感染リスクの排除、同一性の確保、免疫反応、がん化等の抑制及び培地等による有害作用の防止に関する研究

文献情報

文献番号
200706020A
報告書区分
総括
研究課題名
感染リスクの排除、同一性の確保、免疫反応、がん化等の抑制及び培地等による有害作用の防止に関する研究
課題番号
H17-再生-一般-022
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
土屋 利江(国立医薬品食品衛生研究所 療品部)
研究分担者(所属機関)
  • 配島 由二(国立医薬品食品衛生研究所 療品部)
  • 篠崎 尚史(東京歯科大学市川総合病院 角膜センター)
  • 澤 芳樹(大阪大学 医学部)
  • 高橋 恒夫(東京大学医科学研究所)
  • 加藤 幸夫(広島大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 辻 紘一郎(株式会社ツーセル)
  • 黒澤 努(大阪大学 医学部)
  • 澤田 留美(国立医薬品食品衛生研究所 療品部)
  • 加藤 玲子(国立医薬品食品衛生研究所 療品部)
  • 石川 格(国立医薬品食品衛生研究所 療品部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療等研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
31,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
再生医療を広く臨床応用可能な医療に発展させるには、培養担体の感染リスクの排除、間葉系幹細胞(hMSC)の安全性、同一性の確保およびガン化、(アロにおける)免疫反応等の抑制といった様々な問題をクリアーする必要がある。本研究ではこれらの検査法、評価法の確立を目的とする。
研究方法
hMSC継代培養による老化を、DNA microarray, Real time PCR、FACS解析、western blotで解析。ヒト単球様細胞を用いて、試料存在下で生成するIL-6を測定。hMSCのマーカー候補遺伝子を多数の骨髄細胞で同定する。幹細胞の安全性検査を管理する電子ソフトシステムの検討。ウイルス除去カラム、ガス循環型クリーンベンチ、使い捨てカプセル型培養装置の検討。Lewラットへ、同系と異系ラットの骨格筋芽細胞を移植し、CD4,8,11bの測定、心臓組織内のIL-1β、MCP-1を測定。さい帯血由来効率良いhMSC採取、培養し、軟骨分化能測定。hMSCとマウスmMSC、骨髄由来樹状細胞を使用し、免疫抑制効果を調べた。新規無血清培地での免疫抑制効果の評価。新規無血清培地のアパタイト共存下でのhMSCの増殖能評価。
結果と考察
複数のドナーのhMSCの培養と遺伝子発現変化を追跡、安全性評価候補遺伝子8種を示した。p16強発現癌細胞に要注意。MM6-CA8細胞またはヒト末梢血細胞利用し新しい発熱性物質試験法を開発。多数のMSCクローンで発現、他細胞で発現ン低い遺伝子マーカーを多数同定。臨床に使用可能少数マーカーセットを選択。低酸素培養可能使い捨て培養システムの開発。臍帯血から効率的に分離したhMSCから軟骨分化誘導方法を開発。心筋梗塞急性期における骨格筋芽細胞のアロ細胞移植治療は、免疫拒絶を惹起し、治療効果なし。MSCの免疫抑制効果に関わる因子の探索から、候補遺伝子を得た。新規無血清培地培養でも、免疫抑制効果を維持した。新規無血清培地は、アパタイト存在下でも、血清含有培地にくらべ、増殖能が優れていた。
結論
hMSC癌化の危険性評価の指標の候補遺伝子と評価スキームを示した。抽出操作不要のinvitro発熱性試験開発。hMSCマーカーは品質・同一性検査に有用。電子システムソフトによるデータ管理開発。クロス汚染のない低酸素培養システム構築。心筋梗塞急性期における骨格筋芽細胞同種他家細胞は、不適格。細胞利用治療でのMSCの免疫制御システムと新規無血清培地の有用性示す。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200706020B
報告書区分
総合
研究課題名
感染リスクの排除、同一性の確保、免疫反応、がん化等の抑制及び培地等による有害作用の防止に関する研究
課題番号
H17-再生-一般-022
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
土屋 利江(国立医薬品食品衛生研究所 療品部)
研究分担者(所属機関)
  • 蓜島 由二(国立医薬品食品衛生研究所 療品部)
  • 篠崎 尚史(東京歯科大学市川総合病院角膜センター)
  • 澤 芳樹(大阪大学 医学部)
  • 高橋 恒夫(東京大学医科学研究所)
  • 加藤 幸夫(広島大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 辻 紘一郎(株式会社ツーセル)
  • 黒澤 努(大阪大学 医学部)
  • 澤田 留美(国立医薬品食品衛生研究所 療品部)
  • 加藤 玲子(国立医薬品食品衛生研究所 療品部)
  • 石川 格(国立医薬品食品衛生研究所 療品部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療等研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
再生医療を広く臨床応用可能な医療に発展のため、培養担体の感染リスクの排除、間葉系幹細胞(hMSC)の安全性、同一性の確保およびガン化、(アロにおける)免疫反応等の抑制等の問題を解決する必要がある。これらの検査法、評価法の開発と確立を目的とする



研究方法
hMSC継代培養による老化を、各種解析方法で解析。ガン細胞を各種免疫不全動物に移植し腫瘍発生比較。ヒト単球様細胞を用いて、抽出せず、試料存在下でIL-6を測定し、エンドトキシン測定。hMSCのマーカー候補遺伝子の同定。幹細胞の安全性検査電子ソフトシステムの検討。ウイルス除去カラム、ガス循環型クリーンベンチ、使い捨てカプセル型培養装置の検討。Lewラットへ、同系と異系ラットの骨髄由来MSCまたは骨格筋芽細胞を移植しCD4,8,11bの測定、心臓組織内のIL-1β、MCP-1を測定。さい帯血由来効率良くhMSC採取培養後、骨・軟骨分化能測定。hMSCとマウスmMSC、骨髄由来樹状細胞を使用し、免疫抑制効果をサイトカイン・DNAchip等で調べた。新規無血清培地による免疫抑制効果、および、アパタイト共存下のhMSCの増殖能評価。
結果と考察
hMSCの安全性評価候補遺伝子8種と手法を提示。p16発現癌細胞、免疫不全動物10細胞移植腫瘍発生。MM6-CA8細胞・末梢血細胞で、新発熱性物質試験法を開発。MSCの実臨床使用少数マーカーセット選択。低酸素培養可能使い捨て培養システム開発。臍帯血効率的分離hMSCの骨分化の検討と軟骨から高分化誘導方法の開発。心筋梗塞急性期骨格筋芽細胞のアロ細胞移植治療は免疫拒絶惹起起、骨髄由来MSCアロ細胞移植は自己細胞同等治療効果有。MSCの免疫抑制効果因子の探索、候補遺伝子提示。新規無血清培地培養、免疫抑制効果維持。新規無血清培地汎用血清含有培地に比べ、アパタイト存在下増殖能が優れていた。
結論
hMSC癌化の危険性評価指標の候補遺伝子と評価スキームを明示。p16陽性の癌細胞10個移植で、NOG免疫不全動物腫瘍発生。腫瘍形成動物試験には、NOGマウスが最も有望。抽出操作不要のインビトロ発熱性試験開発。hMSCマーカーは品質・同一性検査に有用。電子システムソフトによるデータ管理開発。クロス汚染のない低酸素培養システム構築。心筋梗塞急性期における骨格筋芽細胞同種他家細胞は、免疫拒絶されるが、骨髄由来MSCのアロ細胞移植治療は、自己細胞と同等の安全性と治療効果あり。細胞利用治療でのMSCの免疫制御システムと新規無血清培地の有用性示す。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-11-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200706020C

成果

専門的・学術的観点からの成果
骨髄由来ヒト間葉系幹細胞(hMSC)増殖用の無血清培地を開発した。hMSC細胞の培養過程での遺伝子発現による特性解析を行い、8個の遺伝子指標を明らかにした。MSC細胞の免疫寛容に関わる遺伝子候補を示した。
臨床的観点からの成果
他家骨髄由来間葉系幹細胞は、心筋梗塞急性期に対する細胞移植で、自己細胞と同等の安全性および治療効果があること。アロ骨格筋芽細胞においては、臨床応用を慎重に検討する必要があることを明らかにした。
ガイドライン等の開発
次世代医療機器評価指標事業 再生医療審査WGにおいて、成果を重症心不全細胞治療用細胞シートに関する評価指標(案)としてまとめた。角膜上皮細胞シートに関する評価指標(案)も作成した。パブコメ後、室長通知となる予定である。
その他行政的観点からの成果
骨随由来ヒト間葉系幹細胞は、培養とともに老化する。ロット毎に遺伝子コピー数異常細胞の出現率が異なる。異常細胞は培養と共に増加すること。FISH等による遺伝子コピー数の異常細胞が有意に増加しない培養期間内に移植し、再生医療を安全に推進することが重要である。ヌードマウスは、腫瘍細胞の生着性が低い、生着性の高い免疫不全動物への移植が望ましい旨等生物由来技術部会で提言し、薬食発第0208003号等Q&Aの文書として掲載され、安全安心再生医療行政の推進に貢献した。
その他のインパクト
次世代医療機器事業 再生医療分野は、国内外ともに注目されている。第5回医療機器フォーラムを開催し、本事業で得られた成果を発表し、大きな反響があった。研究者同志に連携がスタートした。内閣府総合科学技術会議iPS細胞研究WG委員として参画し、「iPS細胞研究の推進について」および「iPS細胞研究等の今後の方向性についての詳細とりまとめ」(別添)作成に貢献した。

発表件数

原著論文(和文)
19件
薬学雑誌、日本臨床、バイオテクノロジージャーナル、
原著論文(英文等)
53件
Biomaterials, J. Biomed. Mater. Res., J. Artificial Organs, Tissue Engineering
その他論文(和文)
5件
再生医療技術の最前線、ティッシュエンジニアリング2007、再生医療品における幹細胞とバイオマテリアル開発から臨床まで
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
69件
日本バイオマテリアル学会、日本人工臓器学会、日本組織工学会、日本再生歯科医学会、日本薬学会レギュラトリーサイエンス部会、
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計10件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Takashi Yamada, Rumi Sawada and Toshie Tsuchiya
The effect of sulfated hyaluronan on the morphological transformation and activity of cultured human astrocytes.
Biomaterials , 28 , 844-850  (2008)
原著論文2
Saiffudin Ahmed, Toshie Tsuchiya, Tsutomu Nagira, et al.
Enhancing action by sulfated hyaluronan on Connexin-26,-32,and -43 gene expressions during the culture of normal human astrocytes
Journal of Biomedical Materials Research:Part A  (2008)
原著論文3
Tomomi Ito, Rumi Sawada, Yoko Fujiwara, Toshie Tsuchiya
FGF-2 increases osteogenic and chondrogenic differentiation potentials of human mesenchymal stem cells by inactivation of TGF-β signaling.
Cytotechnology , 56 , 1-7  (2008)
原著論文4
Takashi Yamada, Duk-Young Jung, Toshie Tsuchiya, et al.
Intracerebral microinjection of stannous 2-ethylhexanoate affects dopamine turnover in cerebral cortex and locomotor activity in rats
Journal of Biomaterial Materials Research: Part B-Applied Biomaterials , 87 , 381-386  (2008)
原著論文5
Matsuoka A., Haishima Y., Tsuchiya T. et al.
Organic-solvent extraction of model biomaterials for use in the in vitro chromosome aberration test.
J. Biomed. Mater. Res. Part A. , 86 (1) , 13-22  (2008)
原著論文6
Ito T, Sawada R, Tsuchiya T. et al.
FGF-2 suppresses cellular senescence of human mesenchymal stem cells by down-regulation of TGF-beta2.
Biochem. Biophys. Res. Commun. , 359 , 108-114  (2007)
原著論文7
澤田留美、伊藤友美、土屋利江
細胞組織利用医療機器に用いられる幹細胞の品質および安全性評価について
薬学雑誌 , 127 (5) , 851-856  (2007)
原著論文8
Banu N, Tsuchiya T, Sawada R.
Effects of a biodegradable polymer synthesized with inorganic tin on the chondrogenesis of human articular chondrocytes.
J. Biomed. Mater. Res. A. , 82 , 263-264  (2007)
原著論文9
Nasreen Banu, Toshie Tsuchiya
Markedly different effects of hyaluronic acid and chondroitin sulfate-A on the differentiation of human articular chondrocytes in micromass and 3-D honeycomb rotation culture.
J. Biomed. Mater. Res. , 80 , 257-267  (2007)
原著論文10
D.Y. Jung, T. Tsuchiya, S. Tsutsumi, et al.
A novel non-destructive method for measuring elastic moduli of cultivated cartilage tissue.
Key Engineering , 342 (343) , 853-856  (2007)
原著論文11
Tsutomu Nagira, Misao Nagahata-Ishiguro and Toshie Tsuchiya
Effects of sulfated hyaluronan on keratinocyte differentiation and Wnt and Notch gene expression.
Biomaterials , 28 , 844-850  (2007)
原著論文12
Masato Tamai, Kazuo Isama,Toshie Tsuchiya, et al.
Synthesis of novel β-tricalcium phosphate/haydroxyapatite biphasic calcium phosphate containing niobium ions and evaluation of ostelgenic properties.
J. Artificial Organs , 10 , 22-28  (2007)
原著論文13
Rumi Sawada, Tomomi Ito and Toshie Tsuchiya
Changes in expression of genes related to cell population in human mesenchymal stem cells during in vitro culture in comparison with cancer cells.
J. Artificial Organs , 9 , 179-184  (2006)
原著論文14
Saiffudin Ahmed, Toshie Tsuchiya
A mouse strain difference in tumorigenesis induced by biodegradable polumers.
J. Biomed. Mater. Res. , 79 , 409-417  (2006)
原著論文15
Yuping Li, Tsutomu Nagira, Toshie Tsuchiya
The effect of hyaluronic acid on insulin secretion in HIT-T15 cells through the enhancement of gap junctional intercellular communication.
Biomaterials , 27 , 1437-1443  (2006)
原著論文16
Nasreen Banu, Toshie Tsuchiya, Rumi Sawada
Effects of biodegrabable polymer synthesized with inorganic tin on the chondrogenesis of human articular cartilage.
J. Biomed. Mater. Res. , 77 , 84-89  (2006)
原著論文17
Nasreen Banu, Yasmin Banu, Toshie Tsuchiya, et al.
Biodegradable polymers in chondrogenesis of human articular chondrocytes,
J. Artificial Organs , 8 (3) , 184-191  (2005)
原著論文18
Tsutomu Nagira, Susan Bijoo Matthew, Toshie Tsuchiya,et al.
Enhancement of Gap Junctional Intercellular Communication of Normal Human Dermal Fibroblasts Cultured on Polystyrene Dishes Grafted with Poly-N-isopropylacrylamide(PIPAAm)
Tissue Engineering , 11 (9) , 1392-1397  (2005)
原著論文19
Ryusuke Nakaoka Saifuddin Ahmed, Toshie Tsuchiya
Hydroxy apatite microspheres enhance gap junctional intercellular communication of human osteoblasts composed of connexin 43 and 45,
J. Biomed. Mater. Res. A, , 74 (2) , 181-186  (2005)
原著論文20
Misao Nagahata, Ryusuke Nakaoka, Toshie Tsuchiya et al.
The response of normal human osteoblasts to anionic polysaccharide polyelectrolyte complexes.
Biomaterials , 26 (25) , 5138-5144  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-