日本人の食事摂取基準(栄養所要量)の策定に関する研究

文献情報

文献番号
200624012A
報告書区分
総括
研究課題名
日本人の食事摂取基準(栄養所要量)の策定に関する研究
課題番号
H16-循環器等(生習)-一般-025
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
柴田 克己(滋賀県立大学人間文化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐々木 敏(国立健康・栄養研究所)
  • 岡野 登志夫(神戸薬科大学薬学部)
  • 玉井 浩(大阪医科大学)
  • 田中 清(京都女子大学家政学部)
  • 森口 覚(山口女子大学生活科学部)
  • 寺尾 純二(徳島大学医学部)
  • 梅垣 敬三(国立健康・栄養研究所)
  • 早川 享志(岐阜大学応用生物科学部)
  • 渡邊 敏明(兵庫県立大学環境人間学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業【がん、心筋梗塞、脳卒中を除く】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
43,397,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
厚生労働省策定「日本人の食事摂取基準(2005年版)」作業において懸案事項となった課題,特に社会的に関心の高いビタミンを中心とした課題に対して,実験的手段でエビデンスを得ることにより,2010年度の改定作業につなげること,国民への「日本人の食事摂取基準(2005年版)」およびビタミンに対する正確な知識を普及させること,である.
研究方法
研究室内での化学実験(血液,尿,食品中の栄養素の分析など),栄養疫学調査,文献調査という研究手法を駆使する.研究費は主任研究者が一括計上する.
結果と考察
1.ビオチンは,日本食品標準成分表に掲載されていない.H16~18年度の総計で327品目を分析し,これらの値を利用してビオチン摂取量を算出できる新しい食事調査法を確立した.
2.哺乳量の調査および母乳中のビタミンの分析を行った.さらに,文献収集を行い,乳児および授乳婦の食事摂取基準策定のための基礎資料を収集した.
3.1日尿に含まれる水溶性ビタミン量を測定し,食事調査結果と比較することにより,尿中水溶性ビタミン量を指標とした水溶性ビタミン栄養状態の判定の妥当性について検討した.
4.生活習慣病の一次予防につながる成果として,ビタミンの要求量を高める要因を明らかにした.
5.カロテノイド摂取がヒトの血漿リポタンパクであるLDLとHDLの酸化安定性に及ぼす影響をin vitroおよびex vivo実験で明らかにした.
6.食品中のビタミンの生体利用率を明らかにした.
7.高齢者におけるビタミンD必要量は,現行の食事摂取基準量より高いことを明らかにした.
結論
2010年に予定されている「日本人の食事摂取基準(2010年版)」の策定に必要なデータを得ることができた.特に,社会的に関心の高いビタミンの必要量の精度をあげるためのデータを収集した.栄養素の適正摂取を示す生体指標として,尿中に排泄されるビタミンおよびそれらの代謝産物に注目して,データを集めた結果,尿を指標とした生活習慣病の一次予防のスクリーニング方法に関して,成果を得た.食品中のビタミン量は資源的な意味しかないので,ヒトにとって必要な生体利用率のデータを集めている.これらのことにより,食品科学的な見地と生命科学的な見地との乖離を埋めることが出来る.「食事計画のために必要なビタミン摂取量」と「評価に必要な生体指標の確立」により個々人の最適なビタミン量を提示することで,生涯高度なQOLを達成することができる.

公開日・更新日

公開日
2007-04-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-12-14
更新日
-

文献情報

文献番号
200624012B
報告書区分
総合
研究課題名
日本人の食事摂取基準(栄養所要量)の策定に関する研究
課題番号
H16-循環器等(生習)-一般-025
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
柴田 克己(滋賀県立大学人間文化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐々木 敏(国立健康・栄養研究所)
  • 岡野 登志夫(神戸薬科大学薬学部)
  • 玉井 浩(大阪医科大学)
  • 田中清(京都女子大学家政学部)
  • 森口 覚(山口県立大学生活科学部)
  • 寺尾 純二(徳島大学医学部)
  • 梅垣 敬三(国立健康・栄養研究所)
  • 早川 享志(岐阜大学応用生物科学部)
  • 渡邊 敏明(兵庫県立大学環境人間学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業【がん、心筋梗塞、脳卒中を除く】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
目的は,①厚生労働省策定「日本人の食事摂取基準(2005年版)」作業において懸案事項となった課題,特に社会的に関心の高いビタミンを中心とした課題に対して,実験的手段でエビデンスを得ることにより,2010年度の改定作業につなげること,②国民への「日本人の食事摂取基準(2005年版)」およびビタミンに対する正確な知識を普及させること,である.
研究方法
研究室内での化学実験(血液,尿,食品中の栄養素の分析など),栄養疫学調査,文献調査という研究手法を駆使する.研究費は主任研究者が一括計上する.
結果と考察
1. ビタミンの定量方法の開発(高精度なLC/MS/MS測定法など)を行い,精度の高い,特異性の高い方法を開発した.
2. 乳児のビタミンの栄養素量の精度を飛躍的に上げることができた.
3. 介入試験から1日尿中に排泄される推奨すべき水溶性ビタミンの基準値を提言した.この値を利用して,尿中水溶性ビタミン量を指標とした水溶性ビタミン栄養状態の判定の妥当性について検討し,個々人の栄養指導の方法について検討を試みた.
4. ビオチンについては,日本食品標準成分表に掲載されていないために,目安量が策定されても十分に活用されていない.H16?18年度の総計で327品目を分析し,これらの値を利用してビオチン摂取量を算出できる新しい食事調査法を確立した.
5. 抗酸化能が低下していると考えられる高齢者などの食事摂取基準策定に際しては,酸化ストレスという視点で葉酸の必要量を考慮しなければならないことを明らかにした.また,高齢者におけるビタミンDとKの必要量は,現行の食事摂取基準量より高いことを明らかにした.
7. 水溶性ビタミンの上限量策定のための基礎データとして,ラットを使用して毒性実験を行った.その結果,ビオチンは上限量の算定を急務とすることを明らかにした.
8. 3年間で普及活動を9回実施した.
結論
日本人の食事摂取基準(2005年版)で課題となった項目(まず,社会的関心事の高いビタミンに焦点を当てた)を解決でき,2010年版に必要な資料を作成できた.

公開日・更新日

公開日
2007-04-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-12-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200624012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1. ビタミンの定量方法の開発(高精度なLC/MS/MS測定方法など)を行い,精度の高い,特異性の高い方法を開発した.2. 尿を用いる新しい水溶性ビタミンの栄養指標を確立した.3. ビオチンの新しい欠乏指標を確立した.4. 食品中に存在するシュードB12を区別する方法として,ビタミンB12依存性大腸菌バイオオートグラフィー法を確立した.5. トリプトファン-ニコチンアミド転換経路の制御機構を明らかにした.
臨床的観点からの成果
1. 高齢者においてはおそらく,ビタミンDは現行の5μgより,はるかに多い量が必要とされる.2. 大腿骨近位骨折患者では,ビタミンD・K欠乏症の頻度が高く,骨折の危険因子としての意義が示唆される.
ガイドライン等の開発
健常者の介入試験のデータを基に,健康を維持するために望ましい水溶性ビタミンの1日尿中排泄量を提案した.
その他行政的観点からの成果
日本人の食事摂取基準(2005年版)で課題となった項目(まず、社会的関心事の高いビタミンに焦点を当てた)を解決でき、2010年版に必要な資料を作成できた。
その他のインパクト
3年間で,計9回の公開シンポジウムを開催した.平成16年度:2回開催(1. 10月16日滋賀県立大学,2. 12月5日 滋賀県立大学).平成17年度:3回開催(1. 9月22日 京都女子大学,2. 12月17日 滋賀県立大学,3. 2月18日 山口県立大学).平成18年度:4回開催(1. 10月7日 岐阜大学,2. 12月16日 兵庫県姫路市キャスパーホール,3.12月17日 滋賀県立大学,4. 1月30日 滋賀県大津市びわ湖ホール)。総計で約1500名の参加者があった.

発表件数

原著論文(和文)
25件
原著論文(英文等)
29件
その他論文(和文)
27件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
36件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
9件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
渡邊敏明,谷口歩美,福井徹,他
日本人女性の母乳中ビオチン,パントテン酸およびナイアシンの含量
ビタミン , 78 (8) , 399-407  (2004)
原著論文2
Fukuwatari T, Ohta M, Sugimoto E, et al.
Effects of dietary di(2-ethylhexyl)phthalate, a putative endocrine disrupter, on enzyme activities involved in the metabolism of tryptophan to niacin in rats.
Biochim. Biophys. Acta , 1672 , 67-75  (2004)
原著論文3
Fukuwatari T, Honda N, Sasaki R, et al.
Establishment of niacin-deficient mice.
J. Creative Approach for Health , 3 (1) , 19-25  (2004)
原著論文4
Kimura N, Fukuwatari T, Sasaki R, et al.
The necessity of niacin in rats fed on a high protein diet.
Biosci. Biotechnol. Biochem. , 69 (2) , 273-279  (2004)
原著論文5
鈴木久美子,佐々木晶子,新澤佳世,他
離乳前乳児の哺乳量に関する研究
栄養学雑誌 , 62 (6) , 369-372  (2004)
原著論文6
Yamada H, Waki M, Yamada K, et al.
Lymphocyte and plasma vitamin C levels in type 2 diabetic patients with and without diabetes complications.
Diabetes Care , 27 , 2491-2492  (2004)
原著論文7
伊佐保香,垣内明子,早川享志,他
日本人の母乳中ビタミンB6含量
ビタミン , 78 (9) , 437-440  (2004)
原著論文8
Suhara Y, Kamao M, Tsugawa N, et al.
Method for the determination of vitamin K homologues in human plasma using high-performance liquid chromatography-tandem mass spectrometry.
Anal. Chem. , 77 , 757-763  (2005)
原著論文9
Kamao M, Suhara Y, Tsugawa N, et al.
Determination of plasma vitamin K by high-performance liquid chromatography with fluorescense detection using vitamin K analogs as internal standards.
J. Chromatogr. B , 816 , 41-48  (2005)
原著論文10
谷岡由梨,宮本恵美,渡辺文雄
Euglena gracilis Zの生育に伴うビタミンB12依存性メチオニン合成酵素活性の変動
高知女子大学紀要 , 54 , 17-21  (2005)
原著論文11
和田英子,福渡努,木村尚子,他
トリプトファン-ナイアシン代謝に関与する酵素活性から推定したラット乳仔のトリプトファン-ナイアシン転換率
ビタミン , 79 (8) , 391-393  (2005)
原著論文12
Shibata K, Fukuwatari T, Ohta M, et al.
Values of water-soluble vitamins in blood and urine of Japanese young men and women consuming a semi-purified diet based on the Japanese Dietary Reference Intakes.
J. Nutr. Sci. Vitaminol. , 51 , 319-328  (2005)
原著論文13
Shibata K, Takahashi C, Fukuwatari T, et al.
Effects of excess pantothenic acid administration on the other water-soluble vitamin metabolisms in rats.
J. Nutr. Sci. Vitaminol. , 51 , 385-391  (2005)
原著論文14
宮本恵美,橘高(桂)博美,足達理子,他
たけのこのビタミンB12の分析
ビタミン , 79 (7) , 329-332  (2005)
原著論文15
渡邊敏明,谷口歩美,庄子佳文子,他
日本人の母乳中の水溶性ビタミン含量についての検討
ビタミン , 79 (12) , 573-581  (2005)
原著論文16
Adachi S, Miyamoto E, Watanabe F, et al.
Purification and Characterization of a Corrinoid Compound from a Japanese Salted and Fermented Salmon Kidney “Mefun”.
Journal of Liquid Chromatography & Related Technologies , 28 , 2561-2569  (2005)
原著論文17
和田英子,福渡努,佐々木隆造,他
高齢者の血液中NADおよびNADP含量
ビタミン , 80 (3) , 125-127  (2006)
原著論文18
Kimura N, Fukuwatari T, Sasaki R, et al.
Comparison of metabolic fates of nicotinamide, NAD+ and NADH administered orally and intraperitoneally; Characterization of oral NADH.
J. Nutr. Sci. Vitaminol. , 52 , 142-148  (2006)
原著論文19
Endoh K, Murakami M, Araki R, et al.
Low folate status increases chromosomal damage by X-ray irradiation.
Int. J. Radiat. Biol. , 82 (4) , 223-230  (2006)
原著論文20
Watanabe F, Miyamoto E, Fujita T, et al.
Characterization of a corrinoid compound in the edible (blue-green) alga, Suizenji-nori.
Biosci. Biotechnol. Biochem. , 70 (12) , 3066-3068  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-10-06
更新日
-