弓部大動脈全置換術における超低体温療法と中等度低体温療法のランダム化比較試験(若手医師・協力者活用に要する研究)

文献情報

文献番号
200715009A
報告書区分
総括
研究課題名
弓部大動脈全置換術における超低体温療法と中等度低体温療法のランダム化比較試験(若手医師・協力者活用に要する研究)
課題番号
H17-チーム(生活心筋)-若手-004
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
荻野 均(国立循環器病センター心臓血管外科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究基盤整備推進研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
10,243,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
弓部大動脈全置換術は、20℃の超低体温を前提としてきた。最近になり、出血傾向や呼吸障害などの超低体温の弊害を回避するため、生理的な選択的順行性脳灌流下の中等度低体温手術が試みられてきている。しかしながら、超低体温手術と中等度低体温手術を厳密に比較した報告はない。最終年度においては、前研究であるJSTAR-Iから得られた超低体温と中等度低体温の特徴から評価項目を設定し、二群間のランダム化比較試験(JSTAR-II)を行い、より厳密に比較検討した。
研究方法
以下の評価項目を設定し、8施設でランダム化比較試験を行った。評価項目:1.主要項目:輸血量, 2.副次的項目:死亡/合併症, 3.その他の項目:血小板輸血の割合, 無輸血症例の割合、死亡および合併症の発生割合、人工呼吸管理時間、その他(手術: 循環停止、心筋虚血、SCP、体外循環、手術、麻酔などの時間、術中出血量、総輸血量、血小板輸血、24時間ドレーン排液量、 CO/CI、PCWP、帰室時カテコラミンの投与量、 術後72時間カテコラミン総投与量 血清乳酸値、 ICU帰室時PO2/FiO2 ratio、覚醒時期、脳高次機能、MRI評価、血小板、PT-INR、aPTT、フィブリノーゲン、TAT、D-dimer、FDP、AT-III、プロテイ ン C、ICU滞在日数、術後入院期間、入院治療費)。
結果と考察
8施設から38症例の登録があった。38例のうち、6例が途中で試験中止となり(登録のみで未実施3例、併施手術の実施2例、脳合併症のため途中で中止1例)、計32例が試験の対象となっている。今後も登録期間を延長し、新たな症例登録により、目標とする症例数に近づけ、より厳密な比較を行う予定である。
結論
JSTAR-Iにおいて、中等度低体温手術では、輸血が少なく、早期回復が得られる傾向がみられたが、JSTAR-IIによる厳密なランダム化比較試験の結果が待たれる。

公開日・更新日

公開日
2008-04-09
更新日
-

文献情報

文献番号
200715009B
報告書区分
総合
研究課題名
弓部大動脈全置換術における超低体温療法と中等度低体温療法のランダム化比較試験(若手医師・協力者活用に要する研究)
課題番号
H17-チーム(生活心筋)-若手-004
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
荻野 均(国立循環器病センター心臓血管外科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究基盤整備推進研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
弓部大動脈全置換術は、20℃の超低体温を前提としてきたが、最近になり、生理的な選択的順行性脳灌流下で中等度低体温手術が試みられている。しかしながら、超低体温手術と中等度低体温手術を厳密に比較した報告はない。前研究(JSTAR-I)では、多施設共同前向き調査研究を行い、中等度低体温手術で輸血が少なく、早期回復が得られる傾向を認めた。後の最終研究で、ランダム化比較試験(JSTAR-II)により、より厳密に比較検討した。
研究方法
1)JSTAR-I;評価項目: 1.術後30日以内死亡、および脳・脊髄障害、心臓障害、肺障害、腎障害、出血、感染、などの合併症発生割合、2.臨床データ: ① 手術時間など、② 出血量、輸血量など、 ③循環動態、 ④呼吸状態、⑤脳機能、⑥肝・腎機能、 ⑦ 血液凝固機能、⑧ 回復状況、2) JSTAR-II;評価項目:1.主要項目:輸血量, 2.副次的項目:死亡/合併症, 3.その他の項目:血小板輸血の割合, 無輸血症例の割合、死亡および合併症の発生割合、人工呼吸管理時間、その他(手術: 循環停止、心筋虚血、SCP、体外循環、手術、麻酔などの時間、術中出血量、総輸血量、血小板輸血、24時間ドレーン排液量、 CO/CI、PCWP、帰室時カテコラミンの投与量、 術後72時間カテコラミン総投与量 血清乳酸値、 ICU帰室時PO2/FiO2 ratio、覚醒時期、脳高次機能、MRI評価、血小板、PT-INR、aPTT、フィブリノーゲン、TAT、D-dimer、FDP、AT-III、プロテイ ン C、ICU滞在日数、術後入院期間、入院治療費)。
結果と考察
 1) JSTAR-I: 中等度低体温で、合併症が少ない、手術時間が短い、輸血が少ない、覚醒や抜管が早い、ICU滞在が短い、などの傾向が得られた。
2) JSTAR-II: 8施設から登録された38症例の登録があった。38例の登録症例のうち、6例が途中で試験中止となり(登録のみで未実施3例、併施手術の実施2例、脳合併症のため途中で中止1例)、計32例が試験の対象となっている。今後も登録期間を延長し、新たな症例登録により、目標とする症例数に近づけ、より厳密な比較を行う予定である。
結論
JSTAR-Iにおいて、中等度低体温手術では、輸血が少なく、早期回復が得られる傾向がみられた。ランダム化比較試験による厳密な比較試験の結果が待たれる。

公開日・更新日

公開日
2008-04-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200715009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
弓部大動脈全置換術は超低体温を前提としてきた。しかしながら、生理的な選択的順行性脳灌流下では必ずしも超低体温の必要がなく、最近では中等度低体温手術が試みられている。しかしながら、これまで中等度低体温手術の利点を明示した報告はない。前研究では多施設共同前向き調査研究を行い、中等度低体温手術で輸血が少なく、早期回復が得られる傾向を認めた。後の最終研究でランダム化比較試験を行い、より厳密に比較検討した。これは、本邦初の大動脈外科手術におけるランダム化比較研究である。
臨床的観点からの成果
前研究の多施設共同前向き調査研究では、中等度低体温手術で輸血が少なく、早期回復が得られる傾向を認めた。後のランダム化比較試験の解析結果が待たれる。本研究により、中等度低体温弓部全置換において、脳機能の安全性が確認でき、出血が少なく、早期回復が可能ななどの利点が証明できる。それにより、困難かつ危険性の高い弓部全置換術をより低侵襲かつ安全な治療として確立できる。術後QOLを含めた手術成績を向上させ、入院期間や医療費の減少へとつながり、最終的に医療経済の安定に貢献できるものと考える。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
12件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
39件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-