血管新生とリンパ管新生の同時制御による制癌法の確立

文献情報

文献番号
200720026A
報告書区分
総括
研究課題名
血管新生とリンパ管新生の同時制御による制癌法の確立
課題番号
H19-3次がん-一般-011
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 靖史(東北大学 加齢医学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 高倉 伸幸(大阪大学 微生物病研究所)
  • 渡部 徹郎(東京大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
23,025,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
癌の治療標的として血管新生とリンパ管新生が注目されているが、双方を同時に制御する治療法は未だ確立していない。主任研究者は、血管新生刺激に反応して血管内皮細胞が産生して血管新生を抑制する新規血管新生抑制因子Vasohibin-1とそのホモログのvasohibin-2を発見した。本研究は、以上のオリジナルな研究成績を背景として、血管新生とリンパ管新生の同時制御による制癌法の確立を目指している。
研究方法
(1)マウス皮下血管新生モデルを用いてVasohibin-1の時間・空間的発現様式を明らかにする。Vasohibin-1遺伝子搭載非増殖型アデノウイルスを用いて、血管新生に与える効果を観察する。
(2)マウス角膜法を用いて、VEGF-A、VEGF-Cなど種々の増殖因子によって惹起される血管新生、リンパ管新生に対するVasohibin-1の効果を検討する。
(3)高転移性ヒト非小細胞肺がん細胞をSCIDマウスに皮下移植、ヒトVasohibin-1遺伝子搭載非増殖型アデノウイルスを尾静注し、癌の発育、血管新生、リンパ管新生、リンパ節転移に対する効果を観察する。
結果と考察
野生型マウスにおいて、Vasohibin-1は、先端の発芽部位ではなく、血管新生終止部位の血管内皮に発現した。Vasohibin-1KOマウスでは血管新生が終息せず、アデノウイルスを用いて外因性にVasohibin-1を補充すると、その異常は正常化した。一方、野生型マウスに外因性にVasohibin-1を補充すると、先端の発芽が抑制された。Vasohibin-1は種々の増殖因子によって惹起される血管新生、リンパ管新生を広い作用スペクトルムで抑制した。高転移性ヒト非小細胞肺がん細胞の移植実験において、Vasohibin-1遺伝子搭載非増殖型アデノウイルス注射群では、腫瘍の発育、腫瘍内血管密度、腫瘍周囲リンパ管密度、所属リンパ節の転移はいずれも有意に抑制された。Vasohibin-1は、血管新生の機能するが、外因性に過剰投与すると血管新生のみならずリンパ管新生をも広い作用スペクトルムで抑制し、腫瘍の発育とリンパ節転移を抑制するものと考えられる。
結論
Vasohibin-1は、血管新生のみならずリンパ管新生に対しても広いスペクトルムで抑制することが確認された最初の内因性因子であり、動物実験の結果から血管新生とリンパ管新生の同時制御による制癌法への応用が期待される。

公開日・更新日

公開日
2008-04-21
更新日
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