骨粗鬆症性椎体骨折の治療成績不良をもたらす因子の解明と効果的かつ効率的な治療法の確立-多施設共同前向き研究-

文献情報

文献番号
200718004A
報告書区分
総括
研究課題名
骨粗鬆症性椎体骨折の治療成績不良をもたらす因子の解明と効果的かつ効率的な治療法の確立-多施設共同前向き研究-
課題番号
H17-長寿-一般-017
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
中村 博亮(大阪市立大学大学院医学研究科整形外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 高岡 邦夫(大阪市立大学大学院医学研究科整形外科学)
  • 寺井 秀富(大阪市立大学大学院医学研究科整形外科学)
  • 辻尾 唯雄(大阪市立大学大学院医学研究科整形外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
5,760,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
世界一の長寿国となった日本にとって、寝たきり老人への介護費用の増加による医療福祉財政の圧迫・社会資本の喪失は大きな社会問題である。椎体骨折に対しては、安静、臥床、コルセット外固定等を主体とした保存療法が行われているが、保存治療後の骨癒合不全の発生率は高く、治療法が確立しているとはいえない。そこで我々は、骨癒合不全・治療成績不良をもたらす因子を解明し、脊椎椎体圧迫骨折の治療体系を確立するべく多施設共同前向き研究を立案した。
研究方法
大阪市立大学整形外科関連27施設において、65歳以上の新鮮骨粗鬆症性椎体骨折症例を登録し、6ヶ月間の観察期間を有する前向きコーホート研究を行った。評価は登録時と最終診察時のアンケート、ならびにX線写真、MRIにて行った。
結果と考察
最終登録症例数は498例、6ヶ月の経過観察を終了しえたものは420例、フォローアップ率84.3%であった。死亡例は13例(2.6%)であった。6ヶ月経過時点のデータ解析が終了した283例について検討すると、寝たきりとなった症例は15例(5.3%)、日常生活自立度判定基準でADLが1段階以上低下した症例は47例(16.6%)、疼痛高度残存例(Visual Analogue Scale 7以上)は27例(9.5%)、痴呆度の進行(MMSEが2以上低下)は57例(20.1%)にみられた。6ヵ月後の単純X線で椎体内にcleft像を呈するものを偽関節と定義すると、44例(15.0%)に発生がみられた。SF-36で登録時QOLを評価すると、全体的健康感の尺度以外では同年代の国民標準値と比較し低値を示した。6ヶ月後にその値は改善したが、国民標準値には到達しなかった。同様に6ヶ月経過時点における骨癒合例と偽関節例でSF-36を用いて検討すると、全体的健康感を除くすべての項目で、偽関節例では低値をしめした。偽関節発生に関与する因子は胸腰椎移行部の骨折であること、MRIT2強調画像で高輝度性変化が限局していること、低輝度性変化が広範に見られることであった。一方、牛乳を多飲すると偽関節へ移行しにくい傾向が認められた。
結論
1)骨粗鬆症性椎体骨折後の偽関節発生率は15.0%であった。
2)偽関節例において、寝たきり率、ADL低下比率、高度疼痛の残存比率が高かった。
3)胸腰椎移行部の骨折、MRI T2強調画像で椎体内の高輝度性変化が限局している例、低輝度性変化が広範にみられる症例で偽関節へ移行する可能性が高かった。一方、牛乳の多飲は、その可能性を低下させた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200718004B
報告書区分
総合
研究課題名
骨粗鬆症性椎体骨折の治療成績不良をもたらす因子の解明と効果的かつ効率的な治療法の確立-多施設共同前向き研究-
課題番号
H17-長寿-一般-017
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
中村 博亮(大阪市立大学大学院医学研究科整形外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 高岡 邦夫(大阪市立大学大学院医学研究科整形外科学)
  • 寺井 秀富(大阪市立大学大学院医学研究科整形外科学)
  • 辻尾 唯雄(大阪市立大学大学院医学研究科整形外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
世界一の長寿国となった日本にとって、寝たきり老人への介護費用の増加による医療福祉財政の圧迫・社会資本の喪失は大きな社会問題である。椎体骨折に対しては、安静、臥床、コルセット外固定等を主体とした保存療法が行われているが、保存治療後の骨癒合不全の発生率は高く、治療法が確立しているとはいえない。そこで我々は、骨癒合不全・治療成績不良をもたらす因子を解明し、脊椎椎体圧迫骨折の治療体系を確立するべく多施設共同前向き研究を立案した。
研究方法
大阪市立大学整形外科関連27施設において、65歳以上の新鮮骨粗鬆症性椎体骨折症例を登録し、6ヶ月間の観察期間を有する前向きコーホート研究を行った。評価は登録時と最終診察時のアンケート、ならびにX線写真、MRIにて行った。
結果と考察
最終登録症例数は498例、6ヶ月の経過観察を終了しえたものは420例、フォローアップ率84.3%であった。死亡例は13例(2.6%)であった。6ヶ月経過時点のデータ解析が終了した283例について検討すると、寝たきりとなった症例は15例(5.3%)、日常生活自立度判定基準でADLが1段階以上低下した症例は47例(16.6%)、疼痛高度残存例(Visual Analogue Scale 7以上)は27例(9.5%)、痴呆度の進行(MMSEが2以上低下)は57例(20.1%)にみられた。6ヵ月後の単純X線で椎体内にcleft像を呈するものを偽関節と定義すると、44例(15.0%)に発生がみられた。SF-36で登録時QOLを評価すると、全体的健康感の尺度以外では同年代の国民標準値と比較し低値を示した。6ヶ月後にその値は改善したが、国民標準値には到達しなかった。同様に6ヶ月経過時点における骨癒合例と偽関節例でSF-36を用いて検討すると、全体的健康感を除くすべての項目で、偽関節例では低値をしめした。偽関節発生に関与する因子は胸腰椎移行部の骨折であること、MRIT2強調画像で高輝度性変化が限局していること、低輝度性変化が広範に見られることであった。一方、牛乳を多飲すると偽関節へ移行しにくい傾向が認められた。
結論
1)骨粗鬆症性椎体骨折後の偽関節発生率は15.0%であった。
2)偽関節例において、寝たきり率、ADL低下比率、高度疼痛の残存比率が高かった。
3)胸腰椎移行部の骨折、MRI T2強調画像で椎体内の高輝度性変化が限局している例、低輝度性変化が広範にみられる症例で偽関節へ移行する可能性が高かった。一方、牛乳の多飲は、その可能性を低下させた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200718004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
わが国は世界に類を見ない高齢社会であり、家族構成、介護者、医療に関して欧米諸国とは異なっており、本邦独自の椎体骨折に関わる調査が必要であったが、今まで椎体骨折偽関節の発生と、生活習慣、社会的背景、既往歴、痴呆度などとの関連を詳細に網羅した研究は本研究以外になかった。我々の研究はこれらの全般的要素を含めた前向きコホート研究であり、それらの包括的な検討が可能である。
臨床的観点からの成果
1)骨粗鬆症性椎体骨折後の偽関節発生率は15.0%であった。
2)偽関節例において、寝たきり率、ADL低下比率、高度疼痛の残存比率が高かった。
3)胸腰椎移行部の骨折、MRI T2強調画像で椎体内の高輝度性変化が限局している例、低輝度性変化が広範にみられる症例で偽関節へ移行する可能性が高かった。一方、牛乳の多飲は、その可能性を低下させた。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
今回の研究は受傷後6ヶ月と比較的短期間での経過を追跡調査したものであるが、中長期にわたる予後を観察し、我が国独自の医療・福祉行政に役立てることが必要である。
その他のインパクト
未定

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
14件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-