した巨大データベースを構築し、性・年齢階級レベルの詳細な結果を示すとともに、各コホートの継続を行い広汎なエビデンスを学術成果として提供した。また健診・医療費の縦断的な突合解析によってまったく新しいエビデンスを創出した。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200722008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
わが国のコホート研究に基づく巨大データベース(19万人、追跡人年約200万)を構築し、実測データ(検査所見)を有した総死亡をエンドポイントにもつ空前規模のデータベースから、血圧値、肥満と総死亡との詳細な関連を検討し学術的評価を得た(Hypertension, in press))。現存コホート研究からは約100編の学術論文が発表された。また、滋賀県26市町健診・医療費突合分析では、実際の医療費データを用い、特定健診実施後に予想される医療費への影響を実証的に検証し、その社会的意義は大きい。
臨床的観点からの成果
統合データベースから、各年齢カテゴリでベースライン時の血圧上昇に伴い死亡率が増加する傾向を確認した。40、50歳代の壮年期での血圧上昇の相対的影響が顕著であった。肥満 (BMI)では18.5未満で総死亡リスクが特に高い、BMI 30.0以上でリスク増加傾向があった。血圧、肥満ともに総死亡との関連を詳細な年齢別に検討した結果は他になく、臨床的観点から成果大である。これら統合データベース構築に関する方法論および解析法の開発により、臨床研究データへの応用の可能性の端緒を開いたという意義は大きい。
ガイドライン等の開発
本研究班の分担研究者などにより発表された論文は、本班分担研究者(京都大学・中山健夫教授)を通じて、医療技術評価総合研究医療情報サービス事業Minds(マインズ)に登録され、診療ガイドラインを構成するわが国のエビデンスの基盤として活用される予定である。なお、血圧値と総死亡との関連については、2009年の日本高血圧学会のガイドラインに掲載される予定である。
その他行政的観点からの成果
本研究は、わが国を代表するコホート研究の代表者が、「疾病予防サービスのためのエビデンスの確立」という公益性の高い目的のために結集したものであり、個々の即効的な研究業績が出る/出ないに関わりなく行政施策のために共同研究を行なうというモデルケースを提示し得た。今後、研究組織の垣根を払って本邦の厚生行政に資するための研究はますます必要になると考えられ、その先鞭をつけたという点で画期的である。
その他のインパクト
平成19年度厚生労働科学研究費循環疾患等生活習慣病対策総合事業及び推進事業の啓発パンフレットに研究成果の一部として、収縮期血圧、喫煙と総死亡の関連が紹介された。またこの研究班を契機に新たな研究者同士のネットワークが構築され、主任研究者、分担研究者、研究協力者を巻き込んだ新規の研究が発展しつつある。さらに、日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン2009にその成果が引用される予定である。

発表件数

原著論文(和文)
10件
原著論文(英文等)
97件
その他論文(和文)
30件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
93件
学会発表(国際学会等)
32件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Cui R, Iso H, Toyoshima H, et al.
Body mass index and Mortality Form Cardiovascular Disease among Japanese Men and Women: the JACC study.
Stroke. , 36 (7) , 1377-1382  (2005)
原著論文2
Noda H, Iso H, Toyoshima H, et al.
Walking and Sports participation and Mortality From Coronary Heart Disease and Stroke.
J Am Coll Cardiol. , 46 (9) , 1761-1767  (2005)
原著論文3
Iso H, Date C, Yamamoto A, et al.
Smoking Cessation and Mortality from Cardiovascular disease among Japanese Men and Women: the JACC Study.
Am J Epidemiol. , 161 (2) , 170-179  (2005)
原著論文4
Asia Pacific Cohort Studies Collaboration.
Joint Effects of Systolic Blood Pressure and Serum Cholesterol on Cardiovascular Disease in the Asia Pacific Region.
Circulation. , 112 (22) , 3384-3390  (2005)
原著論文5
Tanaka K, Kiyohara Y, Kubo M, et al.
Secular trends in the incidence, mortality, and survival rate of gastric cancer in a general Japanese population: the Hisayama Sutdy.
Cancer Causes Control. , 16 (5) , 573-578  (2005)
原著論文6
Nakanishi A, Yamada M, Hattori N, et al.
Relationship between HbA1c and mortality in a Japanese population.
Diabetologia. , 48 (2) , 230-234  (2005)
原著論文7
Yoshita K, Miura K, Morikawa Y, et al.
Relationship of alcohol consumption to 7-year blood pressure change in Japanese men.
J Hypertens. , 23 (8) , 1485-1490  (2005)
原著論文8
Metoki H, Ohkubo T, Kikuya M, et al.
Prognostic significance for stroke of a morning pressor surge and a nocturnal blood pressure decline: the Ohasama study.
Hypertension. , 47 (2) , 149-154  (2006)
原著論文9
Asayama K, Ohkubo T, Kikuya M, et al.
Prediction of stroke by home "morning" versus "evening" blood pressure values: the Ohasama study.
Hypertension. , 48 (4) , 737-743  (2006)
原著論文10
Kokubo Y, Yoshimasa Y, Tomoike H, et al.
Metabolic Syndrome and the Risk of Stroke and Myocardial Infarction in a Japanese General Population: the Suita Cohort Study.
Journal of Hypertension. , 24 , 64-64  (2006)
原著論文11
Kubo M, Kiyohara Y, Ninomiya T, et al.
Decreasing incidence of lacunar vs other types of cerebral infarction in a Japanese population.
Neurology. , 66 (10) , 1539-1544  (2006)
原著論文12
Ohnishi H, Saitoh S, Takagi S, et al.
Incidence of type 2 diabetes in individuals with central obesity in a rural Japanese population: the Tanno and Sobetssu study.
Diabetes Care. , 29 (5) , 1128-1129  (2006)
原著論文13
Kuriyama S, Shimazu T, Ohmori K, et al.
Green tea consumption and mortality due to cardiovascular disease, cancer, and all causes in Japan: the Ohsaki study.
JAMA. , 296 (10) , 1255-1265  (2006)
原著論文14
Ohwada H, Nakayama T, Nara N, et al.
An epidemiological study on anemia among institutionalized people with intellectual and/or motor disability with special reference to its frequency, severity and predictors.
BMC Public Health. , 6 (85)  (2006)
原著論文15
Irie F, Iso H, Sairenchi T, et al.
The relationships of proteinuria, serum creatinine, glomerular filtration rate with cardiovascular disease mortality in Japanese general population.
Kidney International. , 69 (7) , 1264-1271  (2006)
原著論文16
Okamura T, Nakamura K, Kanda H, et al.
Effect of combined cardiovascular risk factors on individual and population medical expenditures.
Circ J. , 71 (6) , 807-813  (2007)
原著論文17
Nakamura K, Okamura T, Kanda H, et al.
Medical costs of obese Japanese: a 10-year follow-up study of National Health Insurance in Shiga, Japan.
Eur J Public Health. , 17 (5) , 424-429  (2007)
原著論文18
Shimazu T, Kuriyama S, Hozawa A, et al.
Dietary patterns and cardiovascular disease mortality in Japan: a prospective cohort study.
Int J Epidemiol. , 36 (3) , 600-609  (2007)
原著論文19
Nakamura K, Okamura T, Kanda H, et al.
Medical costs of individuals with proteinuria: A 10-year follow-up study of National Health Insurance in Shiga, Japan.
Public Health. , 121 (3) , 174-176  (2007)
原著論文20
Sairenchi T, Iso H, Irie F, et al.
Underweight as a Predictor of Diabetes in Older Adults.
Diabetes Care. , 31 (3) , 583-584  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-