冠動脈不安定粥腫の同定とその効果的破綻予防、治療法の開発に関する多施設共同研究

文献情報

文献番号
200624007A
報告書区分
総括
研究課題名
冠動脈不安定粥腫の同定とその効果的破綻予防、治療法の開発に関する多施設共同研究
課題番号
H16-循環器等(生習)-一般-020
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
山岸 正和(金沢大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 水野 杏一(日本医科大学附属千葉北総病院循環器内科)
  • 椎名  毅(筑波大学大学院システム情報工学研究科)
  • 細川 博昭(独立行政法人国立病院機構豊橋医療センター循環器内科)
  • 山田 直明(国立循環器病センター放射線診療部)
  • 小宮山伸之(埼玉医科大学循環器内科)
  • 浦澤 一史(特定医療法人カレスサッポロ時計台記念病院循環器センター)
  • 廣  高史(山口大学医学部附属病院第二内科学)
  • 高山 忠輝(日本大学医学部 内科学講座循環器内科部門)
  • 大塚 頼隆(国立循環器病センター内科心臓血管部門)
  • 角辻  暁(医療法人徳洲会野崎徳洲会病院心臓センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業【がん、心筋梗塞、脳卒中を除く】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
16,404,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
不安定狭心症、心筋梗塞などの急性冠症候群は、冠動脈に内在する動脈硬化粥腫の破綻を基本病態として発症する。この際、破綻する可能性の高い粥腫を未然に診断可能となれば臨床的にも大変意義深い。血管内超音波法は粥腫安定性の指標となる、粥腫線維性被膜厚、粥腫内部性状、粥腫弾性特性などが評価可能であることから、不安定粥腫診断法として注目されて来た。本共同研究では一定の基準に基づいて診断された粥腫を“前向き”に経過観察することにより、粥腫不安定化の要因を探索し、予防、治療法の立案に寄与しようとするものである。
研究方法
各施設における診断的冠動脈造影、冠動脈形成術施行に際して、冠動脈硬化病変部位を血管内超音波法で観察し、以下の基準に合致する冠動脈局所を暫定的に登録した。即ち
(1)血管造影法での狭窄率が50%未満の病変。
(2)血管内超音波像の指標に加えて、形態的特徴として、既存の粥腫破綻、血栓の局在、石灰化の局在などを明記した。また、倫理面の配慮においては、血管内超音波法による冠動脈評価は既に確立されたものであるが、本研究の遂行については、各施設での倫理委員会で審査された。更に、診断法に関する精度の向上などについては各個研究として遂行した。
結果と考察
平成19年度までに932例(女性172例、平均年齢67.2才)が各施設から登録された。登録病変の血管内超音波指標の平均値は、全血管面積14.9±5.5 mm2,粥腫面積9.1±3.7mm2粥腫面積63.2±11.2%,病変長7.2±3.1mm,病変容積55.5±33.2mm3平均粥腫面積9.3±3.1mm 拡大リモデリング27%, 偏心性病変64%, 石灰化41%であった。経過中78例で虚血性イベントの再発をみた。興味あることに、イベント再発部では粥腫容積が有意に大であるとの成績を得た。しかし、今回登録した病変以外の部位を基本とした急性冠症候群の発症も認め、発症予測にはより慎重であるべきことが示唆された。各個研究においては、診断精度の向上、治療効果の評価および非侵襲的診断法開発などにおいての所定の成果を得た。
結論
本年度は、過去2ヵ年に引き続き、各施設において血管内超音波法により観察され、所定の基準に合致する冠動脈局所を暫定的な不安定粥腫として“前向き”追跡を開始し、予後についての情報を収集した。その結果、局所動脈硬化粥腫容積が大であるほど、経過中、虚血性イベントの再発を認め易いとの成績を得た。今後はかかる粥腫のCT,MRIなどの非侵襲的診断への応用が期待されよう。

公開日・更新日

公開日
2007-05-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200624007B
報告書区分
総合
研究課題名
冠動脈不安定粥腫の同定とその効果的破綻予防、治療法の開発に関する多施設共同研究
課題番号
H16-循環器等(生習)-一般-020
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
山岸 正和(金沢大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 水野 杏一(日本医科大学附属千葉北総病院循環器内科)
  • 椎名  毅(筑波大学大学院システム情報工学研究科)
  • 細川 博昭(独立行政法人国立病院機構豊橋医療センター循環器内科)
  • 山田 直明(国立循環器病センター放射線診療部)
  • 小宮山伸之(埼玉医科大学循環器内科)
  • 浦澤 一史(特定医療法人カレスサッポロ時計台記念病院循環器センター)
  • 廣  高史(山口大学医学部附属病院第二内科学)
  • 高山 忠輝(日本大学医学部 内科学講座循環器内科部門)
  • 大塚 頼隆(国立循環器病センター内科心臓血管部門)
  • 角辻 暁(医療法人徳洲会野崎徳洲会病院心臓センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業【がん、心筋梗塞、脳卒中を除く】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
不安定狭心症、心筋梗塞などの急性冠症候群において、破綻する可能性の高い粥腫を未然に診断することは意義深い。血管内超音波法は、粥腫特性などが評価可能であることから、診断法として注目されて来た。本共同研究では一定の基準に基づいて診断された粥腫を“前向き”に経過観察することにより、粥腫不安定化の要因を探索し、予防、治療法の立案に寄与しようとするものである.
また、各個研究として、各施設における冠動脈不安定粥腫診断法の精度向上に関する研究を行った。
研究方法
各施設における診断的冠動脈造影、冠動脈形成術施行に際して、冠動脈硬化病変部位を血管内超音波法で観察し、以下の基準に合致する冠動脈局所を暫定的に登録した。即ち
(1)血管造影法での狭窄率が50%未満の病変。
(2)血管内超音波像の指標に加えて、形態的特徴として、既存の粥腫破綻、血栓の局在、石灰化の局在などを明記した。また、倫理面の配慮においては、血管内超音波法による冠動脈評価は既に確立されたものであるが、本研究の遂行については、各施設での倫理委員会で審査された。各施設においては、血管内超音波法、血管内視鏡、CT法、MRI法による検索を引き続き実施した。
結果と考察
平成18年度までに932例(女性172例、平均年齢67.2才)が各施設から登録された。登録病変の血管内超音波指標の平均値は、全血管面積14.9±5.5 mm2,粥腫面積9.1±3.7mm2粥腫面積63.2±11.2%,病変長7.2±3.1mm,病変容積55.5±33.2mm3平均粥腫面積9.3±3.1mm 拡大リモデリング27%, 偏心性病変64%, 石灰化41%であった。経過中78例で虚血性イベントの再発をみた。興味あることに、イベント再発部では粥腫容積が有意に大であるとの成績を得た。しかし、今回登録した病変以外の部位を基本とした急性冠症候群の発症も認め、発症予測にはより慎重であるべきことが示唆された。各個研究においては、診断精度の向上、治療効果の評価および非侵襲的診断法開発などにおいての所定の成果を得た。
結論
3ヵ年に渡り、各施設において血管内超音波法により観察され、所定の基準に合致する冠動脈局所を暫定的な不安定粥腫として登録の上、“前向き”追跡を行った。その結果、局所動脈硬化粥腫容積が大であるほど、経過中、虚血性イベントの再発を認め易いとの成績を得た。今後はかかる粥腫形態に関する情報のCT法、MRI法などの非侵襲的診断法への応用が期待されよう。

公開日・更新日

公開日
2007-05-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200624007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、急性冠症候群発症に関わる冠動脈硬化病変を予め推定し、効果的な治療策立案に寄与しようとしたものである。その結果、血管内超音波法で観察される冠動脈粥腫のうち、比較的粥腫容積の大なる病変部位が将来的に破綻し易いことが示唆された。今回のような、多施設での研究成果としての報告は初めであろう。また、各個研究における冠動脈粥腫イメージングの進歩はこの分野の発展に資するものと推察される。
臨床的観点からの成果
本研究では、臨床的に大変重要である急性冠症候群発症に関わる動脈硬化病変を診断し、効果的な治療策立案に寄与しようとしたものである。その結果、血管内超音波法で観察される冠動脈粥腫のうち、比較的粥腫容積の大なる病変部位が将来的に破綻し易いことが示唆された。また、併せて示されたバイオマーカについても興味深い。かかる成果は、今後の非侵襲的検査法(CT、MRIなど)における診断に際して、重要な参考データとなろう。
ガイドライン等の開発
現在のところなし。
その他行政的観点からの成果
現在のところなし。
その他のインパクト
我が国における医学学術集会として最大規模である第17回日本医学会総会学術シンポジウムでの演者に指名され、本研究内容の一部を発表した。
2007年6月1日付け日本経済新聞科学欄に、本研究の成果の臨床応用についての展望が掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
46件
その他論文(和文)
10件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
第54回日本心臓病学会学術集会シンポジウム 第17回日本医学会総会学術シンポジウム
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
平成16年10月 血管内ステント回収装置特願2004-259488 平成18年4月 エフォリン及び/又はエフからなる炎症細胞の化学遊走調節剤及びその用途。特願2006-92715
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shina T, Nitta N, Endo H et al
Assessment of vulnerable coronary plaque by intravascular elasticity imaging
Proceedings of IEEE International Ultrasonics, Ferroelectrics and Frequency Control 50th Anniversary Joint Conference, , 364-367  (2004)
原著論文2
Takano M, Inami S, Mizuno K.
Angioscopic follow-up study of coronary rupturedplaques in nonculprit lesions
Journal of the American College of Cardiology , 45 , 652-658  (2005)
原著論文3
Li Y, Honye J, Takayama T et al.
Variability in quantitative measurement of the same segment with two different intravascular ultrasound systems: In vivo and in vitro studies
Catheterization and cardiovascular Interventions , 62 , 175-180  (2004)
原著論文4
Li Y, Honye J, Takayama T et al.
Intravascular ultrasound evaluation of ruptured plaque in the left main coronary artery misinterpreted as an aneurysm by angiography.
Catheterization and Cardiovascular Interventions , 63 , 314-316  (2004)
原著論文5
Murashige A, Hiro, T et al.
Detection of Lipid-laden Atherosclerotic Plaque by Wavelet Analysis of Radio-frequency Intravascular Ultrasound Signals: In Vitro Validation and Preliminary In Vivo Application
Journal of the American College of Cardiology , 45 (12) , 1954-1960  (2005)
原著論文6
Higashikata T, Yamagishi M, Higashi T et al.
Altered expression balance of matrix metalloproteinases and their inhibitors in human carotid plaque disruption: results of quantitative tissue analysis using real-time RT-PCR method
Atherosclerosis , 5 (1) , 165-172  (2006)
原著論文7
Higo S, Uematsu M, Yamagishi M et al.
Elevation of plasma matrix metalloproteinase-9 in the culprit coronary artery in patients with acute myocardial infarction: clinical evidence from distal protection.
Circulation Journal , 69 (10) , 1180-1185  (2005)
原著論文8
Ogata T, Yasaka M, Yamagishi M et al.
Atherosclerosis found on carotid ultrasonography is associated with atherosclerosis on coronary intravascular ultrasonography.
Journal of Ultrasound Medicine , 24 (4) , 469-474  (2005)
原著論文9
Nitta N, Homma K, Shiina T
Intravascular Shear Stress Imaging Based on Ultrasonic Velocity Vector Measurement
Proceedings of 2005 IEEE Ultrasonics Symposium , 520-523  (2005)
原著論文10
Osaka T, Matsumura T, Mitake T et al.
Preliminary Results of Elasticity Imaging to Aortic Plaque
Proceedings of the Fourth International Conference on the Ultrasonic Measurement and Imaging of Tissue Elasticity. , 4 , 84-  (2005)
原著論文11
Akihiro Murashige, Takafumi Hiro, Takashi Fujii et al.
Detection of Lipid-laden Atherosclerotic Plaque by Wavelet Analysis of Radio-frequency Intravascular Ultrasound Signals: In Vitro Validation and Preliminary In Vivo Application.
Journal of the American College of Cardiology , 45 , 1954-1960  (2005)
原著論文12
Kouji Imoto, Takafumi Hiro, Takashi Fujii et al.
Longitudinal structural determinants of atherosclerotic plaque vulnerability: a computational analysis of stress distribution using vessel models and three-dimensional intravascular ultrasound imaging.
Journal of the American College of Cardiology , 46 , 1507-1515  (2005)
原著論文13
Li Y, Honye J, Takayama T et al.
A potential complication of directional coronary atherectomy for in-stent restenosis
Texas Heart Institute Journal , 32 (1) , 108-109  (2005)
原著論文14
Sato Y, Matsumoto N, Yoda S et al.
Whole-heart coronary magnetic resonance angiography in a patient with unstable angina.
International Journal of Cardiology  (2005)
原著論文15
Ishibashi F, Yokoyama S, Miyahara K et al.
Quantitative colorimetry of atherosclerotic plaque using the L*a*b* color space during angioscopy for the detection of lipid cores underneath thin fibrous caps
International Journal of Cardiovascular Imaging  (2007)
原著論文16
Takano M, Ohba T, Inami S et al.
Angioscopic differences in neointimal coverage and in persistence of thrombus between sirolimus-eluting stents and bare metal stents after a 6-month implantation
Europena Heart Journal , 27 (18) , 2189-2195  (2006)
原著論文17
Sato Y, Ichikawa M, Nakanishi K et al.
Multidetector computed tomography of a saphenous vein graft aneurysm
Heart and Vessels , 21 (2) , 135-136  (2006)
原著論文18
Yamada N, Higashi M, Otsubo R et al.
Association between signal hyperintensity on T1-weighted MR imaging of carotid plaques and ipsilateral ischemic events
American Journal of Neuroradiology , 28 (2) , 287-292  (2007)
原著論文19
Sakai H, Oyama N, Kishimoto N et al.
Revascularization of Malignant Coronary Instent Restenosis Resulting From Takayasu's Arteritis Using Sirolimus-Eluting Stents
International Heart Journal , 47 (5) , 795-801  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-10-06
更新日
-