インフルエンザをはじめとした、各種の予防接種の政策評価に関する分析疫学研究

文献情報

文献番号
200628026A
報告書区分
総括
研究課題名
インフルエンザをはじめとした、各種の予防接種の政策評価に関する分析疫学研究
課題番号
H17-新興-一般-026
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
廣田 良夫(大阪市立大学大学院医学研究科公衆衛生学)
研究分担者(所属機関)
  • TIMOTHY M UYEKI(米国疾病管理センター(CDC)インフルエンザ局疫学部)
  • 森 満(札幌医科大学医学部公衆衛生学講座)
  • 鷲尾 昌一(聖マリア学院大学)
  • 山口 直人(東京女子医科大学衛生学公衆衛生学第2講座)
  • 小島原 典子(東京女子医科大学衛生学公衆衛生学第2講座)
  • 中島 一敏(国立感染症研究所感染症情報センター)
  • 小笹 晃太郎(京都府立医科大学大学院医学研究科地域保健医療疫学)
  • 藤枝 恵(大阪市立大学大学院医学研究科公衆衛生学)
  • 原 めぐみ(佐賀大学医学部社会医学講座予防医学分野)
  • 加藤 達夫(国立成育医療センター小児科)
  • 鈴木 幹三(名古屋市港保健所)
  • 林 嘉光(名古屋厚生院第1診療科)
  • 伊藤 雄平(久留米大学医療センター小児科)
  • 加瀬 哲男(大阪府立公衆衛生研究所)
  • 入江 伸(医療法人相生会九州臨床薬理クリニック)
  • 秦 靖枝(牛久市民福祉の会)
  • 大久保 一郎(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
  • 井手 三郎(聖マリア学院大学)
  • 吉田 英樹(大阪市保健所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
33,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
分析疫学の専門家を中心に、臨床家、医療経済学者、微生物学者、市民団体代表、行政担当者などからなる研究班を組織し、インフルエンザワクチンの有効性、免疫原性、費用対効果、社会認容性などについて調査研究する。また、それらの手法を応用して、他のワクチンについても検討する。
研究方法
①分析疫学:異なる対象集団でワクチンの有効性、免疫原性、医療費低減効果を検討する。
②応用調査:文献調査や情報整理を行い、参考資料や啓発資料の形にまとめる。
③適応評価:地域住民、施設入所者、乳幼児の保護者などを対象に、接種制度の適確性、認容性、などを調査する。
④顧問クループ:専門知識を提供するため、呼吸器内科、小児科、ウイルス学、老人医療、公衆衛生の専門家からなる顧問グループを組織する。
結果と考察
主要な結果は以下の通りである。
①異なる調査で有効性を支持する結果を得た(乳幼児OR=0.6;在宅要介護高齢者OR=0.52;長期療養施設入所高齢者OR=0.63)。一方、標本数や結果指標によっては、有効性を検出できない例もあった。
②乳幼児においてantibody efficacyを算出した(OR=0.42)。
③ワクチンの費用便益性を認めた(1人当たり平均超過医療費:接種者3,056円、非接種者7,487円)。
④0歳児では抗体応答が低い。1歳児の抗体応答は0歳児より高いが、接種量が等しい2歳児・3歳児より低かった。
⑤低蛋白、低ヘモグロビン状態の高齢者では、アミノ酸食品(シスチン/テアニン)摂取で接種後抗体の上昇効果が顕著であった。
⑥米国予防接種諮問委員会勧告を翻訳し、(財)日本公衆衛生協会から出版した。
⑦乳幼児において、「かかりつけ医の接種勧奨」は接種率を上げ、「母親がパート勤務(vs.専業主婦)」は接種率を低下と関連した。
⑧高齢者では、肺炎球菌ワクチン接種1ヵ月後に十分な抗体上昇を認めたが、type3,4の莢膜型に対する反応は低かった。
結論
①特性が異なる集団を対象に、異なる手法によるワクチン有効性研究を蓄積していく必要がある。
②高齢者で実際の医療費削減額がワクチン接種費用を凌ぎ、費用便益性を示した。
③若年小児における抗体応答の差は接種量のみでは説明できない。
④肺炎球菌ワクチン有効性研究においては、莢膜型を考慮する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2007-04-20
更新日
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