血小板血栓形成を制御する遺伝子の同定とその成果を用いた予防と治療の個別化

文献情報

文献番号
200707005A
報告書区分
総括
研究課題名
血小板血栓形成を制御する遺伝子の同定とその成果を用いた予防と治療の個別化
課題番号
H17-ゲノム-一般-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
宮田 敏行(国立循環器病センター研究所 病因部)
研究分担者(所属機関)
  • 森崎 隆幸(国立循環器病センター研究所 バイオサイエンス部)
  • 岡山 明(国立循環器病センター 予防検診部)
  • 小久保 喜弘(国立循環器病センター 予防検診部)
  • 本田 繁則(国立循環器病センター研究所 病因部)
  • 小亀 浩市(国立循環器病センター研究所 脈管生理部)
  • 坂野 史明(国立循環器病センター研究所 脈管生理部)
  • 松本 雅則(奈良県立医科大学 輸血部)
  • 冨山 佳昭(大阪大学医学部附属病院 輸血部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
38,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、遺伝子・タンパク質の間のネットワーク研究を通して、血小板血栓の形成機構を解明することにより、国民の大きな健康上の不安要因である心筋梗塞や脳卒中の革新的予防法・治療法を目指す。
研究方法
本研究は研究を大きく3つのグループに分けて進めるものである。
「血小板凝集の細胞内ネットワーク」は、血小板インテグリンの活性化にかかわる新規因子の同定、および血栓センサー因子や制御因子に関する研究を行う。
「血小板凝集にかかわる細胞外ネットワーク」は、血小板の外部の刺激による血小板の活性化メカニズムにかかわる因子を同定する。
「血小板血栓にかかわる遺伝子を対象とした脳梗塞発症に関する遺伝子」の研究は、多数の試料の血小板凝集能のデータベース化を行うとともに、血小板血栓に重要な役割を果たす遺伝子の多型解析を行う。
結果と考察
「血小板凝集の細胞内ネットワーク」の研究では、血小板インテグリンαIIbβ3の活性化にかかわる因子をゲノム網羅的手法でスクリーニングし細胞内のシグナル伝達因子を同定した。
「血小板凝集にかかわる細胞外ネットワーク」の研究では、ゲノム網羅的手法を用いてスクリーニングを行い、血栓性血小板減少性紫斑病の原因遺伝子ADAMTS13に結合する因子を同定した。また、ADAMTS13の遺伝子欠損マウスおよびドメイン欠損マウスを作製しその表現型を解析した。
「血小板血栓にかかわる遺伝子を対象とした脳梗塞発症に関する遺伝子」では、血小板凝集関連遺伝子の多型を収集するとともに、一般住民の試料の血小板凝集能の測定を行い、世界的に類を見ない血小板凝集能のデータベース約1,600名が完了した。
結論
血小板インテグリンの活性化に関与する制御因子とADAMTS13結合タンパク質をゲノム網羅的手法を用いて同定した。一般住民約1,600名の血小板凝集活性能のデータベース化を行った。これらを用いて、人為的に血小板血栓を制御する基盤ができた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200707005B
報告書区分
総合
研究課題名
血小板血栓形成を制御する遺伝子の同定とその成果を用いた予防と治療の個別化
課題番号
H17-ゲノム-一般-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
宮田 敏行(国立循環器病センター研究所 病因部)
研究分担者(所属機関)
  • 森崎 隆幸(国立循環器病センター研究所 バイオサイエンス部)
  • 岡山 明(国立循環器病センター 予防検診部)
  • 小久保 喜弘(国立循環器病センター 予防検診部)
  • 本田 繁則(国立循環器病センター研究所 病因部)
  • 小亀 浩市(国立循環器病センター研究所 脈管生理部)
  • 坂野 史明(国立循環器病センター研究所 脈管生理部)
  • 松本 雅則(奈良県立医科大学 輸血部)
  • 冨山 佳昭(大阪大学医学部附属病院 輸血部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、タンパク質のネットワーク研究を通して、血小板血栓の形成機構を解明することにより、国民の大きな健康上の不安要因である心筋梗塞や脳卒中の革新的予防法・治療法を目指す。
研究方法
本研究は次の3つに分けて進める。
「血小板凝集の細胞内ネットワーク」の研究は、血小板血栓形成で中心的役割を果たす血小板インテグリンαIIbβ3の活性化にかかわる新規因子の同定、および血栓センサー因子や抑制因子に関する研究である。
「血小板凝集にかかわる細胞外ネットワーク」の研究として、高ずり応力下の動脈血栓で中心的役割を果たすVWFマルチマーとその切断酵素であるADAMTS13の研究を進め、ADAMTS13に結合する因子をゲノム網羅的手法を用いてスクリーニングした。
「血小板血栓にかかわる遺伝子を対象とした脳梗塞発症に関する遺伝子」の研究では、一般住民を対象にADPとコラーゲンを惹起物質とした血小板凝集能を測定し、そのデータベース化を行った。また、血栓形成に重要な役割を果たす候補遺伝子の全翻訳領域のDNAシークエンスを行い、多型の収集を行った。
結果と考察
「血小板凝集の細胞内ネットワーク」の研究では、血小板血栓形成で中心的役割を果たす血小板インテグリンαIIbβ3の活性化にかかわる新規因子を同定した。また、αIIbβ3の活性化にはADP受容体であるP2Y12は必要ではなく、P2Y12欠損血小板では瞬時にαIIbβ3が活性化するが、P2Y12欠損によりその活性化が維持できないことを明らかにした。
「血小板凝集にかかわる細胞外ネットワーク」では、VWF切断酵素ADAMTS13の結合タンパク質を同定した。また、Adamts13ノックアウトマウスおよびADAMTS13のC末端欠損マウスを作製し、生体内の血栓能を解析した。ノックアウトマウスは強い易血栓形成傾向をもたらすことなどを明らかにした。
「血小板血栓にかかわる遺伝子を対象とした脳梗塞発症に関する遺伝子」の研究では、一般住民(約1,600名)を対象にADPとコラーゲンを惹起物質とした血小板凝集能を測定し、そのデータベース化を行った。血小板凝集能に影響を与える遺伝子多型の研究を進めるため、血栓形成に重要な役割を果たす候補遺伝子の全翻訳領域のDNAシークエンスを行い、多型の収集を行った。
結論
血小板インテグリンの活性化に関与する細胞内因子の同定に成功した。ADAMTS13結合タンパク質の同定に成功した。一般住民の血小板凝集能の測定を行いデータベース化を進めた。これらの成果から、人為的に血小板凝集を制御する基盤ができた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-11-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200707005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
発現クローニングの手法を用いて血小板インテグリンの活性化に関与する細胞内因子の同定に成功した。私達の手法を用いると、血小板インテグリンを制御する他の因子の同定も可能となり、血小板血栓の形成にかかわる細胞内シグナル因子の同定に大きな道を開いた。また、ここで同定した因子も含めて、本手法を用いて同定する因子の研究は、血小板凝集の人為的制御に繋がる可能性があり、創薬への足がかりとなると期待される。
臨床的観点からの成果
本研究では、一般住民を対象に2種のアゴニストを用いて血小板凝集能を測定しデータベース化したが、血小板凝集能は採血後一時間以内に測定する必要があり、これまで世界でも大規模なゲノム研究には用いられていなかった。脳梗塞などの多因子疾患のゲノム関連解析研究は多くの成果が挙がっているものの、その機能の裏づけとなる研究が立ち後れている。血小板凝集能を含む私達のデータベースは、ゲノム関連解析で血栓症と関連を示した遺伝子の機能の確認に、多方面で広く貢献すると確信する。
ガイドライン等の開発
本研究は血栓症の基盤的な側面の研究であり、本研究の成果はガイドライン等に直接用いられるものではない。
その他行政的観点からの成果
血栓性血小板減少性紫斑病は、頻度は低いものの、適切な処置を誤ると致死に至る疾患である。血栓性血小板減少性紫斑病は、先天的もしくは後天的にADAMTS13活性が著減することにより発症する。本研究では、ADAMTS13遺伝子の多型を調査し変異を同定したが、いずれも活性に大きな影響を与えるものではなく、このことから先天性の血栓性血小板減少性紫斑病は極めて稀であるというこれまでの知見を裏付ける結果となった。
その他のインパクト
血栓性血小板減少性紫斑病の確定診断のため、ADAMTS13のプロテアーゼ活性の迅速・簡便な測定法として蛍光基質を開発した(2005年)。その後、本厚生労働科学研究を進めた期間内で、本基質は国内メーカーから市販され欧米を含む世界で使用されADAMTS13活性測定のスタンダードになった。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
69件
その他論文(和文)
57件
その他論文(英文等)
5件
学会発表(国内学会)
139件
学会発表(国際学会等)
59件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kokame K, Nobe Y, Kokubo Y, at al.
FRETS-VWF73, a first fluorogenic substrate for ADAMTS13 assay.
Br J Haematol , 129 (1) , 93-100  (2005)
原著論文2
Uemura M, Tatsumi K, Matsumoto M, at al.
Localization of ADAMTS13 to the stellate cells of human liver.
Blood , 106 (3) , 922-924  (2005)
原著論文3
Matsumoto M, Kawaguchi S, Ishizashi H, at al.
Platelets treated with ticlopidine are less reactive to unusually large VWF multimers than are those treated with aspirin under high shear stress.
Pathophyiol Haemost Thromb , 34 (1) , 35-40  (2005)
原著論文4
Kashiwagi H, Shiraga M, Kato H, at al.
Negative regulation of platelet function by a secreted cell repulsive protein, semaphoring 3A.
Blood , 106 (3) , 913-921  (2005)
原著論文5
Miyata T, Kokame K, Banno F.
Measurement of ADAMTS13 activity and inhibitors.
Curr Opin Hematol , 12 (5) , 384-389  (2005)
原著論文6
Kato H, Kashiwagi H, Shiraga M, at al.
Adiponectin acts as an endogenous antithrombotic factor.
Arterioscler Thromb Vasc Biol , 26 (1) , 224-230  (2006)
原著論文7
Kimura R, Sakata T, Kokubo Y,at al.
Plasma protein S activity correlates with protein S genotype but is not sensitive to identify K196E mutant carriers.
J Thromb Haemost , 4 (9) , 2010-2013  (2006)
原著論文8
Miyata T, Kimura R, Kokubo Y, at al.
Genetic risk factors for deep vein thrombosis among Japanese: importance of protein S K196E mutation.
Int J Hematol , 83 (3) , 217-223  (2006)
原著論文9
Shibagaki Y, Matsumoto M, Kokame K, at al.
Novel compound heterozygote mutations (H234Q/R1206X) of the ADAMTS13 gene in an adult patient with Upshaw-Schulman syndrome showing predominant episodes of repeated acute renal failure.
Nephrol Dial Transplant , 21 (5) , 1289-1292  (2006)
原著論文10
Banno F, Kokame K, Okuda T, at al.
Complete deficiency in ADAMTS13 is prothrombotic, but it alone is not sufficient to cause thrombotic thrombocytopenic purpura.
Blood , 107 (8) , 3161-3166  (2006)
原著論文11
Kimura R, Honda S, Kawasaki T, at al.
Protein S-K196E mutation as a genetic risk factor for deep vein thrombosis in Japanese patients.
Blood , 107 (4) , 1737-1738  (2006)
原著論文12
Miyata T, Kokame K, Banno F, at al.
ADAMTS13 assays and ADAMTS13- deficient mice.
Curr Opin Hematol , 14 (3) , 277-283  (2007)
原著論文13
Sakata T, Okamoto A, Morita T, at al.
Age- and gender-related differences of plasma prothrombin activity levels.
Thromb Haemost , 97 (6) , 1052-1053  (2007)
原著論文14
Morishita T, Matsumoto M, Honoki K, at al.
Successful Treatment of Primitive Neuroectodermal Tumor-associated Microangiopathy with Multiple Bone Metastases.
Jpn J Clin Oncol , 37 , 66-69  (2007)
原著論文15
Kobayashi T, Wad H, Kamikura Y, at al.
Decreased ADAMTS13 activity in plasma from patients with thrombotic thrombocytopenic purpura.
Thromb Res , 119 , 447-452  (2007)
原著論文16
Ishizashi H, Yagi H, Matsumoto M,at al.
Quantitative western blot analysis of plasma ADAMTS13 antigen in patients with Upshaw-Schulman syndrome.
Thromb Res , 120 , 381-386  (2007)
原著論文17
Matsumoto M, Kawa K, Uemura M, at al.
Prophylactic fresh frozen plasma infusion may prevent the development of hepatic VOD after stem cell transplantation via ADAMTS13- mediated restoration of von Willebrand factor plasma levels.
Bone Marrow Transplant , 40 , 251-259  (2007)
原著論文18
Masaie H, Oritani K, Yokota T, at al.
Adiponectin binds to chemokines via the globular head and modulates interactions between chemokines and heparan sulfates.
Exp Hematol , 35 (6) , 947-956  (2007)
原著論文19
Shida S, Nishio K, Sugimoto M, at al.
Functional imaging of shear-dependent activity of ADAMTS13 in regulating mural thrombus growth under whole blood flow conditions.
Blood , 1 (111) , 1295-1298  (2008)
原著論文20
Kokame K, Aoyama Y, Matsumoto M, at al.
Inherited and de novo mutations of ADAMTS13 in a patient with Upshaw-Schulman syndrome.
J Thromb Haemost , 6 (1) , 213-215  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-