ハイリスク胎児の子宮内手術におけるナノインテリジェント技術デバイスの開発研究

文献情報

文献番号
200713009A
報告書区分
総括
研究課題名
ハイリスク胎児の子宮内手術におけるナノインテリジェント技術デバイスの開発研究
課題番号
H17-フィジ-一般-006
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
千葉 敏雄(国立成育医療センター特殊診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 土肥 健純(東京大学大学院 情報理工学系研究科)
  • 下山 勲(東京大学大学院 情報理工学系研究科)
  • 佐久間 一郎(東京大学大学院 工学系研究科)
  • 村垣 善浩(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所)
  • 藤江 正克(早稲田大学 創造理工学部)
  • 望月 剛(アロカ株式会社研究所)
  • 植田 裕久(ペンタックス株式会社 ライフケア事業部)
  • 岡 潔(独立行政法人日本原子力研究開発機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(身体機能解析・補助・代替機器開発研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
59,811,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在のハイリスク胎児外科治療が抱える困難性を克服し、低侵襲胎児内視鏡手術を実現するため、本プロジェクトでは医師の新しい目と手となる要素技術の研究開発を進めてきた。最終年度は、レーザ治療デバイス、子宮内手術支援デバイス、ナノ技術センサデバイス、術中画像支援システムの完成を目指した。
研究方法
双胎間輸血症候群治療用の複合型光ファイバスコープや屈曲マニピュレータ、マニピュレータ位置決め用ロボットアーム、胎児支持バルーンマニピュレータ、脊髄髄膜瘤治療用のパッチスタビライザ、埋め込み型血流計測カプセルセンサ、三次元斜視内視鏡や視野可変内視鏡、内視鏡搭載型のマイクロMRIコイル、超音波ガイドによる胎盤吻合血管マッピングや近接覚ナビゲーションなど、多くの要素技術の完成とシステム化を進めた。
結果と考察
複合型光ファイバスコープには距離・血流計測機能を組み込み、in vivo実験(ブタ使用)によりその有用性を確認し、φ5mmの屈曲マニピュレータと併用することで凝固対象への位置合わせを容易とした。位置決め用ロボットアームは、患部との接触部を分離可能とすることで清潔性を保ち、高精度での駆動が可能であった。バルーンマニピュレータは広い屈曲角度を有し、水中での胎児ファントムの固定を可能とした。パッチスタビライザはワイヤ張力制御により微小な力での組織の押し付けを可能とした。カプセルセンサはウサギ腹腔内に留置し、閉腹した状態で無線による脈拍情報の伝送が可能であった。三次元斜視内視鏡により奥行き感覚が得られることを検証し、また、視野可変内視鏡では鏡筒の回転のみで直視と側視観察を切換可能とした。マイクロMRIコイル(φ10mm)は従来の医療用コイルよりも5-8倍の受信感度を有した。胎盤吻合血管マッピングならびに近接覚ナビゲーションでは、内視鏡と超音波プローブの位置をリアルタイム計測し、前者では胎盤モデル上への内視鏡画像の合成、後者では胎盤モデルと内視鏡の距離をカラーマップとアラームにより術者への提示を可能とした。
結論
本研究では多くの要素技術研究が当初の目的を達成し、全く新しい胎児外科治療機器・システムの構築に至った。本成果は治療対象としたMMCやTTTSのみならず、そのほかの胎児疾患、さらには他の広範な外科分野にも十分応用可能であり、今後の医療機器産業の振興に大きく貢献するため、継続的な発展を加えていく。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200713009B
報告書区分
総合
研究課題名
ハイリスク胎児の子宮内手術におけるナノインテリジェント技術デバイスの開発研究
課題番号
H17-フィジ-一般-006
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
千葉 敏雄(国立成育医療センター特殊診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 土肥 健純(東京大学大学院 情報理工学系研究科)
  • 下山 勲(東京大学大学院 情報理工学系研究科)
  • 佐久間 一郎(東京大学大学院 工学系研究科)
  • 村垣 善浩(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所)
  • 藤江 正克(早稲田大学 創造理工学部)
  • 望月 剛(アロカ株式会社研究所)
  • 植田 裕久(ペンタックス株式会社 ライフケア事業部)
  • 岡 潔(独立行政法人日本原子力研究開発機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(身体機能解析・補助・代替機器開発研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、ハイリスク胎児の子宮内手術を安全かつ確実なものとすることで、治療成績を飛躍的に向上せしめ、患児の長期QOLの大幅な改善と医療費の低減を目的とした。我々は現在の技術的限界を超える低侵襲子宮内手術を実現するため、特に双胎間輸血症候群(TTTS)と脊髄髄膜瘤(MMC)の治療を想定し、1:レーザ治療デバイス、2:子宮内手術支援デバイス、3:ナノ技術センサデバイス、4:術中画像誘導支援システムの開発を行った。
研究方法
1ではTTTS治療用複合型光ファイバスコープ・屈曲レーザマニピュレータ、2ではレーザマニピュレータ位置決めロボットアーム・胎児支持バルーンマニピュレータ・MMC被覆用パッチ及びパッチスタビライザ、3では埋め込み型血流計測カプセルセンサ、4では三次元斜視内視鏡・マイクロMRI搭載型内視鏡・視野可変内視鏡・胎盤吻合血管マッピング・近接覚ナビゲーションの開発を行なった。性能評価試験とin vivo実験を通し、各要素技術とシステム化の有用性を確認した。
結果と考察
複合型光ファイバスコープと屈曲マニピュレータの組み合わせは、凝固対象の血管を観察し、位置合わせしながらのレーザ照射が可能であり、距離・血流計測機能との併用でより安全な手術となりえる。位置決めロボットアームは搭載したマニピュレータの高精度駆動を可能とし、バルーンマニピュレータは屈曲動作により水中胎児ファントムを固定可能とした。パッチスタビライザは微小な力での組織押し付けができ、また、貼付に適したピン一体型パッチの開発を進めた。カプセルセンサはウサギ腹腔内からの脈拍情報の無線伝送を実現した。三次元斜視内視鏡により奥行き感覚が得られ、視野可変内視鏡で直視と側視の切換を可能とした。マイクロMRIコイルは従来の医療用コイルの5?8倍の受信感度を得た。胎盤吻合血管マッピング・近接覚ナビゲーションでは、内視鏡と超音波プローブを位置計測し、前者では胎盤モデル上への内視鏡画像合成を、後者では胎盤モデルと内視鏡の接近度を、術者へ実時間提示可能とした。
結論
本研究では当初の目的をほぼ達成し、新しい胎児外科治療用技術の構築と従来にない手術システム完成の目途が立ったといえる。本成果はTTTSやMMCのみならずその他の胎児疾患、さらには他の広範な外科分野にも応用可能であり、今後の医療機器産業の振興に大きく貢献するためにも、継続的な発展を加えていく。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200713009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究成果における要素技術は、胎児外科を初めとする高度先端医療機器開発を目指したものであるが、レーザ光学による複合型光ファイバスコープ、ロボット工学・制御工学による超小型マニピュレータ、磁気工学によるマイクロMRIコイル、MEMS技術による無線伝送式マイクロ血流センサ、超音波工学・光学計測技術・ハイパフォーマンスコンピューティングによる超音波誘導ナビゲーショなど、様々な学術的要素を含んでおり、これらを複合的に用いることで、多様な工学分野においても十分応用可能である。
臨床的観点からの成果
本研究成果による要素技術は、最も脆弱な患者(すなわち胎児、妊娠母体)を安全(非接触、低侵襲性)・確実に治療しうる機器となり、新生児・乳児・小児から成人にいたるまでの広範な疾患領域に対しても適用可能になるものと思われる。これらの研究成果は国際的な胎児外科学会においても高い評価を得ており、ボストン小児科病院やハーバード大学との共同研究も新たに進められている。これを契機に国内での胎児外科治療が活発になることで、国際的にも高い治療成績が見込め、少子化対策の一助になると期待される。
ガイドライン等の開発
次世代医療機器評価指標策定事業 ナビゲーション医療(手術ロボット)第二分野(軟組織対象);審査ワーキンググループの平成19年度第2回会議(平成19年12月19日開催)にて、”複合型光ファイバ内視鏡“が、臨床評価指標策定のため具体例として取り上げられた。
その他行政的観点からの成果
該当なし
その他のインパクト
「レーザーで胎児治療 原子力機構などが内視鏡開発」日刊工業新聞2006年3月6日、「胎児用内視鏡 レーザー照射と一体 原子力機構 患部治療しやすく」日経産業新聞 2006年3月6日、「胎児手術用の極細鉗子 国立成育医療センターなど 先天性の病気治療も」日経産業新聞 2006年9月8日、「未来プロジェクト動く 進む胎児治療 超音波で患者負担軽減」日経産業新聞 2006年9月12日、など、多くの全国紙に掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
11件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
30件
学会発表(国際学会等)
22件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
出願済み1件:内視鏡装置(特願2006-292578)、出願予定1件:複数の超音波3次元エコーデータを結合した統合ボリュームデータセットを作成する手段
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kanako Harada, Kentaro Iwase, Kota Tsubouchi, et al.
Micro manipulator and foceps navigation for endoscopic fetal surgery
Journal of Robotics and Mechatronics , 18 (3) , 257-263  (2006)
原著論文2
廖洪恩、鈴木宏和、松宮潔、他
内視鏡下胎児手術における柔支持マニピュレータの研究
生体医工学 , 44 (4) , 643-649  (2006)
原著論文3
Hiromasa Yamashita, Kiyoshi Matsumiya, Ken Masamune, et al.
Miniature bending manipulator for fetoscopic intrauterine laser therapy in twin-to-twin transfusion syndrome
Surgical Endoscopy , 22 (2) , 430-435  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
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