文献情報
文献番号
200632005A
報告書区分
総括
研究課題名
パニック障害の治療法の最適化と治療ガイドラインの策定
課題番号
H16-こころ-一般-007
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
熊野 宏昭(東京大学医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
- 久保木 富房(医療法人秀峰会 楽山病院)
- 穐吉 條太郎(大分医科大学 精神神経医学教室)
- 井上 雄一(財団法人神経研究所 研究部)
- 大野 裕(慶應義塾大学保健管理センター)
- 岡崎 祐士(都立松沢病院)
- 貝谷 久宣(医療法人和楽会)
- 坂野 雄二(北海道医療大学 心理科学部 臨床心理学科)
- 佐々木 司(東京大学保健センター 精神科)
- 佐藤 典子(国立・精神神経センター武蔵病院 放射線診療部)
- 塩入 俊樹(新潟大学大学院医歯学総合研究科 精神医学分野)
- 清水 栄司(千葉大学大学院医学研究院 神経情報統合生理学)
- 竹内 龍雄(帝京大学ちば総合医療センター メンタルヘルス科)
- 長澤 達也(金沢大学医学部附属病院 神経精神科)
- 野村 忍(早稲田大学人間科学部 学術院)
- 原井 宏明(独立行政法人国立病院機構菊池病院 臨床研究部)
- 平安 良雄(横浜市立大学医学部 精神医学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
19,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
パニック障害に対する薬物療法、心理学的治療法、医療システムの最適化を推進し、治療ガイドラインを策定する。
研究方法
第1~2年度で、発症や維持及び病勢と関わる身体的・心理的要因、医療システムの研究、先行研究の系統的レビューを行い、第3年度に治療ガイドラインを完成させる。
結果と考察
【身体的要因】パニック障害の病態に、扁桃体と中脳水道周辺灰白質を中心にした「パニック神経回路」及びそれを制御するための前頭前野の脳機能が深く関与しており、病勢や治療によってその活動が変化することを、ポジトロンCT、核磁気共鳴画像、機能性核磁気共鳴画像、光トポグラフィー、脳波など複数の指標で明らかにした。パニック障害患者700例を対象に、全ゲノム関連解析のデータから、100以上の候補遺伝子群を明らかにし、その一方で、COMT遺伝子多型、NPSR遺伝子多型(男性のみ)で、有意差が認められた。【心理行動要因】集団認知行動療法に対する治療反応性に血清BDNF、損害回避傾向、神経症性傾向が関連していた。個人認知行動療法での症状改善と自分の感情状態を客観視する能力に関係があると考えられる左背内側前頭前野の糖代謝増加の関連が見いだされたが、同部位の糖代謝は治療後のみで縫線核周辺部位の糖代謝と正の相関を示した。【治療システム】精神科専門施設においても、エビデンスに基づいた治療(抗うつ薬による薬物療法は約半数、認知行動療法は5%未満)の実施が非常に不十分であり、専門的治療の標準化と早期の寛解を念頭に置いた治療ガイドラインの策定が重要と考えられた。【ガイドライン】初年度に、先行研究のレビューと多くの専門家のコンセンサスを基にして治療ガイドライン試案を策定したが、最終年度に、上記試案の改訂版と認知行動療法や薬物療法のマニュアルを中心にした『パニック障害のプライマリケアから専門的治療まで(仮題)』をまとめ、出版準備中である。
結論
本研究では、神経系の機能・構造異常、遺伝学的検討のどちらにおいても、世界で初めて明らかになる多くの知見が得られた。その一方で、わが国の臨床レベルや治療システムには問題が多く、特に認知行動療法の利用可能性が非常に低いことが明らかになった。そこで、本年度、先行研究、3年間の研究成果、主任・分担研究者間の複数回に及ぶディスカッションに基づき、プライマリケア用の治療ガイドラインと、専門的治療用のマニュアルを完成させた。
公開日・更新日
公開日
2007-04-24
更新日
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