関節リウマチの早期診断法の確立及び臨床経過の予測に関する研究

文献情報

文献番号
200631001A
報告書区分
総括
研究課題名
関節リウマチの早期診断法の確立及び臨床経過の予測に関する研究
課題番号
H16-免疫-一般-001
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
江口 勝美(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 三森 経世(京都大学 大学院医学研究科)
  • 住田 孝之(筑波大学 大学院人間総合科学研究科)
  • 岡本  尚(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
  • 土屋 尚之(筑波大学 大学院人間総合科学研究科)
  • 塩沢 俊一(神戸大学 医学部)
  • 中野 正明(新潟大学 医学部)
  • 上谷 雅孝(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 右田 清志(長崎医療センター 臨床研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
診断未確定関節炎(UA)の時期にRAに移行する症例を予測する「早期診断基準」の作成を試みる。さらに、関節破壊進行を予測する因子を抽出し、「早期治療開始基準」の作成を試みる。また、疾患遺伝子の解析や新規治療薬の開発も行う。
研究方法
早期関節炎クリニックを設立し、UA症例を登録し、前向き研究を行う。
結果と考察
「早期診断基準」を作成した。本基準は1)抗CCP抗体あるいはIgM-RF、2)MRI画像における対称性手・指滑膜炎、3)MRI画像における骨髄浮腫あるいは骨浸蝕像、この3項目中2項目が陽性であると、後にRAに移行した。本基準は感度83%、特異度85%と優れていた。
 UA症例を1年間経過追跡し、RAに移行した群とUAのまま継続あるいは非RAの診断がついた2群の初診時検査項目を比較した。両者を鑑別するのに、自己抗体、MMP-3、MRI画像所見が有用な項目として抽出された。初診時(1)抗CCP抗体あるいは IgM-RF、(2)MRI画像による骨髄浮腫、の2項目を満たすUAは全例1年後にRAに移行した。この結果、「早期診断基準」の妥当性を検証できた。MRI画像で検出される骨変化(骨髄浮腫と骨浸蝕像)は単純骨X線上の骨びらんに先行してみられた。RAに移行し、関節破壊に進行する症例は自己抗体やMMP-3陽性例で、HLA-DRB1*0405保有者であった。初診時UA症例で、上記(1)と(2)の2項目を満たす症例は関節破壊の出現・進行が高率に認められた。上記2項目は「関節破壊進行の予測因子」であるとともに、「RAの早期治療開始基準」と見做すことができる。RAの疾患遺伝子として(1)DR3遺伝子変異、(2)アンギオポエチン1遺伝子変異、(3)Dblプロトオンコジーン遺伝子変異を見出した。この疾患遺伝子の機能をmRNA・蛋白発現、蛋白機能、変異の病態への寄与について明らかにした。新規治療薬c-Fos/AP-1阻害薬は臨床的にも副作用が少なく、生物学的製剤に替わる次世代の薬剤で、RAの寛解・治癒導入薬として期待される。
結論
「RAの早期診断基準」を作成した。また、UAからRAに移行する症例で関節破壊進行の予測因子を明らかにし、これを「RAの早期治療開始基準」として提唱した。RAの疾患遺伝子を解明し、c-Fos/AP-1阻害薬を開発した。

公開日・更新日

公開日
2007-07-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200631001B
報告書区分
総合
研究課題名
関節リウマチの早期診断法の確立及び臨床経過の予測に関する研究
課題番号
H16-免疫-一般-001
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
江口 勝美(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 三森 経世(京都大学 大学院医学研究科)
  • 住田 孝之(筑波大学 大学院人間総合科学研究科)
  • 岡本  尚(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
  • 土屋 尚之(筑波大学 大学院人間総合科学研究科)
  • 塩沢 俊一(神戸大学 医学部)
  • 中野 正明(新潟大学 医学部)
  • 上谷 雅孝(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 右田 清志(長崎医療センター 臨床研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「RAの早期診断基準」と「早期治療開始基準」の作成を試みる。また、生物学的製剤に替わる次世代の薬物を開発する。
研究方法
早期関節炎クリニックを開設する。診断未確定関節炎(UA)症例を登録し、前向きに臨床経過を追跡する。Computer-assisted drug design(CADD)により、c-Fos/AP-1阻害剤を分子設計し、新規薬剤を開発する。
結果と考察
「RAの早期診断基準」を作成した。1)抗CCP抗体あるいはIgM-RF、2)MRI画像による対称性手・指滑膜炎、3)MRI画像による骨髄浮腫あるいは骨浸蝕像、この3項目中2項目以上陽性者をRAに移行する症例と診断した。その感度は83%、特異度は85%と優れていた。今回、UA症例を前向きに臨床経過を追跡した。1年後にRAと確定診断された群とUAのままあるいはRA以外の診断がついた群の2群に分類した。初診時、(1)抗CCP抗体あるいはIgM-RF、(2)MRI画像による骨髄浮腫、この2項目が陽性である症例は全例が1年後にRAに移行した。以上の結果から、前年度提唱した「RAの早期診断基準」の妥当性を検証することができた。
関節破壊の進行を単純骨X線のΔSharp Genantスコアで評価した。MRI画像で検出される骨変化(骨髄浮腫と骨浸蝕像)は単純骨X線所見(骨びらん)に先行して検出された。UAからRAに移行し、関節破壊に進行する症例は初診時、自己抗体陽性、MMP-3高値、MRIで骨髄浮腫を示した。初診時上記(1)と(2)両者陽性UA症例は、RAに移行するとともに関節破壊が進展した。上記診断基準は、関節破壊進行を予測する基準であるとともに「RAの早期治療開始基準」と見做すことができる。
新規治療薬c-Fos/AP-1阻害薬は、マウスCIAを発症初期、著明に抑制した。本薬はヒトでの第1相臨床試験で副作用も少なく、次世代の寛解・治癒を導入する薬剤と期待される。
結論
UAからRAに移行するのを予測する「早期診断基準」を作成し、その妥当性を検証した。さらに、UAからRAに移行する症例で、「関節破壊進行を予測する基準」も作成することができ、これは「早期治療開始基準」と見做すことができる。新規治療薬c-Fos/AP-1阻害薬を開発した。

公開日・更新日

公開日
2007-07-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200631001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 RAの疾患感受性遺伝子を解析した。免疫系遺伝子多型とRAの重症度との関連を明らかにした。RAの疾患遺伝子として1)DR3遺伝子変異、2)アンギオポエチン1遺伝子変異、3)Dblプロトオンコジーン遺伝子変異を見出した。これらの疾患遺伝子の機能をmRNA・蛋白発現、蛋白機能、変異の病態への寄与について明らかにした。新規治療薬c-Fos/AP-1阻害薬がマウス2型コラーゲン誘発関節炎初期の炎症を著明に抑制した。本剤は臨床的にも副作用が少なく、RAの寛解・治癒導入薬として期待される。
臨床的観点からの成果
 日本で最初に「早期関節炎クリニック」を開設した。抗CCP抗体やMRI画像所見がRAの早期診断や関節破壊の予測に有用であることを明らかにした。血清学的所見やMRI画像所見から「RAの早期診断基準」と「RAの早期治療開始基準」を世界に先駆けて作成した。これらの基準は感度や特異度において優れた基準であることを検証した。MRI装置に替わって、コンパクトMRIを開発し、その有用性を明らかにした。
ガイドライン等の開発
 「RAの早期診断基準」を作成した。1)抗CCP抗体あるいはIgM-RF、2)MRI画像による対称性手・指滑膜炎、3)MRI画像による骨髄浮腫あるいは骨浸蝕像、この3項目中2項目以上陽性者をUAからRAに移行する症例と診断した。「RAの早期治療開始基準」を作成した。1)抗CCP抗体あるいはIgM-RF、2)MRI画像による骨髄浮腫あるいはMMP-3高値、この2項目とも陽性者はUAからRAに移行し、関節破壊が出現あるいは進行する症例であり、抗リウマチ薬で積極的に治療を開始することが推奨される。
その他行政的観点からの成果
 抗CCP抗体はRAの早期診断や関節破壊進行の予測に有用であることを明らかにした。私たちのこれらの結果は、抗CCP抗体の製造承認や保険収載の許可の際のエビデンスとして活用された。依って平成19年4月1日より抗CCP抗体は保険収載され、全国広く用いられるようになった。
その他のインパクト
 第15回国際リウマチシンポジウムを2006年4月23日?26日、長崎市で開催した。5つのシンポジウムの中に、Rheumatoid arthritis: early diagnosis and predicton of joint destructionというシンポジウムを設けた。私どもを含め6人の世界的研究者に発表していただき、早期診断と関節破壊進行の予測の意義について討論した。

発表件数

原著論文(和文)
81件
原著論文(英文等)
148件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
51件
学会発表(国際学会等)
197件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tamai M, Kawakami A, Eguchi K, et al.
Early prediction of rheumatoid arthritis by serological variables and magnetic resonance imaging of the wrists and finger joints: results from prospective clinical examination
Ann Rheum Dis , 65 (1) , 134-135  (2006)
原著論文2
Tamai M, Kawakami A, Eguchi K, et al.
The presence of anti-cyclic citrullinated peptide antibody is associated with magnetic resonance imaging detection of bone marrow oedema in early stage rheumatoid arthritis
Ann Rheum Dis , 65 (1) , 133-134  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-