心原性脳塞栓症患者に対する細胞治療の臨床試験とその発展

文献情報

文献番号
200718080A
報告書区分
総括
研究課題名
心原性脳塞栓症患者に対する細胞治療の臨床試験とその発展
課題番号
H19-長寿-一般-029
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
田口 明彦(国立循環器病センター研究所循環動態機能部)
研究分担者(所属機関)
  • 成冨 博章(国立循環器病センター 脳血管内科)
  • 長束 一行(国立循環器病センター 脳血管内科)
  • 松山 知弘(兵庫医科大学 医学部)
  • 相馬 俊裕(国立病院機構大阪南医療センター)
  • 丸山 彰一(名古屋大学 大学院 医学研究科)
  • 林 拓也(国立循環器病センター研究所 放射線医学部)
  • 秦 龍二(愛媛大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
22,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在わが国においては急速な高齢化社会を迎えており、それに伴う要介護者の急激な増加は極めて深刻な社会問題である。要介護者発生原因の40%以上が脳血管障害などの中枢神経障害であり、これらの疾患は社会全体で高齢者を支え、国民が安心して生涯を過ごすことができる社会へと転換するために克服しなければならない緊急の課題である。我々は脳梗塞後の骨髄単核球投与による自己修復機構の促進を介した脳神経機能回復作用及びその安全性を示してきたが、本研究では心原性脳梗塞患者に対する臨床試験を行い、自己骨髄単核球移植の有効性及び安全性を明確にするとともに、他の脳梗塞への適応拡大、さらには脳梗塞の予防法確立のための知見の獲得を行う。
研究方法
本研究においては、急性期心原性脳塞栓症患者に対する自己骨髄単核球静脈内投与の臨床試験を行うとともに、骨髄系幹細胞を介した脳梗塞予防あるいは虚血性脳障害の軽減する手法の確立を目指して、1.骨髄系幹細胞の予防的投与、2.薬剤によるその動員、あるいは3.脂肪および骨髄間質系幹細胞の予防的な移植、などにより脳組織及び神経機能障害の軽減、および慢性期における機能回復促進効果に関して、探索的、総合的な検討を行った。
結果と考察
急性期心原性脳塞栓症患者に対する自己骨髄単核球静脈内投与の臨床試験に関しては厚生労働省の認可を受け、エントリー患者の募集を開始している。末梢血中血管血球系幹細胞数と脳神経機能に関する検討では、CD34陽性細胞数の減少が経時的な脳神経機能の低下に関連していること、およびハイリスク患者群である慢性透析患者においても、末梢血中CD34陽性細胞はコントロール群と比較して有意に減少していること、さらにCD34陽性細胞数低値群ではCD34陽性細胞数高値群と比較して心血管事象の新規発症と全死亡率が有意に高いことを見出した。これらの結果は、造血系幹細胞の枯渇が微小循環障害を介して脳神経機能障害や虚血性血管イベントを引き起こしている可能性を示唆していると考えている。
結論
本研究により脳梗塞後の微小循環保護や脳血管性認知症患者、腎疾患患者などにおける、末梢血中の造血中幹細胞の役割が明らかになりつつあり、それらの細胞群を用いた新しい治療法の開発、発展が期待されている。

公開日・更新日

公開日
2008-12-14
更新日
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