国際比較パネル調査による少子社会の要因と政策的対応に関する総合的研究

文献情報

文献番号
200701009A
報告書区分
総括
研究課題名
国際比較パネル調査による少子社会の要因と政策的対応に関する総合的研究
課題番号
H17-政策-一般-021
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
西岡 八郎(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 津谷 典子(慶應義塾大学 経済学部)
  • 阿藤 誠(早稲田大学 人間科学学術院)
  • 福田 亘孝(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
14,450,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、国連ヨーロッパ経済委員会(UNECE)人口部が企画・実施している国際比較研究「世代とジェンダーに関する国際共同プロジェクト(GGPプロジェクト)」に企画から参加し、少子化のミクロ的側面に関するパネルデータと雇用・労働政策や家族・子育て支援政策などの少子化のマクロ的側面に関するコンテキスト・データとを分析し、広い視野からパートナー関係や親子関係について先進国間の共通性と日本的特徴を把握し、日本の未婚化・少子化の要因分析と政策提言に資することを目的とする。
研究方法
本研究は、個人を単位とした調査の実施・分析(ミクロ・データ)と各国の法制度改革時期や行政統計データを含むマクロ・データ・ベースの構築という、大きな2つの柱からなる。前者は、(a)時間と(b)空間の幅を拡げた研究枠組みで、日本では従来にはなかった研究方法である。その特徴は、時間軸としては同一調査対象者に対して2回の調査(パネル調査)を行なった点であり、空間軸としては国際的なGGPプロジェクトに参加することにより先進諸国(日本を含む20ヶ国程度)の間で同一調査項目をもつ同時期の調査結果を比較可能にした点である。
結果と考察
紙幅の関係上結果の一部を報告する。若い世代ほど最初の出産での就業継続が高くなっているが、相変わらず離職率は高く、育児休業制度がないか利用しにくいこと、夫の収入の高低と関係なく「子育ての経済的負担感」が出生力を低下させていること、夫の労働時間の増加が夫の家事参加を明瞭に低下させたこと、すなわちより現実的な労働時間の長さが家庭内分業のあり方を左右していること、妻が高学歴、夫の家事参加度が高いほど子ども数が少ないこと、しかし、追加出生意欲ならびに希望子ども数についてみると、高学歴、夫の家事参加度の高い夫婦ほどそれらが強いこと等の知見を得た。
結論
多くの政策的知見を得たがその一部を要約する。「仕事と子育ての両立への障害」を取り除くことを少子化対策の柱とすべきこと、このうち「両立支援策」としての育児休業制度の実効性を高める方策は少子化対策としても有効である。子育ての経済支援については、経済給付は低所得層に手厚くすることや子どもの成長段階に応じて変動するきめ細かい給付体系に変えることが重要である。またワークライフバランスを実現することが夫の育児参加を促し、さらには出生意欲を高める事にもつながり少子化対策としても有効である。

公開日・更新日

公開日
2008-07-14
更新日
-

文献情報

文献番号
200701009B
報告書区分
総合
研究課題名
国際比較パネル調査による少子社会の要因と政策的対応に関する総合的研究
課題番号
H17-政策-一般-021
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
西岡 八郎(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 津谷 典子(慶應義塾大学 経済学部)
  • 阿藤 誠(早稲田大学 人間科学学術院)
  • 福田 亘孝(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、国連ヨーロッパ経済委員会(UNECE)人口部が企画・実施している国際比較研究「世代とジェンダーに関する国際共同プロジェクト(GGPプロジェクト)」に企画から参加し、少子化のミクロ的側面に関するパネルデータと雇用・労働政策や家族・子育て支援政策などの少子化のマクロ的側面に関するコンテキスト・データとを分析し、広い視野からパートナー関係や親子関係について先進国間の共通性と日本的特徴を把握し、日本の未婚化・少子化の要因分析と政策提言に資することを目的とする
研究方法
本研究は、個人を単位とした調査の実施・分析(ミクロ・データ)と各国の法制度改革時期や行政統計データを含むマクロ・データ・ベースの構築という、大きな2つの柱からなる。前者は、(a)時間と(b)空間の幅を拡げた研究枠組みで、日本では従来にはなかった研究方法である。その特徴は、時間軸としては同一調査対象者に対して2回の調査(パネル調査)を行なった点であり、空間軸としては国際的なGGPプロジェクトに参加することにより先進諸国(日本を含む20ヶ国程度)の間で同一調査項目をもつ同時期の調査結果を比較可能にした点である。
結果と考察
結果の一部を報告する。若い世代ほど最初の出産での就業継続が高くなっているが、相変わらず離職率は高く、育児休業制度がないか利用しにくいこと、夫の収入の高低と関係なく「子育ての経済的負担感」が出生力を低下させていること、夫の労働時間の増加が夫の家事参加を明瞭に低下させたこと、すなわちより現実的な労働時間の長さが家庭内分業のあり方を左右していること、妻が高学歴、夫の家事参加度が高いほど子ども数が少ないこと、しかし、追加出生意欲ならびに希望子ども数についてみると、高学歴、夫の家事参加度の高い夫婦ほどそれらが強いこと等の知見を得た。
結論
多くの政策的知見を得たがその一部を要約する。「仕事と子育ての両立への障害」を取り除くことを少子化対策の柱とすべきこと、このうち「両立支援策」としての育児休業制度の実効性を高める方策は少子化対策としても有効である。子育ての経済支援については、経済給付は低所得層に手厚くすることや子どもの成長段階に応じて変動するきめ細かい給付体系に変えることが重要である。またワークライフバランスを実現することが夫の育児参加を促し、さらには出生意欲を高める事にもつながり少子化対策としても有効である。今年度で日本国内のプロジェクトは終了するが、日本を含む多くの先進諸国が参加する国連ヨーロッパ経済委員会(UNECE)の国際共同プロジェクトは継続する。今後も研究成果については広く公表していく。

公開日・更新日

公開日
2008-07-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200701009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
国連ヨーロッパ経済委員会(UNECE)人口部が企画実施した「世代とジェンダー・プロジェクト(GGP)」にアジアから唯一参加し20ヶ国近くが参加する国際共同プロジェクトの中核部分であるパネル調査に調査設計の段階から参加し、少子化のミクロ的側面に関するパネルデータと雇用・労働政策や家族・子育て支援政策などの少子化のマクロ的側面に関するコンテキスト・データを連結させて因果関係を分析する手法を導入して、少子化の国際比較実証分析を試み、さらに政策的含意まで導出した研究は国際的にもほとんど類例がない。
臨床的観点からの成果
自然科学系の課題ではないので特記する事項はない。
ガイドライン等の開発
本研究は、国連ヨーロッパ経済委員会(UNECE)人口部が企画と実施を行った国際共同プロジェクトとして実施した。その成果は、UNECEが運営するコンソーシアムへの各国別の報告書として取りまとめることになっており、世界の少子化対策に活用される。また、本研究で整備した日本の少子化を取り巻く制度政策面等に関するマクロ・コンテキスト・データ・ベースは、ドイツ・マックスプランク人口研究所のインターネットサイトで各国のデータとともに公開される予定で、各国の少子化対策に活用されるものと見込まれる。
その他行政的観点からの成果
日本の少子化問題の実態分析を国際共同プロジェクト(20ヶ国程度)に参加し、大規模な国際比較パネル調査によって行っている。国際比較分析、パネル分析両面から少子化問題に接近した研究は国内ではいまだに少数であり、実証的データの裏付けにより導出された政策的含意は、議論を呼ぶ結論、あるいは広く一般に言われている以外に新奇性がない提言であっても説得力向上に寄与している。日本の少子化対策に有効な提言を行うための資料を提示したといえ、政策形成にも寄与しているものと思われる。


その他のインパクト
マスコミでは、親子関係や夫婦関係が少子化に及ぼす影響を国際比較の観点から探る調査として他例をみないことや、「若年層でのフリーターの急増」「できちゃった婚」など少子化の背後にある社会や家族形成の変化を探る調査であることが注目され、読売新聞2回、日本経済新聞1の計3回、調査結果などが紹介された。また、公開シンポジウムについては、平成17年度に分担研究者が基調講演をつとめたシンポジウムが開催されたほか、最終(平成19)年度にも研究成果を広く普及させるための公開シンポジウムで成果を報告した。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
5件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
福田亘孝
女性学歴と出産戦略:Mover-Stayer Mixture Model による分析
人口問題研究 , 61 (4) , 3-12  (2005)
原著論文2
吉田千鶴
出生水準と就業状態との関係についての国際比較
人口問題研究 , 61 (4) , 22-38  (2005)
原著論文3
星敦士
世代のジェンダーの視点から見た相談ネットワークの選択
人口問題研究 , 61 (4) , 39-56  (2005)
原著論文4
津谷典子
わが国における家族形成パターンと要因
人口問題研究 , 62 (1) , 1-19  (2006)
原著論文5
岩間暁子
女性の就業が出生意欲に及ぼす影響のジェンダー比較
人口問題研究 , 62 (1) , 22-34  (2006)
原著論文6
岩間暁子
出産が女性の就業継続に及ぼす影響に関するパネル・データ
理論と方法 , 43  (2008)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
-