正常圧水頭症と関連疾患の病因・病態と治療に関する研究

文献情報

文献番号
200633026A
報告書区分
総括
研究課題名
正常圧水頭症と関連疾患の病因・病態と治療に関する研究
課題番号
H17-難治-一般-017
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
湯浅 龍彦(国立精神・神経センター国府台病院 神経内科)
研究分担者(所属機関)
  • 石川 正恒(田附興風会北野病院 脳神経外科)
  • 森 悦朗(東北大学大学院医学系研究科 高次脳機能障害学)
  • 堀 智勝(東京女子医科大学医学部 脳神経外科)
  • 鈴木 則宏(慶應義塾大学医学部 神経内科)
  • 加藤 丈夫(山形大学大学院生命環境医科学専攻 生命情報内科学科)
  • 新井 一(順天堂大学医学部 脳神経外科)
  • 佐々木 真理(岩手医科大学放射線医学講座 神経放射線診断学)
  • 和泉 唯信(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 神経内科)
  • 稲富 雄一郎(済生会熊本病院脳卒中センター)
  • 大浜 栄作(鳥取大学医学部神経病理学)
  • 数井 裕光(大阪大学大学院医学系研究科 精神医学教室)
  • 後藤 淳(東京都済生会中央病院 神経内科)
  • 榊原 隆次(千葉大学医学部附属病院 神経内科)
  • 佐々木秀直(北海道大学大学院医学研究科神経内科学分野 臨床神経学)
  • 冨永 悌二(東北大学大学院医学系研究科神経外科学分野 脳神経外科学)
  • 中野 今治(自治医科大学 神経内科)
  • 新村 核(国立精神・神経センター国府台病院 脳神経外科)
  • 橋本 正明(公立能登総合病院 脳神経外科)
  • 本田 聡(聖路加国際病院 放射線科)
  • 松前 光紀(東海大学医学部 脳神経外科)
  • 宮下 光太郎(国立循環器病センター 内科脳血管部門)
  • 森 敏(松下記念病院 神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特発性正常圧水頭症(iNPH)は高齢者の認知障害、歩行障害、転倒や寝たきりの原因として重要な疾患である。症例によっては脳室腹腔(VP)シャント術により症状を軽快させることも可能であるが、疾患の本態は依然として不明であり、病因の理解と新たな治療法の開発が緊要である。重点課題として、(1)iNPHの疫学研究、(2)原因究明と病態の解明、(3)治療研究を取り上げて研究を進める。
研究方法
標記の目的を達成する為に、平成18年度では、(1)iNPHの疫学研究では、地域ベースでの住民検診が実施された。また、一般救急病院における頻度、そして介護施設に入所中の高齢者の中での頻度が検討された。(2)原因究明と病態研究では、iNPH患者の認知機能、歩行障害の解析、手術前後での重心動揺の解析、髄液中のiNPH関連蛋白解析、髄液中のモノアミン代謝の検討、画像研究(スペクト画像、脳槽シンチ、脳血流)、脳のコンプライアンスに関する基礎研究、iNPH症例の脳病理研究が行われた。(3)治療研究では、VPシャント術の治療成績が示された。
結果と考察
iNPHの疫学調査(地域ベースと施設ベース)が実施され、地域検診結果から61歳で0.45%、70〜72歳で0.53%がiNPHの画像所見と認知障害か歩行障害を合わせ持った。これらはiNPHの予備群と見なされる。iNPHの危険因子として、今回、耐糖能異常と喫煙の既往が指摘された。また、iNPHの高次脳機能障害は前頭葉機能障害であること、VPシャント術により歩行障害は改善するが、認知障害への効果は乏しい。従って今後は認知障害に対する薬物療法を含めた治療法の検討が必要となる。iNPHの原因は依然として不明である。iNPH患者の髄液中に特異的な糖蛋白(LRG)の存在が明らかとなった。また、世界で初めてと思われるiNPHの脳病理所見が示され、脳の最小動脈に強調される動脈硬化像、アストログリアの強い変性など原因に迫る新しい知見が示された。
結論
iNPHは超高齢化社会を迎えたわが国の大きな社会問題である。その研究班が出来たことは極めてタイムリーであるし、意義深いことである。研究班スタート2年目の本年度は上に述べたように今後に期待できる成果が上がった。

公開日・更新日

公開日
2007-04-23
更新日
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