高気圧作業に伴う標準減圧表の安全性評価のための疫学的調査

文献情報

文献番号
200635003A
報告書区分
総括
研究課題名
高気圧作業に伴う標準減圧表の安全性評価のための疫学的調査
課題番号
H16-労働-一般-009
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
眞野 喜洋(東京医科歯科大学大学院 健康教育学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 山見 信夫(東京医科歯科大学大学院 健康教育分野)
  • 芝山 正治(駒沢女子大学 人文学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 当研究の目的は減圧症発症予防対策が十分に満足し得るモデル減圧表を作製することであり、旧来の標準減圧表のリスクを軽減させる方策の検討を通して、現行の標準減圧表を正しく評価することにある。本研究で提案されるモデル減圧表は新しい考え方の基づくものであり、特に減圧中に純酸素吸入を採用することで、身体内に形成される無数の silent bubbles の消失を計ることが期待でき、開発試行されたモデル減圧表は、国際的にも広く普及できうるものと期待される。
研究方法
東京医科歯科大学と駒沢女子大学による研究方法は、
・潜水及び圧気土木作業現場の実態調査
・窒素ガス溶解モデルのプログラム作成
・ヘリウムガス溶解モデルのプログラム作成
・酸素減圧の有用性検討
・酸素毒性と活性酸素の係わりの分析
・モデル減圧表の作製
・高圧則に基づく標準減圧表別表第 1, 別表第 2, 別表第 3 についての最終評価と新たな問題点の洗い出し
結果と考察
 体内不活性ガス溶解プログラムが完成し、マルチレベルにおける不活性ガス溶解量を計算可能となった。漁業潜水者、海洋潜水者、レジャー関係の潜水者などの潜水プロファイルの調査により窒素ガスと減圧症発症の危険性を評価できた。酸素中毒予防のための1日および1週間の酸素毒性に対する対応が可能となり、減圧中の酸素吸入圧力を0.12MPa(水深12m)以浅に設定するべきである。モデル減圧症が完成したが、外部研究者の検証および実地調査の成果を待つのみとなった。
結論
 本研究は作業効率や経済効率の立場からではなく、作業者に対してどれだけ安全な業務を保証出来るかとの立場から減圧表を勘案するものであるから、国際基準からみた安全性評価のできる水深60m(0.6 MPa)、最大45分までの減圧表を提示するべきか、あるいはその減圧表を導く基本的な考え方のみを提示すべき、実際の減圧表は企業サイドで総意工夫して独自の減圧表を策定して企業責任で安全な潜水(圧気)作業を行なってもらう、つまり減圧症管理もその他の業務管理と同様に自己責任とすべきではなかろうか。

公開日・更新日

公開日
2007-04-26
更新日
-

文献情報

文献番号
200635003B
報告書区分
総合
研究課題名
高気圧作業に伴う標準減圧表の安全性評価のための疫学的調査
課題番号
H16-労働-一般-009
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
眞野 喜洋(東京医科歯科大学大学院 健康教育学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 山見 信夫(東京医科歯科大学大学院 健康教育学分野)
  • 芝山 正治(駒沢女子大学人文学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
当研究の目的は減圧症発症予防対策が十分に満足し得るモデル減圧表を作製することであり、旧来の標準減圧表の高いリスクを軽減させるを通して、現行の標準減圧表を正しく評価することにある。それは高気圧作業領域で従来から注目されていた急性期の減圧症のみならず無菌性骨壊死を含む慢性減圧症対策でもあり、今まで無害とされていた無症候生気泡つまり silent bubbles といえども、この形成を少しでも減少させる必要性が叫ばれているからに他ならない。本研究で提案されるモデル減圧表はこれらの改善に対しても一定の成果が期待でき、特に減圧中に純酸素吸入を採用することで、身体内に形成される無数の silent bubbles の消失を計ることが期待される。
 このことが可能となれば、本研究で開発試行されたモデル減圧表は、国際的にも広く普及できうるものと期待される。
研究方法
東京医科歯科大学と駒沢女子大学の共同研究
・潜水及び圧気土木作業現場の実態調査
・窒素ガス溶解モデルのプログラム作成
・酸素減圧の有用性検討
・酸素毒性と活性酸素の係わりの更なる分析、文献検索
・モデル減圧表の作製
・ヘリウムガス溶解モデルのプログラム作成
・異なる減圧理論に基づく減圧症発症要因分析
・高圧則に基づく標準減圧表別表第1,別表第2,別表第3の最終評価と新たな問題点の洗い出し
結果と考察
漁業潜水者、海洋潜水者、レジャー関連潜水者などの潜水プロファイルを調査でき、窒素ガス溶解量と減圧症の危険性評価が可能となった。酸素減圧と酸素中毒に関して1日および1週間に許容可能な肺毒性単位を調べることができ、減圧中の酸素吸入圧力(水深)は0.12MPa(12m)以浅深度で行うことにより酸素毒性に対する予防が可能である。モデル減圧表が完成したが、外部研究者による検証および実地検証が必要である。
結論
本研究は作業効率や経済効率の立場からではなく、作業者に対してどれだけ安全な業務を保証出来るかとの立場から減圧表を勘案するものであるから、国際基準からみた安全性評価のできる水深60m(0.6 MPa)、最大45分までの減圧表を提示するべきか、あるいはその減圧表を導く基本的な考え方のみを提示すべき、実際の減圧表は企業サイドで総意工夫して独自の減圧表を策定して企業責任で安全な潜水(圧気)作業を行なってもらう、つまり減圧症管理もその他の業務管理と同様に自己責任とすべきではなかろうか。 

公開日・更新日

公開日
2007-04-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200635003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
昭和36年以来改善改正がストップされている日本の標準減圧表を国際的にみても優れたものにするため、減圧表別表第1,別表第2,別表第3に代わる減圧表の作成が必要不可欠である。新しい減圧表を作成するのみではなく、安全性向上が十分に満足なものであると推論できるものかどうかについても欧米の最先端研究者に外部評価してもらい、さらに補足の必要性があるかどうかの検証も必要であろう。
臨床的観点からの成果
従来の我が国における潜水作業ならびにケーソン等の圧気土木作業では高気圧環境下における労働は空気呼吸のみしか方法がなく、その為,作業圧力ならびに作業時間について著しい制限が加えられているばかりか、負荷の大きい圧気作業ほどその後の大気圧力下への復帰減圧時間が長くなり、作業効率が低下するばかりか、減圧症罹患率の増加という事態も生じざるを得なかった。本研究成果はヘリウムなどの不活性ガスと酸素減圧を併用することでこれらの問題点を一挙に解決し、臨床的にもより実用的かつ安全確実となった。
ガイドライン等の開発
実用的な減圧表を表示することで現行の運用よりも遙かに安全な高気圧作業管理は可能となったが、より確実な運用を保証するためには当方で定めるガイドラインとしてのマニュアルに則って実務講習訓練を課す必要がある。a)最大水深(作業圧力)に見合った最大作業時間の設定。b)最大水深(作業圧力)に見合った呼吸用酸素分圧(混合比率)の設定。c)1回毎の作業に基づくUTPD(肺酸素毒性量)の計算。d)その他、ガイドラインで示されている内容の遵守。
その他行政的観点からの成果
現行の労働安全衛生規則、高気圧作業安全衛生規則の一部改正ならびに厚労省監修の「潜水士テキスト」・「高気圧作業安全衛生の手引」の全面改定などの検討が必要となる。また、かつては存在しなかったレジャーに係わるインストラクターなどの新職種と従来からの作業ダイバーとは全く異なる属性のグループ間調整、潜水機材やケーソン機材の変遷に伴う規則改正が今回行政施策に反映されるならば、この歪みも同時に是正することができる。
その他のインパクト
潜水作業における混合ガス潜水、バンス潜水等、酸素減圧、潜函におけるエレベーター使用、混合ガス呼吸、酸素減圧らは海外では主流になっているが、それらは全て海軍、民間機関での開発であり、国の施策となることは世界で初めてのことである。また、日本の潜水、圧気に関する安全衛生法規をそのままコピーして国の法律として利用している韓国、台湾などに与える衝撃は極く大きいものと予測される。これはgrobal standard と成り得る。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
14件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
潜水関係の講演会、減圧表改正案の説明会

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
眞野喜洋、山見信夫、芝山正治 他
形成気泡からみたわが国の標準減圧表評価
日本高気圧環境医学会 , 40 (1) , 21-24  (2005)
原著論文2
芝山正治、山見信夫、眞野喜洋 他
潜水後の高所移動箇所と減圧症について-伊豆半島を中心として-
日本高気圧環境医学会関東地方会誌 , 5 (1) , 42-46  (2005)
原著論文3
Yamami N, Shibayama M, Mano Y etal.
Automated pneumatic caisson systems in Japan.
The First Panel on U.S./Japan Diving Physiology, Technology and Aerospace Medicine (Formerly UJNR),Edited by Yoshihiro Mano,MD , 13-17  (2006)
原著論文4
Yamami N, Shibayama M, Mano Y, etal.
A mixture gas breathing system in pneumatic caisson work.
The First Panel on U.S./Japan Diving Physiology, Technology and Aerospace Medicine (Formerly UJNR),Edited by Yoshihiro Mano,MD, , 18-21  (2006)
原著論文5
眞野喜洋、山見信夫、芝山正治 他
圧気潜函工法における問題点について
日本高気圧環境・潜水医学会誌 , 41 (1) , 25-30  (2006)
原著論文6
芝山正治、山見信夫、眞野喜洋 他
ガイドダイバーの潜水プロフィールと窒素ガス溶解量から減圧症発症予防対策を考察
日本高気圧環境・潜水医学会関東地方会誌 , 6 (2) , 28-30  (2006)
原著論文7
芝山正治、山見信夫、眞野喜洋 他
レジャーダイバー調査(10年間)からみたダイバー人口動態の推移
日本高気圧環境・潜水医学会 , 42 (1) , 17-21  (2007)
原著論文8
山見信夫、芝山正治、眞野喜洋 他
米軍再圧治療表6による Reactive Oxygen Metabolites(ROM)と Biological Antioxidant Potential(BAP)の変化
日本高気圧環境・潜水医学会 , 42 (1) , 23-28  (2007)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-