未成年者の喫煙実態状況に関する調査研究

文献情報

文献番号
200624003A
報告書区分
総括
研究課題名
未成年者の喫煙実態状況に関する調査研究
課題番号
H16-循環器等(生習)-一般-004
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
林 謙治(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
  • 簑輪 眞澄(聖徳大学人文学部)
  • 鈴木健二(久里浜アルコール症センター)
  • 和田 清(国立精神・神経センター精神保健研究所)
  • 福島 哲仁(福島県立医科大学衛生学)
  • 大井田 隆(日本大学医学部公衆衛生学)
  • 尾崎 米厚(鳥取大学医学部環境予防医学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業【がん、心筋梗塞、脳卒中を除く】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成16年度に開始した本研究は2年間かけて中高校生の喫煙・飲酒の状況およびこれに影響する社会環境要因について全国規模の調査を実施した。最終年度においては上記の調査資料に詳細な分析を行うとともに、中高校生より数年年長であり、将来保健医療に従事する医学生、歯学生、看護学生、栄養学生を対象に喫煙・飲酒の状況および予備職業人としての態度・意識を調査した。その結果から今後の喫煙予防および禁煙教育のあり方を検討する。
研究方法
1.全国の医学、歯学、看護学、栄養学の学部もしくは学科を持つ大学をそれぞれ20校を無作為抽出し、4年生を対象に喫煙・飲酒の状況および予備職業人としての態度・意識について調査した。

2. 医学、看護学生を対象に喫煙行動に至るまでのプロセスを探り、喫煙意識とその関連要因を把握する目的でフォーカスグループインタビューを行った。
結果と考察
1.全国調査では、1)喫煙経験がある割合をみると歯学生が最も高く(49.2%)、次いで医学生(36.9%)、看護学生(27.0%)であり、栄養学生(21.9%)が最も低い。
2)専攻別の現在の喫煙状況については上記喫煙経験の割合と同じ序列であった。毎日吸う、時々吸う双方の合計は歯学生28%、医学生14.6%、看護学生9.7%、栄養学生6.9%であった。
3)それぞれ専攻の立場から喫煙についてどう思うかの質問に対して吸うべきでないとする割合は栄養学生がもっとも高く(74.5%)、次いで医学生、歯学生はほぼ同率(69%)であり、看護学生はこのなかでもっとも寛容的であった(56.5%)。
4)患者の喫煙について患者の自由に委ねるべきとする割合は歯学生が最も高く(46.8%)、看護学生と医学生はほぼ同率で(32%前後)、栄養学生はもっとも厳しくであった(16.2%)。

2.フォーカスグループインタビュー調査では、喫煙促進要因として、ストレスへの対処、生活習慣化、他者とのコミュニケーション、タバコへのイメージ、タバコ許容の社会的メッセージ、個人の自由、が導出された。他方、禁煙促進要因として、喫煙意図、教育意識、経済的負担、自分へのリスク影響、他者へのリスク影響、患者への影響、が導出された。
結論
本人の喫煙については歯学生、医学生が高く、看護学生と栄養学生が相対的に低い。専攻科の男女割合構成が影響している可能性がある。しかし、それぞれの専攻がそのまま将来の職業とつながることを考えると実態のほうが意味があると思われる。歯学生は本人の喫煙率ばかりでなく、患者の喫煙についても最も寛容的である。本邦の初調査として重要な資料であり、今後の対策に生かしていきたい。

公開日・更新日

公開日
2007-05-07
更新日
-

文献情報

文献番号
200624003B
報告書区分
総合
研究課題名
未成年者の喫煙実態状況に関する調査研究
課題番号
H16-循環器等(生習)-一般-004
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
林 謙治(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
  • 簑輪眞澄(聖徳大学人文学部)
  • 鈴木健二(国立療養所久里浜病院精神科 )
  • 和田 清(国立精神・神経センター精神保健研究所)
  • 福島哲仁(福島県立医科大学衛生学)
  • 大井田隆(日本大学医学部公衆衛生学)
  • 尾崎米厚(鳥取大学医学部環境予防医学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業【がん、心筋梗塞、脳卒中を除く】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成12年の健康日本21で未成年者の喫煙率を0にする目標を立て、平成15年の健康増進法で非喫煙者を受動喫煙の害から守る方策を推進し、対策の強化を求められるようになった。本研究では上記の実態をモニタリングおよびリスク因子を同定するために全国代表性のある大規模調査を含め5つの調査をおこなった。
研究方法
1)全国を代表するような学校を単位とした青少年の喫煙行動について2004年調査、および喫煙率の低下理由検索のための2005年調査を実施した。2)また、2005年にクリニックを単位とした妊産婦の喫煙状況についても調査をおこなった。3)さらに2006年において将来健康増進に係わる医学生をはじめ看護学生、栄養学生、歯科学生の喫煙状況及び喫煙に対する態度について大学単位に調査をおこなった。4)そのほかたばこの値上げによる青少年の喫煙に対する影響についても個人オムニバス調査を用いた調査を実施した。
結果と考察
全国調査によると、男女とも学年が上がるにつれ月喫煙者率(この30日に1度でも喫煙したもの=中高生の喫煙者と定義)は上昇した。月喫煙者率は中学男子で、1996年10.9%、2000年9.4%、2004年5.1%、中学女子はそれぞれ、4.9%、5.6%、3.6%、高校男子は、30.7%、29.9%、15.9%、高校女子は、12.6%、13.1%、8.2%であった。男女、中高とも2004年では、喫煙率の劇的低下が確認された。中高生の喫煙行動の関連要因をみると、中高生の喫煙者は、周囲の者の喫煙、食生活などの生活習慣の問題、クラブ活動などの学校生活の問題を有し、一般に望ましくないと考えられている生活習慣をより多く身につけている。
結論
わが国には、未成年喫煙禁止法があるにもかかわらず、中高生にはすでに多くの喫煙者がいることがわかっている。成人の喫煙者に尋ねても、未成年のうちから喫煙を開始していたと回答するものの割合は高い。成人の喫煙率を下げるためには、喫煙者への禁煙指導の普及が重要であるが、近年の画期的治療方法であるニコチン置換療法をもってしても、治療に結びついた人のうち約2割しか長期禁煙には成功していない。したがって、そもそも吸い始めない喫煙防止が極めて重要であるといえ、多くの喫煙者が喫煙を開始する思春期が重要な時期となる。

公開日・更新日

公開日
2007-03-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200624003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1.2004、2005年にわたる未成年者の喫煙行動に関する全国調査を行い、2000年に比べ喫煙率の著明な低下を確認した。また、生活習慣の関連要因、周囲の者の喫煙行動の影響、たばこ消費量推計、学校環境要因(健康教育、校内喫煙規制など)の関連を明らかにした。2. 妊婦の喫煙行動に関する全国調査を行い、喫煙実態と課題を明らかにした。3.医療系大学生の喫煙行動に関する全国調査を行い、歯学生、医学生、看護学生、栄養学生の順に喫煙率が高いことを明らかにした。
臨床的観点からの成果
未成年者の喫煙を取り巻く環境に関する調査から青少年がよく読む雑誌におけるタバコの製品広告、漫画雑誌における喫煙シーンを数量的に集計、分析し、未成年者に影響を及ぼすと考えられる環境における喫煙を助長する実態の把握と課題を明らかにした。漫画雑誌の喫煙シーンの分量とそれをよく読む中高生の喫煙行動との関連を統計学的に解析した。その結果メディアの青少年に及ぼす影響のしかたについて明らかにした。
ガイドライン等の開発
未成年者の喫煙行動に関する全国調査、未成年者の喫煙行動に影響を及ぼす社会環境に関する調査、妊婦の喫煙行動に関する全国調査、医療系大学生の喫煙行動に関する全国調査結果を分析し、総括し、わが国の未成年者の喫煙問題の実態とこれまでの喫煙対策の成果を評価し、これからの喫煙対策にむけての提言を行う。これらの結果を総合的にまとめ、研究成果の効果的伝達を検討する。全国の関係者向けの講習会、研究成果の出版等、さまざまなメディアを用いた情報提供を検討する。
その他行政的観点からの成果
本研究の目的は、わが国の未成年者の喫煙問題の実態を様々な方面から総合的に評価し、近年急速に広まりつつある喫煙対策の現状とその評価を行うことである。それにより、健康日本21および健やか親子21の中間評価に使用する情報を提供してきたとともに、今後の喫煙対策のありかたを提言した。喫煙対策はいまや国内外で最も注目されている健康関連政策のひとつである。厚生労働省として総合的な調査研究を行うことは必須であり、それに応えることに努力してきた。  
その他のインパクト
本研究班の成果はしばしばマスコミの注目を浴びた。特に2004年における青少年の喫煙率の著しい低下の要因に関する関心が高く、小遣いとの関連、周囲の喫煙者による影響について全国紙、地方紙で取り上げられた。また、研究班員は研究期間中に3回国際シンポジウムもしくは特別講演に発表を要請された。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
14件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
15件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Osaki Y, Tanihata T, Ohida T et al.
Adolescent smoking behaviour and cigarette brand preference in Japan
Tobacco Control , 15 , 172-180  (2006)
原著論文2
Suzuki K, Ohida T, Yokoyama E et al.
nationwide survey
JAN , 49 , 268-275  (2005)
原著論文3
Kaneita Y, Ohida T, Takemura S et al.
Relation of smoking and drinking to sleep disturbance among Japanese pregnant women.
Pre Med , 41 , 877-882  (2005)
原著論文4
Osaki Y, Mei J, Tanihata T et al.
Cigarette brand preferences of smokers among university students in Japan.
Preventive Medicine , 38 (3) , 338-342  (2004)
原著論文5
大井田隆、曽根智史、武村真治他
わが国における妊婦の喫煙状況
日本公衛誌 , 54 (2) , 115-122  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-10-06
更新日
-