B型及びC型肝炎ウイルスの感染者に対する治療の標準化に関する臨床的研究

文献情報

文献番号
200630004A
報告書区分
総括
研究課題名
B型及びC型肝炎ウイルスの感染者に対する治療の標準化に関する臨床的研究
課題番号
H16-肝炎-一般-017
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
熊田 博光(国家公務員共済組合連合会虎の門病院 肝臓センター)
研究分担者(所属機関)
  • 沖田極(山口大学医学部先端分子応用医科学講座消化器病態内科学)
  • 清澤研道(信州大学医学部内科2)
  • 山田剛太郎(川崎医科大学附属川崎病院)
  • 岡上武(京都府立医科大学大学院医学研究科消化器病態制御学)
  • 恩地森一(愛媛大学医学部第三内科)
  • 泉並木(武蔵野赤十字病院消化器科)
  • 茶山一彰(広島大学大学院医薬学総合研究科分子病態制御内科)
  • 竹原徹郎(大阪大学大学院医学系研究科消化器内科)
  • 八橋弘(国立病院機構長崎医療センター臨床研究センター治療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
43,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成17年度に作成したB型、C型慢性肝炎に対する治療の標準化ガイドラインを補足、修正することを目的とし治療成績の実態調査を施行した。
研究方法
B型慢性肝炎に対してはLamivudineのBreakthrough hepatitisに対するAdefovir併用とEntecavir単独の長期予後およびde novo B型の急性肝炎の臨床学的特徴・発症後の予後を検討した。C型慢性肝炎に対しては開始時ALT正常値例におけるPEG-IFN (peginterferon)+Ribavirin併用療法の治療成績、Genotype 2の症例でのIFN単独療法とRibavirin併用療法の治療成績を検討した。また、B型、C型肝硬変症の治療効果についても調査を行った。
結果と考察
B型慢性肝炎の若年症例でHBe抗原陽性例では、自己の免疫力によってHBe抗原の陰性化や肝炎の収束が期待されるためIFN長期間歇を基本とした。中高年では、Entecavirの長期投与を基本治療とした。現在、Lamivudineを投与中の症例に対する核酸アナログ製剤の治療のガイドラインを新たに提示した。C型慢性肝炎では高ウイルス量症例に対するIFN療法はPEG-IFN+Ribavirinの併用療法が基本となり、IFN単独長期投与、IFNα2a 48週間投与が個々の症例の状況によって選択される。初回投与の低ウイルス量症例ではIFN単独投与が基本とした。C型慢性肝炎に対しては、安全性と効果を考慮して、治癒目的の治療か、進展予防(発癌予防)の長期療法を選択すべきと考えられた。またGenotype 1の高ウイルス量以外の代償性肝硬変症例ではIFN-βの投与が治療の原則とした。
個別研究においてはB型慢性肝炎に対する治療法(Lamivudine等)の長期的な治療成績の解析と基礎的研究が進められている。またC型慢性肝炎治療では現在治療の主体であるPEG-IFN+Ribavirinの併用療法の治療効果を予測する因子(ウイルス学的、免疫学的)や投与法の工夫などの検討が臨床的、基礎的に施行されている。
結論
治療効果を常に検討しながら毎年改訂し最適な治療法を確立したこのガイドラインを基にB型、C型肝炎の治療が進められており医療格差の是正、医療経済への効率的還元がなされることとなった。

公開日・更新日

公開日
2007-05-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-12-17
更新日
-

文献情報

文献番号
200630004B
報告書区分
総合
研究課題名
B型及びC型肝炎ウイルスの感染者に対する治療の標準化に関する臨床的研究
課題番号
H16-肝炎-一般-017
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
熊田 博光(国家公務員共済組合連合会虎の門病院 肝臓センター)
研究分担者(所属機関)
  • 沖田極(山口大学医学部先端分子応用医科学講座消化器病態内科学)
  • 清澤研道(信州大学医学部内科2)
  • 山田剛太郎(川崎医科大学附属川崎病院)
  • 岡上武(京都府立医科大学大学院医学研究科消化器病態制御学)
  • 恩地森一(愛媛大学医学部第三内科)
  • 泉並木(武蔵野赤十字病院消化器科)
  • 茶山一彰(広島大学大学院医薬学総合研究科分子制御内科)
  • 竹原徹郎(大阪大学大学院医学系研究科消化器内科)
  • 八橋弘(国立病院機構長崎医療センター臨床研究センター治療研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
B型及びC型肝炎ウイルスの感染者に対する治療の標準化に関する臨床的研究班として平成16年度から平成18年年度の3年間に亘り治療法のガイドラインを確立し一般に普及し治療の標準化を目指した。
研究方法
3年間にわたって班員の施設を対象に抗ウイルス療法(核酸アナログ製剤、インターフェロン(IFN)療法(Ribavirin併用を含む))及び肝庇護療法(SNMC, UDCAなど)の実態調査を施行した。この調査をもとにB型、C型慢性肝炎症例に対する治療のガイドラインを作成した。期間中に新たに使用可能となった持続型IFN製剤(peginterfron:Peg-IFN)とRibavirinの併用療法やAdefovir dipivoxil, Entecavirなどの薬剤も年ごとに随時検討した。
結果と考察
B型慢性肝炎ガイドラインでは、若年症例のHBe抗原陽性例では自己の免疫力によってHBe抗原の陰性化や肝炎の収束が期待されるためIFN長期間歇を基本とした。中高年では、Entecavirの長期投与を基本治療とした。平成18年度はEntecavirの投薬可能となり現在、Lamivudineを投与中の症例に対する核酸アナログ製剤の治療のガイドラインを新たに提示した。
C型慢性肝炎ガイドラインでは、高ウイルス量症例に対するIFN療法はPeg-IFNとRibavirinの併用療法が基本となり、IFN単独長期投与、IFNα2a 48週間投与が個々の症例の状況によって選択されるとした。初回投与の低ウイルス量症例ではIFN単独投与が基本であるとした。また、C型慢性肝炎の予後の改善のためALT値正常の慢性肝炎症例に対する治療のガイドラインも作成した。一方、IFN無効例、非適応例に対する治療についても実態調査を施行し、IFN無効例、非適応例に対するALT値を指標にした治療法の標準化のガイドラインも提示した。個別研究においてはC型慢性肝炎では、IFN(特にPeg-IFN)とRibavirin併用療法の臨床的、基礎的研究が施行され、難治性のC型肝炎に対してより効果的な治療法が検討されている。またB型慢性肝炎に対してはIFN療法や核酸アナログ製剤の治療成績と基礎的研究が行なわれた。
結論
平成16年度から3年間に亘りB型及びC型肝炎ウイルスの感染者に対する治療の標準化に関する臨床的研究班として治療法のガイドラインを作成し、節目・節目外検診において新たなHBV, HCV感染者に対してもこのガイドラインに基づいて施行されよう年度ごとに最新最適治療法のガイドライン作成してきた。

公開日・更新日

公開日
2007-05-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-02-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200630004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
平成16年度から肝炎治療のガイドラインの提示により全国の医療機関は体系化された治療法を一律に施行でき、患者も平等に効率的治療を受けられ、施設間格差や地域格差が是正され、また合理化された治療体系により、IFN製剤の過剰投与を回避でき、医療費の軽減・節減につながり得た。さらに、節目検診によって新規感染者の拾い上により全国の専門病院を受診した際の治療法の指針とした。肝臓学会ホームページ・ガイドラインの配布により全国の肝炎治療の礎となった。
臨床的観点からの成果
B型、C型慢性肝炎の治療のガイドラインの作成と学会等の関連機関を通じての普及活動によって、全国的に医療格差のない治療を行なうことが可能となる。ガイドラインに基づいた治療が行なわれることによって全国的に慢性肝炎患者の予後が改善され、最終的には肝臓関連死の低下が可能となり、将来の医療費抑制に繋がる。医療格差の是正と適切な治療の施行によって、将来的には医療経済への効率的還元がなされるものと考えられる。
ガイドライン等の開発
東京都ウイルス肝炎対策有識者会議東京都ウイルス肝炎対策協議会平成18年5月30日・平成19年2月2日
その他行政的観点からの成果
東京都ウイルス肝炎対策有識者会議東京都ウイルス肝炎対策協議会にてスクリーニングとしての肝炎ウイルス検査の方向性について・適切な治療の推進について・患者支援の方向性について・
普及啓発の重点化についての意見書を提出した。平成18年5月19日
その他のインパクト
熊田博光:厚生労働科学研究費肝炎等克服緊急対策研究公開報告会東京2006年3月11日B肝炎治療の現状と将来の展望・治療の標準化熊田博光:JMタブロイド2006/12/22 WiLL2006/9/1日経CME2006/6朝日新聞2006/5/7日医ニュース2006/2/5 日本医師会雑誌広告2006/9日本医師会雑誌日経CME2006/2

発表件数

原著論文(和文)
6件
ラミブジンによる発癌予防とその理論的背景 アークメディ゛ア 「肝胆膵」52 377-383 2006 松本晶博
原著論文(英文等)
53件
Okanoue T.HepatologyVol.44;326-334:2006
その他論文(和文)
8件
芥田憲夫、肝臓第47巻第9号(2006)
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
30件
第42回日本肝臓学会総会 C型慢性肝炎に対するIFN在宅自己注射-夜間投与の有用性熊田博光 第42回日本肝臓学会総会 Lamivudine耐性ウイルスに対するEntecavir治療 鈴木文孝
学会発表(国際学会等)
2件
International Symposium on HBV.Fumitaka Suzuki 2006年5月27日京都
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
東京都ウイルス肝炎対策有識者会議東京都ウイルス肝炎対策協議会・日本肝臓学会ホームページ
その他成果(普及・啓発活動)
47件
荒瀬康司東京肝臓友の会2006/12/20池田健次朝日新聞20067/20

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Suzuki F, Akuta N, Suzuki Y, et ai.
Clinical and Virological features of non-breakthrough and severe exacerbation due to Lamivudine-Resistant hepatitis B virus mutants
Jouranal of Medical Virology , 78 , 341-352  (2006)
原著論文2
Arase Y, Ikeda K, Suzuki F, et al.
Long-Term Outcome after Hepatitis B surface antigen seroclearance in Patients With Chronic Hepatitis B
The American Journal of Medicine , 119 , 9-16  (2006)
原著論文3
Akuta N, Suzuki F, Sezaki H,et al.
Predictive factors of virological non-response to interferon ribavirin combination therapy for patients infected with hepatitis C virus of genotype1b and high viral load
Journal of Medical Virology , 78 , 83-90  (2006)
原著論文4
Kobayashi M, Akuta N, Suzuki F,et al.
Virological outcomes in patients infected chronically with hapatitis B virus Genotype A in comparison with Genotype B and C
Journal of Medical Virology , 78 , 60-67  (2006)
原著論文5
Suzuki F, Kumada H, Nakamura H
Changes in viral loads of Lamivudine-Resisant Mutants and evolution of HBV sequences during adefovir dipivoxil therapy
Jouranal of Medical Virology , 78 , 1025-1034  (2006)
原著論文6
Ikeda K, Arase Y, Saitoh S,et al.
Anticarcinogenic impact of interferon therapy in patients with chronic hepatitis C:A large- scale long-term study in a single center
Intervirology , 49 , 82-90  (2006)
原著論文7
Kobayashi M, Suzuki F, Akuta N,et al.
Response to long-term lamivudine treatment in patients infected with hepatitis B virus genotypes A,B,and C
Jouranal of Medical Virology , 78 , 1276-1283  (2006)
原著論文8
Uka K, Suzuki F, Akuta N, et al.
Efficacy of Interferon monotherapy in young adult patients with chronic hepatitis C virus infection
Journal of Gastroenterology , 41 , 470-475  (2006)
原著論文9
Koyama R, Arase Y, Ikeda K,et al.
Efficacy of Interferon Therapy in Elderly Patients with Chronic Hepatitis C
Intervirology , 49 , 121-126  (2006)
原著論文10
Ikeda K, Arase Y, Kobayashi M, et al.
A long-term glycyrrhizin injection therapy reduces hepatocellular carcinogenesis rate in patients with interferon-resistant active chronic hepatitis C:A cohort study of 1249 patient
Digestive Diseases and Sciences , 51 , 603-609  (2006)
原著論文11
Sezaki H, Suzuki F, Hosaka T,et al.
Long-term follow-up of HBeAg-positive young adult japanese patients treated with corticosteroid withdrawal therapy for chronic hepatitis B
Intervirology , 49 , 339-345  (2006)
原著論文12
Yatuji H, Noguchi C, Hiraga N,et al.
Emergence of a Novel Lamivudine-Resisitant Fepatitis B Virus Variant with a substitution Outside the YMDD Motif
Antimicrobial Agents and Chemotherapy , 50 , 3867-3874  (2006)
原著論文13
Ikeda K, Arase Y, Saitoh S, et al.
Long-term outcome of HBV carriers with negative Hbe antigen and normal aminotransferase
The American Journal of Medicine , 119 , 977-985  (2006)
原著論文14
Kobayashi M, Ikeda K, Hosaka T,et al.
Natural history of compensated cirrhosis in the Child-Pugh class a compared between 490 patients with hepatitis C and 167with B virus infections
Jouranal of Medical Virology , 78 , 459-465  (2006)
原著論文15
Kobayashi M, Ikeda K, Hosaka T,et al.
Dysplastic Nodules Frequently Develop Into Hepatocellular Carsinoma in Patients with Chronic Viral Hepatitis and Cirrhosis
Cancer , 106 , 636-640  (2006)
原著論文16
Ikeda K, Arase Y, Saitoh S,et al.
Prediction model of hepatocarcinogenesis for patients with hepatitis C virus-related cirrhosis. Validation with internal and external cohorts
Journal of Hepatology , 44 , 1089-1097  (2006)
原著論文17
Tadokoro K, Kobayashi M, Yamaguchi T,et al.
Classification of hepatitis B virus genotypes by the PCR-Invader method with genotype- specific probes
Jouranal of Virological Methods , 138 , 30-39  (2006)
原著論文18
Akuta N,Suzuki F,kawamura Y,et al.
Predictive factors of early and sustained responses to peginterferon plus ribavirin combination therapy in japanese
Journal of Hepatology , 46 , 403-410  (2006)
原著論文19
Ogata K, Ide T, Kumashiro R,et al.
Timing of interferon therapy and sources of infection in patients with acute hepatitisC
Hepatology Research , 34 , 35-40  (2006)
原著論文20
Misawa N,Matsumoto A,Tanaka E,et al.
Patients Without Loss of Hepatitis B Virus DNA After Hepatitis B e Antigen Seroconversion Have Different Virological Characteristics.
Jouranal of Medical Virology , 78 , 68-73  (2006)

公開日・更新日

公開日
2016-07-11
更新日
-