基礎研究と臨床研究の融合による、神経疾患によってひきおこされる疼痛に対する新しい治療法の開発

文献情報

文献番号
200632066A
報告書区分
総括
研究課題名
基礎研究と臨床研究の融合による、神経疾患によってひきおこされる疼痛に対する新しい治療法の開発
課題番号
H18-こころ-一般-016
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
柿木 隆介(生理学研究所統合生理研究系)
研究分担者(所属機関)
  • 片山 容一(日本大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
17,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経・筋疾患による疼痛は、視床痛、幻肢痛を初めとする極めて難治性かつ発症のメカニズムが明らかでは無いものが多い。種々の非侵襲的計測法を用いてヒトの脳内痛覚認知機構を明らかにすること、及び、基礎的研究によって得られた知見を元にして除痛治療を行う事、すなわち神経・筋疾患による疼痛治療 におけるEvidence-Based Medicineの施行が主要研究目的である。
研究方法
神経・筋疾患によってひきおこされる難治性疼痛は、その発症メカニズムと責任部位が明らかにされていないため、治療が困難である。そのためには、先ず、健常人における脳内の痛覚認知機構を最新の非侵襲的脳機能計測法を用いて詳細に明らかにする。その結果に基づき、痛覚認知に重要な役割を果たしている部位を脳外科的に刺激、凝固あるいは摘出することにより、除痛治療を行う。また、極めて特殊な痛みを訴える患者さんに対しては、各患者さん各々に非侵襲的脳機能計測を行い、その結果に基づいて治療を行っていく。
結果と考察
研究代表者は本年度は5編の英文原著論文を発表した。代表的な研究を1つ紹介する。fMRIを用いてfirst painとsecond painに対する脳活動部位を記録した。視床、第2次体性感覚野、島、帯状回はいずれの刺激に対しても活動を示し、これらの部位が痛覚認知に重要な役目を果たすことが明らかになった。しかし、島前部、帯状回の一部、前補足運動野はsecond painに特異的に関連することが明らかとなった。(Qiu et al., Cerebral Cortex, 2006)。研究分担者は、視床痛などの中枢性疼痛に対する外科的な治療法の中では、大脳皮質運動領刺激が有用であることをこれまで明らかにしてきた。18年度は大脳皮質運動野を刺激して脊髄硬膜外から下行性の脊髄誘発電位を記録する方法を開発し、D-waveを最も高振幅で誘発する部位の刺激が疼痛の治療に有効であることを証明した。
結論
痛覚認知に関与する脳部位が次第に明らかになりつつある。また、これまで経験的に行われてきた外科的除痛療法の作用機序を、基礎的知見に基づいて解釈できるようになってきた。同様に、大脳に情報を送りあるいは情報が送られてくる脊髄の機能も明らかになってきた。今後は、末梢神経、脊髄、脳幹、大脳を総合的に解析してくる必要があることがあらためて認識された。

公開日・更新日

公開日
2007-04-25
更新日
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