口腔ケア・マネジメントの確立

文献情報

文献番号
200718062A
報告書区分
総括
研究課題名
口腔ケア・マネジメントの確立
課題番号
H19-長寿-一般-011
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
赤川 安正(広島大学大学院医歯薬学総合研究科顎口腔頸部医科学講座先端歯科補綴学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 菊谷 武(日本歯科大学附属病院口腔介護リハビリテーションセンター)
  • 吉田 光由(広島市総合リハビリテーションセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
6,640,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では,作成したスクリーニングシートを用いて肺炎リスクの高い要介護高齢者を選択し,それらの口腔関連領域の問題について検討を行うことで,口腔ケア・マネジメントとして評価しておかなければならないアセスメント項目について考察を行うこととした。
研究方法
対象者は,全国19ヵ所の介護施設入所者のうち,従前に専門的口腔ケアを受けたことのない172名(男性46名・女性126名,平均年齢84.0歳)とした。これらの対象者に対して,肺炎リスクを評価するためのスクリーニングを行い,誤嚥性肺炎の既往に「繰り返す発熱あり」「肺炎あり」と回答した者,食事中や食後のむせ「あり」,食事中や食後の痰のからみ「あり」,頚部聴診にて「呼吸切迫,むせあり」のいずれかがあった者を肺炎リスク群とした。ついで,口腔関連領域のアセスメントを行い,肺炎リスク群とそれ以外の者との間で調査したアセスメント項目への回答結果をt検定もしくはカイ2乗検定を用いて比較し,さらにロジスティック回帰分析を用いて有意な関係のある項目を抽出した。
結果と考察
肺炎リスク群と選択された者は,56名(男性18名,女性38名,平均年齢84.0歳),選択されなかった者(対照群)は116名(男性28名,女性88名,平均年齢84.1歳)となり,両群間の性別,平均年齢に有意な差はなかった。
要介護度との関係では,肺炎リスク群に有意に要介護度4,5の重度の者が多かった(p<0.05)。また,気管チューブが留置されている者や経管栄養となっている者で肺炎リスク群が有意に多かった(p<0.05)。さらに,口腔清掃の自発性のない者,口腔ケア時の困難因子となる座位保持や頚部可動の困難や不可能な者で肺炎リスク群が有意に多く(p<0.05),開口保持や口腔内での水分保持,含嗽が可能な者や咀嚼ができる者で肺炎リスク群が有意に少なかった(p<0.05)。
これら単変量解析で有意であった項目のうち,要介護度と有意な関係のあった経管栄養,気管チューブの留置は多重共線性を生じる可能性があることから除外し,その他有意であった項目をロジスティック回帰分析にかけて変数減少法による選択を行ったところ,要介護度,開口保持,咀嚼運動が肺炎リスク群の判定に有意となる診査項目であることが示された。
結論
本研究の結果,肺炎リスクの高い要介護高齢者の特徴として,要介護度が高く日和見感染を起こしやすい状態にあることに合わせて,開口保持や咀嚼運動ができないといった口腔機能の低下があげられることが示された。

公開日・更新日

公開日
2008-11-17
更新日
-