非侵襲試料を用いた新規高感度安全性予測系の開発

文献情報

文献番号
200708001A
報告書区分
総括
研究課題名
非侵襲試料を用いた新規高感度安全性予測系の開発
課題番号
H17-トキシコ-一般-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
奥田 晴宏(国立医薬品食品衛生研究所 有機化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 宮田 昌明(東北大学大学院 薬学研究科)
  • 堀  弥(杏林製薬株式会社 創薬研究所)
  • 矢本 敬(第一三共株式会社 安全性研究所)
  • 宮田 直樹(名古屋市立大学大学院 薬学研究科)
  • 鈴木 孝昌(国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子細胞医薬部)
  • 小原 有弘(独立行政法人医薬基盤研究所 生物資源研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(トキシコゲノミクス研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
24,050,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医薬品開発に際して、トキシコゲノミクス手法を導入した研究により毒性発現に関する多くの情報が得られるようになった。しかし実際には種差のあるヒトの毒性を詳細に予測することは難しく、その予測にはトキシコゲノミクス研究で得られた遺伝子の発現情報に加えて、毒性によって生じた細胞環境の変化を高感度に検出する手法の組み合わせによる、細胞維持・エネルギー代謝系が関わる内因性物質の代謝変動の経時的な情報が必須である。そこで本研究事業では、ヒトへの応用が簡便な尿などの非侵襲試料を中心として用いた新規メタボロミクス・プロテオミクス高感度安全性予測系を確立することで、既存手法および実験動物データからでは予測不可能であったバイオマーカーを新たに見出し、毒性の早期予測ならびに詳細なメカニズム予測を実現することを目的とする。
研究方法
前年度研究までで確立した肝障害発現モデルであるlithocholic acid誘発胆汁鬱滞型肝障害モデル(マウス)、アセトアミノフェン(APAP)によるラット肝障害モデル等を使用した。メタボロミックスに関してはLC/MSおよびNMRの手法を、プロテオミクスはLC/MS/MSを用いた。
結果と考察
胆汁鬱滞型肝障害マウスの併用薬剤処置の実験により、コレステロールやリン脂質の排泄亢進が肝障害の防御因子となることが示された。APAP誘発肝障害ラットを併用薬処置し、毒性発現を制御したラット尿のLC/MSによるメタボロミクス研究を実施し、バイオマーカー候補を見出した。更にNMRデータの主成分(PCA)解析の結果により、メタボロームは投与量によりクラスターに分類され、その分類にはクエン酸等が寄与していることが判明した。ラット及びヒト尿を試料とし、LC/MS/MSによる網羅的プロテオーム解析及び解析ソフトの技術開発に成功した。
活性酸素消去薬剤に関して、構造活性相関解析に基づいた毒性軽減構造修飾法の開発研究を行った。
薬剤暴露細胞のNMRによるメタボロミクス-PCA解析により薬剤暴露のレスポンスを細胞が反映しているという結果を得ることが出来た。
結論
肝障害軽減薬物の併用試験がバイオマーカーの探索に有効であり、いくつかのマーカー候補を見出した。新たな活性酸素毒性軽減薬を開発、プロテオミクス手法の確立と解析ソフトウェアーの開発、細胞系を対象とするNMRを用いるメタボロミクスの有用性も示すことが出来た。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200708001B
報告書区分
総合
研究課題名
非侵襲試料を用いた新規高感度安全性予測系の開発
課題番号
H17-トキシコ-一般-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
奥田 晴宏(国立医薬品食品衛生研究所 有機化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 宮田 昌明(東北大学大学院 薬学研究科)
  • 堀  弥(杏林製薬株式会社 創薬研究所)
  • 矢本 敬(第一三共株式会社 安全性研究所)
  • 宮田 直樹(名古屋市立大学 薬学研究科)
  • 鈴木 孝昌(国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子細胞医薬部)
  • 小原 有弘(独立行政法人医薬基盤研究所 生物資源研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(トキシコゲノミクス研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医薬品候補化合物の安全性の早期予測ならびに詳細なメカニズム予測には、医薬品開発におけるトキシコゲノミクス研究で得られた情報に加えて、当該物質の毒性に基づく細胞環境変化の情報が必須である。本研究は新規メタボロミクス・プロテオミクス高感度安全性予測技術を確立し、尿サンプルのような非侵襲試料を活用することにより、本予測系のヒトへの外挿性を高め、医薬品開発におけるヒトを対象とした早期安全性予測ならびに詳細なメカニズム予測を実現することを目的とする。
研究方法
肝障害発現モデルとしてlithocholic acid (LCA)誘発胆汁鬱滞型肝障害モデル(マウス)、アセトアミノフェン(APAP)によるラット肝障害モデル等を使用した。メタボロミックスに関してはLC/MSおよびNMRの手法を、プロテオミクスはLC/MS/MSを用いた。
結果と考察
胆汁鬱滞型肝障害マウスに関して網羅的遺伝子発現解析と脂質動態解析を組み合わせることにより、胆汁鬱滞型肝障害を誘発するLCAの毒性発現及びその防御の機序を解析した。胆汁中へのコレステロールやリン脂質の排泄を亢進さることによって、LCA誘発肝障害を防御できることが示唆された。APAP処置ラット尿のLC/MSメタボロミクス解析を実施し、APAP処置群特異的な質量スペクトルピークを選択的に取り出し、複数の統計学的手法と組合わせて、網羅的に解析することで、APAP誘発肝障害時のバイオマーカー候補となる代謝物ピークを抽出することに成功した。更にNMRによるメタボローム-主成分(PCA)解析により、メタボロームは投与量によりクラスターに分類され、その分類にはクエン酸等が寄与していることが判明した。ラット及びヒト尿を試料とし、LC/MS/MSによる網羅的プロテオーム解析及び解析ソフトの技術開発に成功した。
メタボロミクス・プロテオミクスに利用可能な高感度誘導体化試薬の開発研究では、ソフトイオン化質量分析に利用可能なペプチド誘導体化試薬(フラーレン誘導体)の開発を行った。
薬剤暴露細胞のNMRによるメタボロミクス-PCA解析により薬剤暴露のレスポンスを細胞が反映しているという結果を得ることが出来た。
結論
本研究により、毒性の早期予測ならびに詳細なメカニズム予測のため、ヒトへの応用が簡便な非侵襲試料である尿を用いた新規メタボロミクス・プロテオミクス高感度安全性予測系の手法確立が達成された。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-04-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200708001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
新規メタボロミクス・プロテオミクス高感度安全性予測技術を確立し、尿サンプルのような非侵襲試料を活用することにより、本予測系のヒトへの外挿性を高め、医薬品開発におけるヒトを対象とした早期安全性予測ならびに詳細なメカニズム予測を実現することを目的として研究を実施した。
ヒトへの応用が簡便な非侵襲試料である尿を用いた新規メタボロミクス・プロテオミクス高感度安全性予測系の手法確立が達成された。
臨床的観点からの成果
APAP誘発肝障害時のバイオマーカー候補となる代謝物ピークを実験動物尿メタボロームから抽出することに成功している。今後臨床サンプルの研究につなげ、ヒトでも同様なマーカーの存在が確認できればその意義は極めて大きい。
ガイドライン等の開発
現時点ではない。
その他行政的観点からの成果
現時点ではない
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
54件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
105件
学会発表(国際学会等)
32件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
K. Fukuhara, I. Nakanishi,H. Okuda 得tあl
Effect of methyl substitution on antioxidative property and genotoxicity of resveratrol
Chem. Res. Toxicol. , 21 , 282-287  (2008)
原著論文2
K. Fukuhara, S. Oikawa,H. Okuda
9-Nitroanthracene derivative as a precursor of anthraquinone for photodynamic therapy
Bioorg. Med. Chem. , 15 , 3869-3873  (2008)
原著論文3
M. Nomoto, M. Miyata, M Shimada,
ME3738 protects against lithocholic acid-induced hepatotoxicity, associated with enhancement in biliary bile acid and cholesterol output
Eur. J. Pharmacol. , 574 , 192-300  (2007)
原著論文4
Takeuchi M, Takeuchi K, Kohara A,
Chromosomal instability in human mesenchymal stem cells immortalized with human papilloma virus E6, E7, and hTERT genes
In Vitro Cell Dev Biol Anim , 43 , 129-138  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-