難治性悪性リンパ腫の治療に関する研究

文献情報

文献番号
200622015A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性悪性リンパ腫の治療に関する研究
課題番号
H16-がん臨床-一般-037
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
飛内 賢正(国立がんセンター中央病院 第一領域外来部)
研究分担者(所属機関)
  • 堀田 知光(国立病院機構名古屋医療センター)
  • 森島 泰雄 (愛知県がんセンター中央病院 血液・細胞療法部)
  • 木下 朝博(名古屋大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科)
  • 朝長 万左男(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科附属原爆後遺障害医療研究施設分子医療部門分子治療研究分野)
  • 上田 龍三(名古屋市立大学大学院医学研究科臨床分子内科学)
  • 鈴木 孝世(滋賀県立成人病センター)
  • 伊藤 国明(国立がんセンター東病院 化学療法科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
43,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
キメラ型抗CD20抗体リツキシマブ (R)と化学療法を併用して、既存の化学療法では治癒が期待できない低悪性度B細胞リンパ腫の標準治療を確立する。
研究方法
未治療進行期低悪性度B細胞リンパ腫患者に対し、R と CHOP 療法併用(R-CHOP)を対照とし、化学療法の用量強度増強とG-CSF併用によるRのADCC効果増強が期待されるRとbiweekly CHOP 療法併用(R-Bi-CHOP)のランダム化第II/III相試験を行う。第II相部分のprimary endpointは完全奏効割合、secondary endpointsは奏効割合、無増悪生存、生存、安全性。第III相部分のprimary endpointは無増悪生存、secondary endpoints は生存および安全性。第II相から第III相部分への移行の可否は、中間解析結果に基づくJCOG効果・安全性評価委員会の判断に従う。
結果と考察
以下に今年度の研究成果を示す。
1) 平成18年度は60例(月平均5.5例)を登録し、プロトコール改正時の予定通りに2007年2月28日までに目標症例数の300例を登録した。
2) 199例の調査票について研究事務局が最終コース後の効果判定のレビューを終了。
3) 登録300例中288例(96%)の病理中央診断用未染色病理標本を収集し、未提出標本のある9施設に対して標本提出を督促→免疫染色後に病理中央診断を予定。
4) Rによるgrade 3の輸注関連毒性を発現した7例の臨床データについて検討したが、明らかな予測因子は見いだされなかった.
5)二次性白血病発生の1名を除いて治療関連死を含む重篤な有害事象報告はなく、被験者の安全性はほぼ確保されている。
6) 病理中央診断、抗腫瘍効果のレビューなどにより、本臨床試験結果を正確かつ科学的に評価する予定。
結論
目標を上回るペースの症例登録を踏まえて実施したプロトコール改正通りに、目標の300例の症例登録を予定研究期間内に達成できた。治療関連死はなく、二次性白血病を発生した1例を除いて被験者の安全性は確保されている。本研究によって、進行期低悪性度B細胞リンパ腫において、世界的標準療法であるR-CHOP療法に比しR-biweekly CHOP療法が優れていることが検証できれば国際的にも高い医学的貢献が期待できる。

公開日・更新日

公開日
2007-05-01
更新日
-

文献情報

文献番号
200622015B
報告書区分
総合
研究課題名
難治性悪性リンパ腫の治療に関する研究
課題番号
H16-がん臨床-一般-037
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
飛内 賢正(国立がんセンター中央病院 第一領域外来部)
研究分担者(所属機関)
  • 堀田 知光(国立病院機構名古屋医療センター)
  • 森島 泰雄 (愛知県がんセンター中央病院 血液・細胞療法部)
  • 木下 朝博(名古屋大学大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学)
  • 朝長 万左男 (長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科附属原爆後遺障害医療研究施設分子医療部門分子治療研究分野)
  • 上田 龍三(名古屋市立大学大学院医学研究科臨床分子内科学)
  • 鈴木 孝世(滋賀県立成人病センター)
  • 中田 匡信(国立がんセンター東病院)
  • 伊藤 国明(国立がんセンター東病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
抗CD20抗体リツキシマブ (R)と化学療法を併用して低悪性度Bリンパ腫(I-B-NHL)の標準治療を確立。
研究方法
未治療進行期I-B-NHL患者に対し、R と CHOP 療法併用(R-CHOP)を対照とし、化療強度増強とG-CSF併用によるRのADCC増強が期待されるRとbiweekly CHOP併用(R-Bi-CHOP)のランダム化第II/III相試験を行う。第II相のprimary endpointは完全奏効割合、第III相は無増悪生存(PFS)。II相からIII相への移行可否はJCOG効果・安全性評価委員会(DSMC)の判断に従う。
結果と考察
1) 再発・再燃I-B-NHLを対象にRの第II相試験を実施し、全奏効割合 61% (37/61)を報告。
2) 未治療進行期I-B-NHLを対象に、R-CHOPのランダム化第II相試験(同時と連続投与を比較)を実施し、両群ともに高い有効性を確認。 
3) 2002年9月1日に症例登録開始。
4) 2003年9月の用法・用量拡大承認に伴い、R投与を4回から6回とするプロトコール改訂。
5) 第II相登録例の効果中央判定を実施し完全奏効割合を確定。
6) JCOGデータセンターが作成した中間解析レポートに基づいて、試験継続に関するJCOG-DSMCによる審査を受け、III相への移行が承認。
7) 予定登録期間より早い目標200例への到達見込みを踏まえて、PFSのより小さな差を検出可能にすべく、300例への増加の妥当性をDSMCに諮問し承認。
8) 予定通りに2007年2月28日までに目標300例を登録。
9) 199例の調査票について効果判定レビューを終了。
10) 294例(98%)の未染色病理標本を収集し、未提出6施設に対して提出督促→免疫染色後に病理中央診断予定。
11) 二次性白血病1例を除いて治療関連死を含む重篤な有害事象はなく、被験者の安全性は確保されている。
12) 病理中央診断、効果レビューなどにより正確かつ科学的に評価する予定。
結論
プロトコール通りに、目標の300例登録を達成。治療関連死はなく、二次性白血病を発生した1例を除いて被験者の安全性は確保されている。本研究によって、進行期I-B-NHLにおいてR-biweekly CHOPが優れていることが検証できれば高い医学的貢献が期待できる。

公開日・更新日

公開日
2007-05-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200622015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本臨床試験によって、化学療法の用量強度増強とG-CSF併用によるリツキシマブの抗体依存性細胞介在性細胞傷害反応(ADCC)効果増強が期待できる試験治療群の標準治療(R-CHOP療法)に対する優越性が検証できれば、その医学上の貢献度は大きい。
臨床的観点からの成果
全登録例300例の半数の約150例において、試験治療であるリツキシマブとG-CSF併用biweekly CHOP療法併用の安全性が確認できた。本臨床試験によって試験治療群の優越性が検証できれば医学上の貢献度は大きい。
ガイドライン等の開発
症例登録が終了して経過観察中の段階であり、研究成果を一般診療に反映させたり、ガイドライン開発につなげるべき段階ではない。
その他行政的観点からの成果
症例登録が終了して経過観察中の段階であり、研究成果を行政施策に反映されるべき段階ではない。
その他のインパクト
本研究の対象とした進行期低悪性度B細胞リンパ腫は既存の化学療法では治癒が期待できなかった疾患であり、本臨床試験によって抗CD20抗体リツキシマブとbiweekly CHOP療法併用の試験治療群が、現在の標準治療の一つであるR-CHOP療法より治療効果が優れていて、一定の相対頻度の本疾患患者に治癒をもたらすことが検証できれば、医学的貢献度は大きい。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
107件
その他論文(和文)
73件
その他論文(英文等)
7件
学会発表(国内学会)
107件
学会発表(国際学会等)
69件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tanimoto K, Kaneko A, Tobinai K, et al.
Long-term follow-up results of no initial therapy for ocular adnexal MALT lymphoma.
Annals of Oncology , 17 , 135-140  (2006)
原著論文2
Tanimoto K, Tobinai K, Kobayashi Y, et al.
Primary ocular adnexal MALT lymphoma with trisomy 18.
BMC Cancer , 6 (1) , 249-  (2006)
原著論文3
Mizoroki F, Hirose Y, Tobinai K, et al.
A phase II study of VEPA/FEPP chemotherapy for aggressive lymphoma in elderly patients: Japan Clinical Oncology Group Study 9203.
International Journal of Hematology , 83 , 55-62  (2006)
原著論文4
Yoshino T, Tobinai K, Ohtsu A, et al.
Epstein-Barr virus involvement is a predictive factor for the resistance to chemoradiotherapy of gastric diffuse large B-cell lymphoma.
Cancer Science , 97 , 163-166  (2006)
原著論文5
Sekiguchi N, Watanabe T, Tobinai K, et al.
The application of molecular analyses for primary granulocytic sarcoma with a specific chromosomal translocation.
International Journal of Hematology , 82 , 210-214  (2005)
原著論文6
Kusumoto S, Kobayashi Y, Tobinai K, et al.
Diffuse large B-cell lymphoma with extra Bcl-2 gene signals detected by FISH analysis is associated with a "non-germinal center phenotype".
American Journal of Surgical Pathology , 29 , 1067-1073  (2005)
原著論文7
Ishikura S, Tobinai K, Ohtsu A, et al.
Japanese multicenter phase II study of CHOP followed by radiotherapy in stage I-II, diffuse large B-cell lymphoma of the stomach.
Cancer Science , 96 , 349-352  (2005)
原著論文8
Sekiguchi N, Kobayashi Y, Tobinai K, et al.
Follicular lymphoma subgrouping by fluorescence in situ hybridization analysis.
Cancer Science , 96 , 77-82  (2005)
原著論文9
Narimatsu H, Kami M, Tobinai K, et al.
Clinicopathological features of pyothorax-associated lymphoma; a retrospective survey involving 98 patients.
Annals of Oncology , 18 , 122-128  (2007)
原著論文10
Onishi Y, Tateishi U, Tobinai K, et al.
Two entities of precursor T-cell lymphoblastic leukemia/lymphoma based on radiologic and immunophenotypic findings.
International Journal of Hematology , 80 , 43-51  (2004)
原著論文11
Sekiguchi N, Matsuno Y, Tobinai K, et al.
Primary mediastinal large B-cell Lymphoma: a single institution clinicopathologic study in Japan.
International Journal of Hematology , 79 , 465-471  (2004)
原著論文12
Sekiguchi N, Matsuno Y, Tobinai K, et al.
EBV-positive Burkitt lymphoma as a late-onset post-transplant lymphoproliferative disorder after allogeneic stem cell transplantation.
International Journal of Hematology , 79 , 387-389  (2004)
原著論文13
Kusumoto S, Kobayashi Y, Tobinai K, et al.
T(11;18)-bearing pulmonary MALT lymphoma responding to cladribine.
International Journal of Hematology , 80 , 70-74  (2004)
原著論文14
Kinoshita T, Hotta T, Tobinai K, et al.
A randomized controlled trial investigating survival benefit of dose-intensified multidrug combination chemotherapy (LSG9) for intermediate- or high-grade non-Hodgkin’s lymphoma: Japan Clinical Oncology Group Study 9002.
International Journal of Hematology , 80 , 341-350  (2004)
原著論文15
Tobinai K, Hotta T
Clinical trials for malignant lymphoma in Japan.
Japanese Journal of Clinical Oncology , 34 , 369-378  (2004)
原著論文16
Kouno T, Watanabe T, Tobinai K, et al.
CD56-positive small round cell tumor: osseous plasmacytoma manifested in osteolytic tumors of the iliac bone and femora.
Japanese Journal of Clinical Oncology , 35 , 90-93  (2005)
原著論文17
Takenaka T, Hotta T, Shimoayama M, et al.
Phase III study of ranimustine, cyclophosphamide, vincristine, melphalan, and prednisolone (MCNU-COP/MP) versus modified COP/MP in multiple myeloma: A Japan Clinical Oncology Group Study, JCOG 9301.
International Journal of Hematology , 79 , 165-173  (2004)
原著論文18
Suzuki T, Kiyoi H, Kinoshita T, et al.
Clinical characteristics and prognostic implications of NPM1 mutations in acute myeloid leukemia.
Blood , 106 , 2854-2861  (2005)
原著論文19
Okamura J, Utsunomiya A, Tomonga M, et al.
Allogeneic stem-cell transplantation with reduced conditioning intensity as a novel immunotherapy and antiviral therapy for adult T-cell leukemia/lymphoma.
Blood , 105 , 4143-4145  (2005)
原著論文20
Kannagi M, Harashima N, Tomonga M, et al.
Tumor immunity against adult T-cell leukemia.
Cancer Science , 96 , 249-255  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-09-24
更新日
-