公衆浴場を利用した安全で有効な健康づくりに関する研究

文献情報

文献番号
200722006A
報告書区分
総括
研究課題名
公衆浴場を利用した安全で有効な健康づくりに関する研究
課題番号
H17-循環器等(生習)-一般-010
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
鏡森 定信(富山大学 大学院医学薬学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 松原 勇(石川県立看護大学 看護学部)
  • 松井 利夫(福井県衛生環境センター 環境部)
  • 勝木 道夫(北陸体力科学研究所)
  • 大塚 吉則(北海道大学 大学院教育学研究院・教育学院 教育学部)
  • 関根 道和(富山大学 大学院医学薬学研究部 )
  • 立瀬 剛志(富山大学 大学院医学薬学研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
6,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本件休の最終年度に際して、公衆浴場を利用した安全で有効な健康づくりのメニュ-を提示することを目的とした。
研究方法
公衆浴場での安全で有効な入浴法を、①浴槽内の運動を取り入れた「運動教室型」、②会食を取り入れた「ランチハウス型」、③体重(体脂肪)、血圧(入浴前後)測定を取り入れた「ヘルスチェック型」の3タイプで実施し検討した。
公衆浴場利用による健康面への影響に関する追跡的疫学調査では、25の公衆浴場の利用者とその町内の対照に、平成17年度に調査した3398人(回収率;94.3%)をベースラインとした追跡調査を平成19年度にも実施した(回収率;99.4%)。
入浴事故に関しては、各種統計を用いた検討に加えて、公衆浴場における調査や入浴死の検視解剖の成績について検討した。
結果と考察
「運動教室型」では、安全のために運動強度を軽くし、浴槽外の床運動も取り入れて、心理的爽快感や柔軟性など温浴の効果と合いまった効果を得た。また、「ランチハウス型」では、社会的孤立の予防に特に効果が期待された。「ヘルスチェック型」では、身長・体重(肥満度)や血圧測定までは受容されたが、体脂肪では操作の煩雑さから敬遠された。
公衆浴場利用による健康面への影響に関する追跡的疫学調査では、公衆浴場を1ヶ月に1回以上を利用している群(利用群;1181人)とそれ未満の群(非利用群;780人)との比較を、ベースライン時の関連要因(性、年齢、入浴頻度、生活の質、運動習慣)を調整して分析した。その結果、「病気で休まなかった」の割合は公衆浴場利用群で有意に多かった。また、「良好な健康状態」、「通院なし」でも同じ結果であった。
事故の予防面から 高齢者や 障害者、脳卒中・心筋梗塞の既往者、高血圧の有病者等への安全な入浴の配慮が特に必要であり、季節的には、12月から3月に事故の半数以上が発生するので、寒冷期の対応が特に重要となる。 また、入浴死の検視解剖によれば、依然として循環器疾患がらみの事故が多いが、溺死によるものの割合が近年増加しており、高齢者の動脈硬化に関連した温浴後の血圧降下や起立性失調などにも特段の注意が必要である。 
結論
1.公衆浴場利用は、非利用者に比較して健康・行動面で良好な結果をもたらしていた。
2.公衆浴場は、健康づくりを「介護予防事業やメタボ対策」として関連機関と連携して実施すれば、地域の健康づくりの地域の拠点になると思われた。
3.公衆浴場の安全では、脳卒中の既往者、高血圧や動脈硬化などのリスク要因を有する利用者の把握と、運動指導者などの協力による安全に留意した体制の構築が必要である。

公開日・更新日

公開日
2008-04-14
更新日
-

文献情報

文献番号
200722006B
報告書区分
総合
研究課題名
公衆浴場を利用した安全で有効な健康づくりに関する研究
課題番号
H17-循環器等(生習)-一般-010
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
鏡森 定信(富山大学 大学院医学薬学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 松原 勇(石川県立看護大学 看護学部)
  • 松井 利夫(福井県衛生環境センター 環境部)
  • 勝木 道夫((財)北陸体力科学研究所)
  • 大塚 吉則(北海道大学 大学院教育学研究院・教育学院 教育学部)
  • 関根 道和(富山大学 大学院医学薬学研究部)
  • 立瀬 剛志(富山大学 大学院医学薬学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
公衆浴場を利用した安全で有効な健康づくり施策を展開するために必要な①疫学的、②実験的ならびに③資料・文献的調査研究を行った。
研究方法
①疫学的調査研究では、公衆浴場利用者及び対照者(合計2661人)の3年間の追跡調査ならびに公衆浴場における健康づくりに関する横断調査を実施した。
②実験的な研究では、各種タイプの公衆浴場の浴槽で心身の健康づくりにつながる軽度の運動の効果ならびに安全な入浴法について検討した。
③資料・文献的調査研究では、公衆浴場での健康づくりに有用な過去の文献レビューならびに事故に関する資料の分析を行った。
結果と考察
①追跡疫学調査では、公衆浴場の利用は、調査開始時の関連要因を調整しても、「通院回数が少ない」、「病気で仕事を休むことが少ない」、「健康状態が良好」に関連していた。横断的疫学調査では、公衆浴場は、入浴による温浴の一般効果に加えて孤立の予防につながる心理社会的効果を有することを明らかにした。なお、安全性の面から脳卒中既往者などに頻度の高い転倒への留意を喚起した。
②実験的研究では、心理的開放感や身体の柔軟化は得られたが、バランス機能や筋力の測定値への反映には、週1回で3~6ヶ月の継続を要した。また、公衆浴場では床上運動の導入が可能であり、集団で実施できるなど、健康づくりの面での優位性が明らかになった。事故に関する実験では、出浴時の浴槽での急な起立が溺死につながる起立性失調をもたらし、この失調は入浴後30分程度は続くことから転倒予防の面からも留意すべきことを明らかにした。
③資料・文献的調査研究では、公衆浴場においては、通常の入浴以外にマッサージなどの手技療法、運動療法、健康教育、健康チェック、会食・リクリエーションなどを組み合わせた健康づくりの有効性を明らかにした。公衆浴場は、人々の交流を支え地域の健康づくりの拠点として重要な社会的資源であることを強調した。入浴事故予防では、循環器疾患有病者、冬季、高齢などの要因がその発生に関連し、検視剖検成績では、入浴事故死の60%程度は循環器疾患がらみで、次が「溺死」で30%余りとなっており、長寿社会の生活リスクとして予防施策の必要性が高かった。公衆浴場での入浴は「弧浴」ではないので、溺水による事故のリスクの低減に有益な入浴法であることを指摘した。
結論
以上から、公衆浴場を利用した具体な健康づくり施策として、①浴槽内の運動を取り入れた「運動教室型」、②会食を取り入れた「ランチハウス型」、③体重(体脂肪)、血圧(入浴前後)測定を取り入れた「ヘルスチェック型」を提示した。

公開日・更新日

公開日
2008-04-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200722006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
公衆浴場利用者と対照者の約3000人の3年間追跡調査から、公衆浴場の利用は調査開始時の性、年齢、入浴回数、運動習慣、生活の質などを調整しても「通院回数が少ない」、「病気で仕事を休むことが少ない」、「健康状態が良好」と有意に関連していた。また入浴実験による成績と併せて公衆浴場を利用した安全で有効な健康づくり施策として以下の3モデルを提示した。
①浴槽内の軽運動を取り入れた「運動教室型」
②会食を取り入れた「ランチハウス型」
③体重(体脂肪)、血圧(入浴前後)測定を取り入れた「ヘルスチェック型」
臨床的観点からの成果
公衆浴場の入浴の他に床上運動を含む週1回、1時間の健康教室に10ヶ月参加した群ではSF36の身体機能、身体の痛み、活力で、入浴のみの対照群では無かった有意の改善があった。またこの健康教室参加群の体力測定では、ショベリング、開眼片足立ち時間、ファンクショナルリーチ距離、6分間歩行距離において有意に改善した。飲用カプセルを使った連続深部体温記録により入浴行動を健康と安全面から検討した。その結果、飲用カプセルによる連続体温測定は、公衆浴場利用者個々人の健康づくりの評価に有用なツールと考えられた。
ガイドライン等の開発
①転倒・溺水に対する安全な入浴法として、頭部を低くしての出浴法を提案した。
②公衆浴場を利用した健康づくりとして、浴槽内の軽運動を取り入れた「運動教室型」、会食を取り入れた「ランチハウス型」、体重(体脂肪)、血圧(入浴前後)測定を取り入れた「ヘルスチェック型」の3つを提示した。
その他行政的観点からの成果
公衆浴場を利用した健康づくりとして提示した、浴槽内の軽運動を取り入れた「運動教室型」では、地域(石川県)や施設(北海道)で、地方自治体や福祉施設と連携して施策が展開されている。会食を取り入れた「ランチハウス型」では、富山県で浴場組合と行政の福祉部門との連携で施策として展開されている。体重(体脂肪)、血圧(入浴前後)測定を取り入れた「ヘルスチェック型」では、浴場組合のモデル事業として全国的に取り組まれている。
その他のインパクト
地方紙が、浴槽内の軽運動を取り入れた「運動教室型」、会食を取り入れた「ランチハウス型」、体重(体脂肪)、血圧(入浴前後)測定を取り入れた「ヘルスチェック型」のそれぞれについて取材し報道した。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
11件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-10-06
更新日
-