心筋微小血管造影装置の開発による糖尿病性心筋微小循環障害の可視化

文献情報

文献番号
200624005A
報告書区分
総括
研究課題名
心筋微小血管造影装置の開発による糖尿病性心筋微小循環障害の可視化
課題番号
H16-循環器等(生習)-一般-018
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
盛 英三(国立循環器病センター研究所 心臓生理部)
研究分担者(所属機関)
  • 越後茂之(国立循環器病センター 臨床栄養(小児科))
  • 後藤葉一(国立循環器病センター 心臓血管内科)
  • 内藤博昭(国立循環器病センター 放射線診療部)
  • 吉政康直(国立循環器病センター 動脈硬化代謝内科)
  • 竹下 聡(国立循環器病センター 心臓血管内科)
  • 福山直人(東海大学医学部 基礎医学系 )
  • 佐藤英一(岩手医科大学 教養部)
  • 田口明彦(国立循環器病センター循環動態機能部)
  • 福島和人(国立循環器病センター研究所・心臓生理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業【がん、心筋梗塞、脳卒中を除く】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
34,906,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
糖尿病は微小循環障害の原因となるが、その血管サイズは既存の血管造影法の解像度以下であり、臨床評価が困難である。本研究では3種類の病院設置型の微小血管造影法を開発し、糖尿病等に基づく微小循環障害の臨床評価を目指す。
研究方法
①高熱容量CT用X線発生装置を線源とする造影装置(病院設置型1号機):本機を用いた臨床試験(末梢循環障害患者の下肢の微小血管を細胞移植治療の前後で撮影し、既存の血管造影法と比較するは延べ8例の撮影を行い完了した。②プラズマX線発生装置:高輝度化プラズマX線源2号試作機を線源として、イヌ心筋微小血管ファントム等を被写体とした性能試験と生体下での犬の微小冠血管造影撮影、摘出かん流臓器の撮影を実施した。③セリウム回転陽極X線発生装置: H17年度から開発中であった1号試作機を平成18年10月に完成した。
結果と考察
①比較的低線量(0.75R/秒)で全例の下肢微小血管を観察できた。既存の血管造影法よりもさらに2分枝以上末梢の血管床(最小血管内径100μm以下)の観察が可能であった。末梢血由来の血管内皮前駆細胞移植とアドレノメデユリン皮下注を併用した治療により臨床症状の改善を認めた1例の患者ではmidzone 側副路部および下肢指尖部の微小循環で明らかな血流像の増強を認めた。小児肺循環疾患の臨床試験も開始した。②ファントムでは心筋表面の冠血管から心筋内側へ貫入する貫通枝の3−4次分枝までを観察することができた。生体下での冠血管造影では貫通枝の2次分枝までを観察できた。③セリウム回転陽極X線発生装置:11月現在で60kV x 30 mA x 5sの撮影を実施する負荷試験に耐えられることを確認した。漸次チャート撮影、ヨードマイクロスフェアーで血管床を充填した摘出臓器等の性能テストを実施した。
結論
①病院設置型1号機:臨床試験を通じて、安全性と一定の有用性を確認できた。②プラズマX線発生装置(単射型):高い単色性を特徴とし、心筋内微小血管の検出能に優れることを実験で確認できた。2号試作機を上回る高輝度化に成功すれば臨床応用への展望も開けるものと考えられる。③セリウム回転陽極X線発生装置は理論的には連続撮影と高輝度疑似単色光得られることから将来の微小血管造影のX線源として最も期待されるものである。

公開日・更新日

公開日
2007-03-23
更新日
-

文献情報

文献番号
200624005B
報告書区分
総合
研究課題名
心筋微小血管造影装置の開発による糖尿病性心筋微小循環障害の可視化
課題番号
H16-循環器等(生習)-一般-018
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
盛 英三(国立循環器病センター研究所 心臓生理部)
研究分担者(所属機関)
  • 越後茂之(国立循環器病センター 臨床栄養(小児科))
  • 後藤葉一(国立循環器病センター 心臓血管内科)
  • 内藤博昭(国立循環器病センター 放射線心療内科)
  • 吉政康直(国立循環器病センター 動脈硬化代謝内科)
  • 竹下 聡(国立循環器病センター 心臓血管内科)
  • 福山直人(東海大学医学部 基礎医学系)
  • 佐藤英一(岩手医科大学 教養部)
  • 田口明彦(国立循環器病センタ研究所 循環動態機能部)
  • 福島和人(国立循環器病センター研究所 心臓生理部)
  • 西上和宏(国立循環器病センター 心臓血管内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業【がん、心筋梗塞、脳卒中を除く】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
糖尿病は微小冠動脈病変を高頻度に合併する。これらの微小血管病変が集中する血管床のサイズは既存の冠血管造影の解像度より小さい。本研究では、3種類の病院設置型の微小血管造影法を開発し、糖尿病性微小循環障害と再生血管の臨床評価の実現を目指す。
研究方法
①病院設置型1号機:新エネルギー・産業技術総合開発機(NEDO)の医療福祉機器研究開発事業において本機を作成し、これを平成16年3月末に国立循環器病センターに移設した。同センターの倫理委員会の承認(承認番号15-21)を得て臨床試験を開始した。平成16年以来、延べ8例で既存の造影法との対比試験を実施した。②プラズマ単射型X線発生装置:セリウムのKα蛍光X線(34.6keV)が主成分の疑似単色X線源で、病院設置型1号機と比して微小血管の検出下限に優れると期待された。平成17年度に高輝度化した2号試作機を完成させ、18年度にかけて性能評価を実施した。③セリウム回転陽極連続照射型X線撮影装置:本装置は陽極にセリウムを用いて発生した制動X線を酸化セリウムフィルターで高効率にセリウムの特性X線に変換させる。これにより、34keVにピークを有する疑似単色線を得る。陽極を回転させることで高熱容量化を実現する。平成16および17年度の種々の試行錯誤を経て平成18年度に1号試作機の完成にこぎ着け、性能評価を実施した。
結果と考察
①臨床試験で従来の血管造影装置に比較して少なくとも2分枝以上末梢側の血管を描出可能であり、血管内径100μm以下の微小血管を観察できることが明らかとなった。通常のDSAでは明らかな血管数の増加が確認できなかったのに、微小血管造影では明らかに血管数が増加していた症例もあり、血管新生療法の客観的評価法として有効であると考えられた。②プラズマ単射型X線装置に関する検討では、イヌ心筋微小血管ファントムを被写体とした性能試験(単射撮影)で、心筋表面の冠血管から心筋内側へ貫入する貫通枝の4次分枝までを可視化することができた。生体下での犬の微小冠血管造影では心筋表面の冠血管から心筋内側へ貫入する貫通枝の2次分枝までを観察することができた。③回転セリウム陽極連続照射型X線装置: 平成18年度後半に1号試作機を完成させ、性能評価を行った。
結論
病院に設置できる微小血管造影装置の開発を通じて新たな臨床医学のパラダイム創製に貢献する。

公開日・更新日

公開日
2007-03-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-12-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200624005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
疑似単色X線源と高感度高精細撮像装置を組み合わせた微小血管を可視化する装置を実現した。下肢微小血管を可視化する装置については世界で初めての臨床試験を実施し、既存の血管造影法よりも優れた微小血管描出能を確認した。成人の心臓、脳、腹部臓器など厚い被写体の微小血管の描出を実現するための装置開発については2種類の高輝度単色X線源を開発し、その臨床応用の可能性に目途をつけた。この研究についても世界で類をみない。
臨床的観点からの成果
下肢微小血管造影装置により、難治性下肢循環障害患者の詳細な病態評価を実現し、それに対する血管再生治療の可視化技術を提供した。8例の臨床試験で既存の造影法よりも2分枝末梢の微小血管を観察できる。成人の頭、胸、腹部など厚い被写体の微小血管を抽出できる高輝度X線源が実用化されると、心臓、脳などの微小循環障害の病態評価やそれらの臓器に対する血管再生治療の効果判定法が容易となり、次世代医療に大きな貢献を期待できる。糖尿病の初期微小循環障害の検出に応用することで、成人病の早期発見、早期治療にも役立つ。
ガイドライン等の開発
特に関係はない。
その他行政的観点からの成果
難治性循環器疾患の診断と治療効果の判定を改善することを通じて適切な治療法の選択が可能となる。また、成人病の初期病変の検出に応用することで成人病の早期発見、早期治療の実現に貢献し、医療経済の観点からも総医療費の抑制に役立つ可能性がある。
その他のインパクト
下肢微小血管造影装置は通産省の外郭団体であるNEDOの研究費を得て、企業2社と研究開発を実施し、完成した機器を厚生労働省管轄の医療施設に寄付して臨床試験を実施した。この活動が認められ、平成17年度に第3回産学官連携功労者表彰、日本学術会議会長賞を受賞した。心臓、脳、腹部臓器など厚い被写体の微小血管の描出を実現するためのX線源開発についても企業との連携で実施し、産学官連携に貢献している。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
229件
その他論文(和文)
25件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
124件
学会発表(国際学会等)
45件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計4件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
4件
YIA優秀賞(第47回日本脈管学会総会), 一般向け講演会(2005.9.12、2004.10.2), 日本学術会議会長賞(第4回産学官連携推進会議)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Akiyama T, Yamazaki T, Mori H, et al.
Effects of Ca2+ channel antagonists on acetylcholine and catecholamine releases in the in vivo rat adrenal medulla
Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol , 287 (1) , 161-166  (2004)
原著論文2
Sato E, … Mori H, et al.
Weakly ionized cerium plasma radiography
SPIE , 5210 , 12-21  (2004)
原著論文3
Sato E, … Mori H, et al.
Weakly ionized plasma flash x-ray generator and its distinctive characteristics
SPIE , 5196 , 383-392  (2004)
原著論文4
Sato E, … Mori H, et al.
Sharp characteristic X-ray irradiation from weakly ionized linear plasma
J. Electron Spectroscopy and Related Phenomena , 713-720  (2004)
原著論文5
Sato E, … Mori H, et al.
Portable X-ray generator utilizing a cerium-target radiation tube for angiography
J. Electron Spectroscopy and Related Phenomena , 699-704  (2004)
原著論文6
Sato E, … Mori H, et al.
Quasi-monochromatic parallel radiography utilizing a computed radiography system
J. Electron Spectroscopy and Related Phenomena , 137-140  (2004)
原著論文7
Sato E, … Mori H, et al.
Quasi-monochromatic polycapillary imaging utilizing a computed radiography system
SPIE , 5196 , 412-420  (2004)
原著論文8
Sato E, …Mori H, et al.
Quasi-Monochromatic Flash X-Ray Generator Utilizing Disk-Cathode Molybdenum Tube
Jpn. J. Appl. Phys. , 43 (10) , 7324-7328  (2004)
原著論文9
Sato E, Tanaka E, Mori H, et al.
Demonstration of enhanced K-edge angiography using a cerium target x-ray generator
Med Phys , 31 (11) , 3017-3021  (2004)
原著論文10
Yasuda S, Goto Y, Takaki H, et al.
Exercise-induced hepatocyte growth factor production in patients after acute myocardial infarction: its relationship to exercise capacity and brain natriuretic peptide levels
Circ J , 68 (4) , 304-307  (2004)
原著論文11
佐藤英一, … 盛英三, 河合敏昭, 他
シンクロトロンにかわる医用単色X線装置の開発と応用
医学物理 , 25 , 25-38  (2005)
原著論文12
Miyahara Y, Nagaya N, …Mori H
Monolayered mesenchymal stem cells repair scarred myocardium after myocardial infarction
Nat Med , 12 (4) , 459-465  (2006)
原著論文13
Miyamoto K, Nishigami K, … Takeshita S
Unblinded pilot study of autologous transplantation of bone marrow mononuclear cells in patients with thromboangiitis obliterans
Circulation , 114 (24) , 2679-2684  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-10-06
更新日
-