生体超微細1分子可視化技術によるナノDDSとがん標的治療

文献情報

文献番号
200712017A
報告書区分
総括
研究課題名
生体超微細1分子可視化技術によるナノDDSとがん標的治療
課題番号
H18-ナノ-一般-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
大内 憲明(東北大学大学院 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
38,480,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では機能性ナノ粒子の超高感度計測技術を用い、生体分子及び薬物の細胞内・生体内動態ならびに腫瘍組織を可視化する。本技術により薬物の作用・耐性機序の解明と創薬、がん可視化による完全な外科的切除等、次世代がん診療の展開に貢献することを目的とする。

研究方法
1.高感度計測を可能とする蛍光・X線・MRIナノマーカーの開発
2.高速共焦点レーザー顕微鏡システムを用いた超微細in vivoイメージング法の確立と細胞内タンパクの動態観察
3.生体における腫瘍タンパク分子標的マッピング技術として、深部組織蛍光マーカー検出に不可欠な超音波蛍光検出法を開発。
4.蛍光マーカーコーティング材料として有望なシリカを用いた蛍光ナノビーズのコーティング技術の開発。
結果と考察
[結果]①ナノDDSによる分子レベルでのがん細胞可視化技術を開発した(Cancer Res, 2007)。②がん細胞への薬剤経路として重要な腫瘍間質におけるナノ粒子サイズ毎の挙動の画像化並びに定量化に成功した。ナノ粒子は「方向性を持った運動」と「拡散」を併せた挙動を示し、二つの運動の定量化により、腫瘍血管からがん細胞へ至るまでの時間を予測し得た。これはがん細胞への薬物到達過程効率を向上するための重要な知見であり、薬物開発及びがんの個性に応じた治療への応用が期待される。③シリカコーティングヨウ化銀ビーズ(AgI)の体内動態:X線造影剤としてAgIを作成し、X線CT、電顕で体内動態を検討した。緩やかな造影効果持続及び肝排泄を示唆する結果を得た。排泄経路の特定は安全性確立において極めて重要であり、造影効果の特徴を生かした医療応用が期待される。
[考察] 現在までナノ粒子の一粒子可視化は一定の成果を挙げ、基盤的技術は確立したが、応用に結びつく研究が必要である。今後は、① 腫瘍組織に長時間滞留する多重マーキング機能ナノ粒子の開発、② 腫瘍内の薬物動態を最適にするサイズのマーキングナノ粒子の開発、③ 安全性を確保する手段として完全な体外排泄に導くコーティング技術の開発を計画している。
結論
今年度はin vivo計測可能な高速共焦点顕微鏡システムの開発並びに一分子イメージングに成功した。さらに生体深部に存在する蛍光色素の高感度計測に成功したことから、全体としてほぼ予定通り研究を遂行できたと考える。
 

公開日・更新日

公開日
2008-04-21
更新日
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