法医剖検事例の公衆衛生学的時系列分析に基づく高齢者孤独死撲滅のための実証的予防政策立案

文献情報

文献番号
200701030A
報告書区分
総括
研究課題名
法医剖検事例の公衆衛生学的時系列分析に基づく高齢者孤独死撲滅のための実証的予防政策立案
課題番号
H19-政策-一般-006
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
田宮 菜奈子(筑波大学大学院 人間総合科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 山崎 健太郎(山形大学 医学部)
  • 宮石 智(岡山大学大学院 医歯薬総合研究科)
  • 山本 秀樹(岡山大学大学院 環境学研究科)
  • 松澤 明美(茨城キリスト教大学 看護学部看護学科)
  • 本澤 巳代子(筑波大学大学院 人文社会科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
6,591,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国における高齢者のいわゆる孤独死の予防的対策の構築に向けて、法医剖検事例、死体検視データを疫学的に分析することによる実態及び背景要因の解明を目的とした。
研究方法
1)基礎データとなる剖検例の情報の質の向上に向けて、剖検事例調査票を作成、それを利用して情報収集を開始し、さらに改訂を加えた。2)孤独死を取り巻く公衆衛生学的対策についての検討として、死亡診断書個票の検討、ソーシャルキャピタルの検討を実施した。3)1で作成したデータを使用し、法医剖検例におけるすべての高齢者死亡の実態とその背景要因についての疫学的ア
プローチによる分析を実施した(岡山県)。4)山形県における死体検視データを用いて高齢者事例を抽出検討し、さらにそれらのデータを東京都監察医務院検案データと比較した。5)孤独死が問題とされてきた震災地域の情報・資料を収集した。
結果と考察
まず、孤独死の情報について、警察は検視関連で入手しているものの保健行政へ届かない問題、異常死体発生の背景や取扱い方法による地域差、地域の孤独死防止への関与の少なさ等の問題が明らかになった。岡山における剖検記録の分析からは、看取られぬ死において独居は半数に過ぎず、また火災が半数以上と多かったことが明らかになり、対策の方向性として、独居者への対策のみでは不十分であること、さらに不慮の事故への具体的対策、特に火災への予防策も重要であることが明らかになった。またこれらをいわゆる"孤独死“に含めるかどうかも議論が必要である。山形県と東京都の比較では、高齢者検案数に対する独居生活高齢者の割合は東京都区部の方が山形県より2倍以上高く東京都区部の独居老人による孤独死の可能性の高さが示唆された。孤独死の予防策として有効と思われる地域の見守り活動の具体例として、行政と地域住民の人的ネットワークづくり、機
器等を活用した緊急通報システムづくり、夜間の見守りサービスが有効であろうことを把握できた。
結論
高齢者の孤独死予防に向けては、その実態をまず把握し、孤独死の概念をまず整理し、その中で何が予防すべき孤独死なのかを明らかにする必要がある。そのために、法医学データは大変有用であり、法医学データの公衆衛生学的分析およびその結果に基づく政策提言が重要である。

公開日・更新日

公開日
2008-05-21
更新日
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