文献情報
文献番号
200705029A
報告書区分
総括
研究課題名
ガスパン遊びに乱用されるブタンガス等の毒性等に関する調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H19-特別-指定-034
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
大野 泰雄(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
- 舩田 正彦(国立精神・神経センター精神保健研究所、薬物依存研究部)
- 平田 衛((独)労働安全衛生総合研究所 作業条件適応研究グループ)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ガスパン乱用について、国内外の文献調査を行い法医学,精神医学,身体医学等の見地から全体の傾向を把握する。また、ガスパン遊びに使われるガスを毒物及び劇物取締法の規制の範囲に含めることができるか否かを判断するための情報を得るため、ガスパン遊びに使用されている商品及びその主要成分について、それらの毒性について文献調査する。
研究方法
ガスパン遊びの実態についての調査は、スパン遊びに関する国内外の文献調査をおこなった。また、薬物依存民間回復施設(DARC)、少年鑑別所、また、児童自立支援施設でのアンケート調査および聞き取り調査を行った。ガスパンで使用される主要成分であるn-ブタンやイソブタン、プロパンの毒性については文献で調べた。また、各国の規制状況について調べた。また、爆発性を有するこれらの吸入毒性を行うことのできる実験装置を設計した。マウスの行動と中枢神経系への影響を検討した。
結果と考察
ガスパン遊び既往者は年齢的に若く、多剤乱用傾向が強い。注射行動は相対的に温和しい。ブタンガス乱用による死因は不整脈がもっとも多いと考えられたが,窒息・低酸素症,DADなどの肺病変の関与も示唆された。精神医学的には,単独での乱用率や,幻視を中心とする精神病性障害の発症率が高い。不整脈からの回復率と生命予後は良くない。引火・爆発事故による熱傷受傷の可能性が高い。児童自立支援施設入所中の少年の乱用薬物としてはブタン乱用がかなり多い。ブタン乱用として用いられた物質は「詰め替え用ターボライターガス」が多く,吸引方法は袋などに噴射して吸うことが多かった。ブタンへの依存状態や乱用とされた者も多くいた。主要成分ガスの実験動物での吸入毒性は弱いが高用量では中枢性の抑制が認められた。労働環境での曝露による健康影響は事故的な高濃度曝露と一例の肝障害事例を除いては、何らかの症状を呈する状態は観察されていない。事故例では中枢神経、消化器系、及び循環器系の影響が認められた。
結論
ガスパン遊びはより依存性の高い薬物への導入薬物のなりうることが示された。また、主要成分であるn-ブタンには中枢抑制作用があることが明らかになった。心身の健康被害や,引火・爆発事故の危険性について,小中高生を対象とした予防啓発活動の中で適切な情報提供を行う必要性があると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2008-11-11
更新日
-