地理及び社会状況を加味した地域分析方法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200639001A
報告書区分
総括
研究課題名
地理及び社会状況を加味した地域分析方法の開発に関する研究
課題番号
H16-健康-一般-039
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
浅見 泰司(東京大学 空間情報科学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 丹後 俊郎(国立保健医療科学院)
  • 郡山 一明(救急救命九州研修所)
  • 有川 正俊(東京大学 空間情報科学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域健康危機管理研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
20,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域の健康被害の特異性を早期に検出するには、時空間データの入力・収集の手間を省き、空間データ化し、それに合った空間解析・統計モデルを開発して、リアルタイムで特異性検出できるシステムの開発が必要である。そこで、 (1)非定型書式である健康危機情報などのデータ群から、簡易に地図表示・加工を実現するソフトウェア(SDMS)の開発、(2)症候の時間・空間的特異性や統計特性を評価するためのモデル開発、(3)健康危機情報の分析による地域保健行政に役立つ実証分析を行う。
研究方法
 場所情報を含むデジタルドキュメントを、ドラッグ&ドロップするだけで自動的にデジタル場所データに変換し、デジタル地図上で高度な管理を可能にするSDMSを試作し、その有効性を示した。
 平面状における集積性の検定としてflexible scan(FS)法をもとに時間変化も考慮したサーベイランスに適用できる方法として拡張を試み、cylindrical scan法との比較を行った。
 AED(自動体外式除細動器)の最適配置地点に関する考察を行った。過去2年間、北九州市の133小学校の欠席率を検討した結果インフルエンザ流行の空間分布を分析した。
 個人を特定できない空間データとして分析しており、倫理面の問題はない。
結果と考察
 SDMSを試験的実装し、国立保健医療科学院の健康危機管理支援情報システムのユーザに対して試験公開を行った。また、保健所関係者に、ソフトウェア利用の講習会を開催した。
 集積検定法では微妙に同定された地域が異なっていた。同定された地域の相対リスクもFS法の方が高かった。
 青森県弘前市の心停止発生地点のデータを用いた場合のAEDの最適配置地点を示した。インフルエンザの分析においては、インフルエンザ流行期の小学校欠席率は、定点観測値とよく相関すること、また現在の学級閉鎖は地域拡大防止には役にたっていないことが判明した。
結論
 健康危機管理に重要な空間的分布状況を一般的な文書を簡単な操作を用いるだけで空間分布を求めるSDMSを試験的に公開し、ユーザから良い反応を得ることができた。統計モデル開発では、地域的集積性を同定する有効な手法を開発できた。健康危機情報分析においても、心停止発生地点にもとづく生存退院率を考慮したAEDの最適配置地点が得られた。インフルエンザの分析においては、小学校欠席率は地域の疾病早期把握には非常に優れていることが判明した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-05
更新日
-

文献情報

文献番号
200639001B
報告書区分
総合
研究課題名
地理及び社会状況を加味した地域分析方法の開発に関する研究
課題番号
H16-健康-一般-039
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
浅見 泰司(東京大学 空間情報科学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 丹後 俊郎(国立保健医療科学院)
  • 郡山 一明(救急救命九州研修所)
  • 有川 正俊(東京大学 空間情報科学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域健康危機管理研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 地域の健康被害の特異性を早期に検出するには、時空間データの入力・収集の手間を省き、空間データ化し、それに合った空間解析・統計モデルを開発して、リアルタイムで特異性検出できるシステムの開発が必要である。そこで、 (1)非定型書式である健康危機情報などのデータ群から、簡易に地図表示・加工を実現するソフトウェア(SDMS)の開発、(2)症候の時間・空間的特異性や統計特性を評価するためのモデル開発、(3)健康危機情報の分析による地域保健行政に役立つ実証分析を行う。
研究方法
 平成16年度には、空間オブジェクトに関する情報を地図情報に結びつけるプロットタイプのシステムを開発した。また、疾病空間情報および緊急健康危機情報を取得してその空間パターンの分析を進めた。平成17年度には、実現可能でかつ効果的な情報システム、空間解析手法、統計モデルの開発を行った。また、SDMSによる空間データと解析モジュールとの間のインタフェースについて研究を行い、実装版システムを構築した。平成18年度には統計モデル、空間解析手法の理論的な精緻化をはかるとともに、SDMSの改良を行いSDMSの完成版を構築した。
 個人を特定できない空間データとして分析しており、倫理面の問題はない。
結果と考察
 SDMSを試験的実装し、国立保健医療科学院の健康危機管理支援情報システムのユーザに対して試験公開を行った。また、保健所関係者に、ソフトウェア利用の講習会を開催した。
 集積検定法では微妙に同定された地域が異なっていた。同定された地域の相対リスクもFS法の方が高かった。
 青森県弘前市の心停止発生地点のデータを用いた場合のAEDの最適配置地点を示した。インフルエンザの分析においては、インフルエンザ流行期の小学校欠席率は、定点観測値とよく相関すること、また現在の学級閉鎖は地域拡大防止には役にたっていないことが判明した。
結論
 健康危機管理に重要な空間的分布状況を一般的な文書を簡単な操作を用いるだけで空間分布を求めるSDMSを試験的に公開し、ユーザから良い反応を得ることができた。統計モデル開発では、地域的集積性を同定する有効な手法を開発できた。健康危機情報分析においても、心停止発生地点にもとづく生存退院率を考慮したAEDの最適配置地点が得られた。インフルエンザの分析においては、小学校欠席率は地域の疾病早期把握には非常に優れていることが判明した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-05
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200639001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 空間ドキュメント管理システム(SDMS)は、今までのGISの概念を超えて、ドラッグアンドドロップのみでの空間分布表示を可能にした。このための位置情報検知技術、図化技術、データ操作技術などを実装化できる形で開発できた意義が大きい。また、空間統計学に基づいた新たな空間解析手法を開発し、その実証研究を行って、その有効性を確認できた。
臨床的観点からの成果
 感染症の行政課題は拡大阻止にある。したがって健康危機管理の観点からは、感染症の発生を、原因如何に関係なく早い段階で把握し対応を行うことにある。
そのためには、どの時点で調査を含めた医療介入を行うかの決定を支援するシステムがあると良い。小学校欠席率は既存の感染症サーベイランスとの相関もよく、さらに迅速性と地域把握性という大きな特徴があることが分かった。
 学問的には欠席率という分母を持つ比較を行うことにより、感染症拡大状況を数学的に把握・比較することが可能となった。
ガイドライン等の開発
 インフルエンザの拡大阻止、AEDの設置場所の効率化は今後、行政における健康危機管理用のガイドライン作成に資する。
その他行政的観点からの成果
 一般人によるAEDを使用した除細動(PAD)が厚生労働省医政局指導課長通知によって認められて以来、様々な場所にAEDが設置されている。設置場所については、駅や公民館など人が集まる場所を先に決定していたが、住宅地での検証は実施されていない。本法を用いることで、コンビニエンスストアに配置するなど新たな施策を実施するときに大きな指標になる。
その他のインパクト
 浅見泰司,一般ドキュメントをドラッグだけで地図表示.SDMS 空間ドキュメント管理システム.GIS NEXT,特集:新しいマップビジネスの行方.第13号,2005年10月,株式会社クリエイト・クルーズ, pp. 68-71.にSDMSが取り上げられた。また、国立保健医療科学院における健康危機管理保健所長等研修でSDMSの実習研修をおこなったり、研修会において健康危機管理のあり方を示した。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
20件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
6件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kouzou Noaki, Masatoshi Arikawa
Geocoding Natural Route Descriptions using Sidewalk Network Databases
International Workshop on Challenges in Web Information Retrieval and Integration (WIRI2005) , 136-144  (2005)
原著論文2
Masatoshi Arikawa, Toru Hayashi, Kaoru Sezaki
Weblog-based Egocentric Mapping with Track Backs on Spatial Relations
Proceedings of Active Media Technology 2006, Frontiers in Artificial Intelligence and Applications, IEEE , 150-155  (2006)
原著論文3
Yoh Shiraishi, Masatoshi Arikawa, Takeshi Sagara, et al.
Spatial Document Management System for Ubiquitous Mapping
International Journal of Urban Sciences , 10 (2) , 106-114  (2006)
原著論文4
片岡裕介,浅見泰司,浅利靖,他
需要密度に対する供給効果を最大化するAEDの最適配置地点
GIS-理論と応用 , 14 (2) , 1-9  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-11-20
更新日
-