都市構造、就労形態、支援施設の一体的整備による子育て支援環境の構築

文献情報

文献番号
200701026A
報告書区分
総括
研究課題名
都市構造、就労形態、支援施設の一体的整備による子育て支援環境の構築
課題番号
H19-政策-一般-002
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 栄治(国立保健医療科学院施設科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 饗庭 伸(首都大学東京大学院都市環境科学研究科都市システム科学専攻)
  • 佐藤 将之(早稲田大学人間科学学術院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
4,654,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は,子育てと就労の両立を支援するため,世帯の職住構造,利用する都市の公共空間,保護者の通勤・就労時間などの就労形態,保育施設の立地や運営時間,付帯サービスなどの子育て支援施設について一体的に考究するものである.
研究方法
 研究手法は以下の通り.
ⅰ)子育て世帯の就労状況と支援施設利用・子育てと就労の両立に関する意識の研究:既存データ分析(多摩市),アンケート調査による現状・施設利用意識の分析(多摩市・宇都宮市),幼稚園利用者の保育ニーズ分析(多摩市)
ⅱ)都市環境に関する評価の把握と考察:都市環境評価(多摩市),安全に配慮した道路整備に関する分析(茅ヶ崎市),都市構造により類型したアンケート分析(宇都宮市)


結果と考察
1)就労現況からみた子育て支援環境
・共働きと子育ての両立は,母親の勤務地に影響を及ぼす.
・送迎の分担率は,圧倒的に母親の方が高い.父親の拘束時間の平均は保育所開園時間と大差なく送迎の分担が可能になると思われるが,実際にはこうした分担は起きていない.
2)子育て支援施設利用意識からみた子育て支援環境
・保育所利用世帯の現在共働きの家庭でも,子育て期の共働きには積極的になりきれない.
・多くの世帯が,子育て期の働き方の変化はある程度受容しながらも,社会による支援を必要としている.
・長時間の保育サービスは必ずしも優先されず,こどもにとっての発達環境と,自宅に近い立地が重視されている.
・父親は,仕事を中心に,母親は保育所の立地や居住場所も含めたより複合的な要因を子育てと両立の困難の原因と捉えている.

結論
政策的観点からみた子育て支援環境
1)就労:休日にも働いている父母は全体の9割である.就労時間帯は,父母とも半数以上が自由にならないとしており,保育サービスや働き方を合わせた子育て施策が求められる.また男女の社会参画と子育て分担は均等ではない.就労場所が選べないことも問題であるが,就労場所が広範囲に分布する,都市構造の非完結性が影響していると考えられる.
3)都市構造:就労場所と居住地が離れていることが,就労と子育ての両立を著しく難しくしている.
4)保育施設:父母が送迎の分担を行えば,就労と通勤時間の合計時間をカバーしうると考えられる.保育施設の立地については,住宅から近いという保護者ニーズには対応しているものの,住宅→保育所→勤務地という通勤動線についてはさらに配慮されて然るべきである.

公開日・更新日

公開日
2008-04-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200701026C

成果

専門的・学術的観点からの成果
子育て期の親に視点を当て,都市の特徴,居住地・保育所・就労先など都市構造,通勤時間,勤務時間,勤務日数などの就労形態,保育所,幼稚園の預かり保育利用者の意識や運営形態などの子育て支援施設を一体的に考究することで,どのような要因により子育てが困難になっているかの概要を把握した.さらに詳細なデータの分析が求められる.
臨床的観点からの成果
研究対象地として,東京都多摩市,栃木県宇都宮市を取り上げ,アンケート調査による現況を把握することで,都市間での支援施設の利用意識,就労形態の差異を抽出した.これをもとに,都市固有の子育てに対する援助の方策を作成することが可能となった.
ガイドライン等の開発
茅ヶ崎市を事例とした都市内移動(主にベビーカー利用,子連れでの歩行などの子育て期の移動)の安全に配慮した道路整備方針の研究成果は,茅ヶ崎市役所都市政策課での都市マスタープラン審議委員会の資料として使用された.
その他行政的観点からの成果
現在,東京都多摩市,栃木県宇都宮市に対して,研究成果報告会の開催を打診中.
その他のインパクト
2008年6月21日開催の多摩ニュータウン学会研究発表会にて,講演依頼を受け了承した.
家庭力と地域サポート:子育ての場,多摩市公民館事業,地域ふれあいフォーラム,2009年

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
佐藤栄治,柳澤一希,山田あすか,西浦定継
Proposal for the Urban Restructuring Method from a Perspective on Child-Care Support - Case Study: Tama New Town, Tokyo -
首都大学東京21世紀COEプログラム Building Stock Activation 2007 proceeding , 333-340  (2007)
原著論文2
佐藤栄治,讃岐亮,山田あすか
住民・地権者負担を低減しつつ歩行者の安全性を確保するための道路整備計画の検討 -茅ヶ崎市香川駅周辺道路整備計画案に基づくケーススタディ-
都市科学研究 Journal of Urban Science  (2008)
原著論文3
Eiji SATOH, Asuka YAMADA, Shin AIBA, et al.
A SUSTAINABLE URBAN STRUCTURE AS A CHILD-CARE ENVIRONMENT - An Investigation on Child-Care Support Plans with an Unified Viewpoint on “Working Style・Urban Structure・Ideal Child-Care Support
The 7th International Symposium on Architectural Interchanges in Asia  (2008)
原著論文4
趙晟恩,佐藤栄治,山田あすか,他
多摩ニュータウンにおける子育て期の親による都市環境の利用と評価 子育て環境としての都市環境評価に関する研究 その1
日本建築学会計画系論文集 , 643 , 2003-2012  (2009)
原著論文5
山田あすか,佐藤栄治,讃岐亮
子育てと就労の両立に関わる現状と意識についての研究 -宇都宮と多摩市の保育所利用世帯を対象として
日本都市計画学会都市計画論文集 , 43 (3) , 175-180  (2008)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
-