ライソゾーム酵素欠損症の病態解析と新しい経口治療薬の開発

文献情報

文献番号
200632040A
報告書区分
総括
研究課題名
ライソゾーム酵素欠損症の病態解析と新しい経口治療薬の開発
課題番号
H17-こころ-一般-019
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 義之(国際医療福祉大学 大学院)
研究分担者(所属機関)
  • 松田潤一郎(医薬基盤研究所生物資源研究部)
  • 難波 栄二(鳥取大学生命機能研究支援センター)
  • 伊藤 雅之(国立精神・神経センター神経研究所)
  • 黒澤美枝子(国際医療福祉大学基礎医学研究センター)
  • 大野 耕策(鳥取大学医学部)
  • 衛藤 義勝(東京慈恵会医科大学)
  • 酒井 規夫(大阪大学大学院医学系)
  • 石井  達(帯広畜産大学畜産学部)
  • 榊原 康文(慶應義塾大学理工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
24,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遺伝性ライソゾーム病をモデル疾患として、新しい分子治療法(ケミカルシャペロン療法)を確立する。これまでに有機合成により開発したNOEV (N-オクチル-4-エピ-β-バリエナミン) をβ-ガラクトシダーゼ欠損症(特にGM1-ガングリオシドーシス)患者由来の培養細胞、酵素欠損モデル動物、NOV(N-オクチル-β-バリエナミン)をβ-グルコシダーゼ欠損症(ゴーシェ病)患者由来の培養細胞にそれぞれ投与した。その有効性と毒性を検討後、ヒト患者に対する治療薬として開発することを最終目標とする。
研究方法
β-ガラクトシダーゼ欠損ノックアウトマウスをもとに、軽症型GM1-ガングリオシドーシスモデルマウスを開発した。この動物の神経学的臨床経過を運動・反射機能を中心とした11項目の検査法にまとめ、脳障害の重症度を判定した。シャペロン化合物NOEVを疾患モデルマウスに経口投与し、中枢神経系をはじめとする諸臓器への効果を判定した。ゴーシェ病については ヒト患者由来の線維芽細胞を用い、シャペロン化合物NOVの試験管内阻害実験、培養系負荷試験を行った。多くの細胞のスクリーニングの結果、この化合物に著しい反応を示した変異細胞には、細胞学的生化学的分子生物学的分析を行った。
結果と考察
正常および疾患モデルマウスの神経学的スコアの差が加齢とともに著明となった。化合物の早期投与により、速やかな治療効果がみられ、早期治療が重要であることがわかった。ゴーシェ病にもNOVの有効な変異と無効な変異があった。われわれの提唱するケミカルシャペロン療法が、遺伝性β-ガラクトシダーゼ欠損症、特にGM1-ガングリオシドーシスに有効であり、NOEVが特異的な分子治療薬になると期待している。シャペロン療法の開発研究には、薬剤候補化合物の大量合成・供給、ならびに実験動物の確保が必要である。来年度中に大動物に対する投与実験を実施するための大量合成を行い、最終的にヒト患者への治療実験の準備を進める。
結論
新しい研究方向として、β-ガラクトシダーゼ欠損マウスへのNOEV長期投与実験と、その臨床評価システムの開発を行った。系統的な解析により、経口投与の妥当性、化合物の血液脳関門通過を検証した。中枢神経系には血液脳関門が存在するため、神経遺伝病一般を対象とする治療実験はこれまで極めて困難であった。低分子化合物によるケミカルシャペロン療法は、この問題の解決に大きな意味を持つ。本研究によりシャペロン療法の概念を確立し、多くの遺伝病に適用されるようになることを期待する。対象疾患の拡大により、心身障害児・者への予防・治療的対応が可能になるであろう。

公開日・更新日

公開日
2007-04-24
更新日
-