革新的な診断技術を用いたこれからの肺がん検診手法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200621013A
報告書区分
総括
研究課題名
革新的な診断技術を用いたこれからの肺がん検診手法の確立に関する研究
課題番号
H16-3次がん-一般-021
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 隆一郎(大阪府立成人病センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 曾根 脩輔(中南信地区がん検診センター)
  • 望月 輝一(愛媛大学放射線医学)
  • 新妻 伸二(新潟労働安全衛生協会プラーカ健康増進センター)
  • 吉村 明修(日本大学第4内科)
  • 中川 徹(日立健康管理センタ)
  • 西井 研治(岡山県健康づくり財団付属病院)
  • 岡本 直幸(神奈川県立がんセンター臨床研究所)
  • 佐藤 雅美(宮城県立がんセンター)
  • 長尾 啓一(千葉大学医学部総合安全衛生管理機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
16,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では末梢型肺がんを対象とした低線量CTと、肺門型肺がんを対象とした喀痰細胞診の有効性を、肺がん死亡率減少効果という尺度で検討することを研究目的とした。
研究方法
(研究A)全国9地区においてCT検診群47,158人、通常検診群91,971人を登録し、平成17年12月31日まで追跡した。肺がん死亡と全死因死亡について、相対粗死亡率比とSMRを男女別に求め、両群間で比較した。
(研究B)宮城県の平成元年肺がん検診受診者28万人のうち男性重喫煙者で、喀痰細胞診を受診した10,219人をコホートとしコホート内症例対照研究を行った。平成4~12年までの死亡時年齢40-79歳の肺癌死亡者241例を症例と定義し、性・喫煙・居住区をマッチさせた対照1,402例をコホート内から選択した。胸部X線受診を基礎リスクとし、喀痰細胞診受診による肺癌死亡リスクを測定した。また血痰による症状受診を除外した解析を行った。
結果と考察
(研究A)9地区中7地区において調査を完了した。通常検診群の肺がん死亡率を1とした場合のCT 検診群の相対肺がん死亡率は、男性で0.63、女性で0.48であったが、同様にして求められた相対全死因死亡率は男女とも0.54 で、CT 検診群の方が全死因でも死亡しにくい集団であることが示された。相対全死因死亡率で調整した調整相対肺がん死亡率は男性で1.17、女性で0.89 であった。
(研究B)、確定診断12 ヶ月以内の胸部X 線単独受診者の肺がん死亡オッズ比を1とした場合の喀痰細胞診併用受診者の肺がん死亡オッズ比は、扁平上皮がんに限ると全年齢で0.95(0.52-1.73)、死亡時年齢75 才以下で0.86(0.35-1.73)と若干低下した。自覚症状としての血痰例を除外した場合全年齢、死亡時年齢75才未満の肺がん死亡オッズ比はそれぞれ1.01(0.53-1.89)、0.85(0.37-1.93)であった。
結論
(研究A)平均追跡期間5.4年という間では、特に男性においては明確な肺がん死亡率減少効果は確認されなかったが、女性では弱い効果が示唆された。この原因としては、CT検診群に単回受診者が多いことが考えられる。
(研究B)胸部X線検診に対する喀痰細胞診の上乗せには、死亡時年齢75 才以下、扁平上皮がんに限れば約15%の小さな肺がん死亡率減少効果が示唆されたが、例数が少なく有意ではなかった。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-12-14
更新日
-

文献情報

文献番号
200621013B
報告書区分
総合
研究課題名
革新的な診断技術を用いたこれからの肺がん検診手法の確立に関する研究
課題番号
H16-3次がん-一般-021
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 隆一郎(大阪府立成人病センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 曾根 脩輔(中南信地区がん検診センター)
  • 望月 輝一(愛媛大学放射線医学)
  • 長尾 啓一(千葉大学医学部総合安全衛生管理機構)
  • 新妻 伸二(新潟労働安全衛生協会プラーカ健康増進センター)
  • 吉村 明修(日本大学第4内科)
  • 中川 徹(日立健康管理センタ)
  • 西井 研治(岡山県健康づくり財団付属病院)
  • 岡本 直幸(神奈川県立がんセンター臨床研究所)
  • 佐藤 雅美(宮城県立がんセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では末梢型肺がんを対象とした低線量CTと、肺門型肺がんを対象とした喀痰細胞診の有効性を、肺がん死亡率減少効果という尺度で検討することを研究目的とした。
研究方法
(研究A)全国9地区においてCT検診群47,158人、通常検診群91,971人を登録し、平成17年12月31日まで追跡した。CT発見肺がん325例の生存率解析を行うとともに、肺がん死亡と全死因死亡の相対死亡率を両群間で比較した。
(研究B)宮城県の平成元年肺がん検診受診者のうち男性重喫煙者で、喀痰細胞診を受診したものをコホートとしコホート内症例対照研究を行った。肺癌死亡者241例を症例とし、性・喫煙・居住区をマッチさせた対照1,402例をコホート内から選択した。胸部X線受診を基礎リスクとし、喀痰細胞診受診による肺癌死亡リスクを測定した。
結果と考察
(研究A)CT検診発見肺がんの生存率(全死因死亡)は男性で76.1%(95%信頼区間68.1-84.0)、女性で83.0%(75.4-90.6)の非常に高い生存率を示した。追跡調査は9地区中7地区において調査を完了した。通常検診群を基礎リスクとしたCT 検診群の相対肺がん死亡率は、男性で0.63、女性で0.48であったが、相対全死因死亡率においても男女とも0.54で、self-selection biasの混入が示唆された。相対全死因死亡率で除した調整相対肺がん死亡率比は男性で1.17、女性で0.89 であった。
(研究B)、確定診断12ヶ月以内の胸部X 線単独受診者の肺がん死亡オッズ比を1とした場合の喀痰細胞診併用受診者の肺がん死亡オッズ比は、扁平上皮がんに限ると全年齢で0.95(0.52-1.73)、死亡時年齢75 才以下で0.86(0.35-1.73)と若干低下した。自覚症状としての血痰例を除外した場合全年齢、死亡時年齢75才未満の肺がん死亡オッズ比はそれぞれ1.01(0.53-1.89)、0.85(0.37-1.93)であった。
結論
(研究A)平均追跡期間5.4年という間では、特に男性において明確な肺がん死亡率減少効果は確認されなかったが、女性では弱い効果が示唆された。この原因としては、CT検診群に単回受診者が多いことが考えられる。
(研究B)胸部X線検診に対する喀痰細胞診の上乗せには、死亡時年齢75 才以下、扁平上皮がんに限れば約15%の小さな肺がん死亡率減少効果が示唆されたが、例数が少なく有意ではなかった。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200621013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
中間解析ではあるが、低線量CT検診の受診により従来型肺がん検診の受診に比べて、肺がん死亡率減少効果が高いことを示唆する成績が得られた。この効果は非喫煙者で顕著であり少なくとも一回の受診で死亡率の減少が示唆された。しかし、喫煙者では一回の受診だけでは効果は明確ではなく、二回以上の連続受診が必要であることが示された。
臨床的観点からの成果
低線量CTによる肺がん検診は、従来の胸部単純X線では指摘できなかった小型肺がんを高率に発見することから、従来法に比べて飛躍的な肺がん死亡率減少効果が期待されていたものの、本研究の成果は、その効果が予想に比べてかなり小さいものであることを示唆している。この研究成果をふまえれば、現状ではCTで発見される小型肺野病変に、手術などの積極的な治療を行うことよりも、経過観察が推奨される場合が多いことを示している。
ガイドライン等の開発
平成18年度がん研究助成金「がん検診の適切な方法とその評価法の確立に関する研究」班の「有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン」でも引用されている。
その他行政的観点からの成果
特になし。
その他のインパクト
平成18年8月8日日本経済新聞(全国版:夕刊)「病を知る がんを見つける② ヘリカルCT(肺がん)」として掲載された。
平成19年1月16日の朝日新聞(全国版)「肺がんCT検診 効果は?」として掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
14件
原著論文(英文等)
29件
その他論文(和文)
9件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
26件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
中山富雄、鈴木隆一郎
低線量CT肺癌検診の有効性評価
肺癌 , 46 (7) , 871-876  (2006)
原著論文2
Henschke C. I., Sone S. et al.
Computed Tomographic Screening for Lung Cancer: The relationship of disease stage to tumor size.
Archives of Internal Medicine , 166 , 321-325  (2006)
原著論文3
Henschke C. I., Sone S. et al.
Women’s susceptibility to tobacco carcinogens and survival after diagnosis of lung cancer.
JAMA , 296 , 180-184  (2006)
原著論文4
Henschke C. I., Sone S. et al.
Survival of patients with stage I lung cancer detected on CT screening.
N. Engl J Med , 355 , 1763-1771  (2006)
原著論文5
Li F., Li Q., Sone S,et al.
Improving Radiologosts’ Recommendation With Computer-Aided Diagnosis for Management of Small Nodules Detected by CT.
Acad Radiol , 13 , 943-950  (2006)
原著論文6
中川 徹
低線量CTによる検診を普及させる方策はあるのか?
日本胸部臨床 , 65 , 107-113  (2006)
原著論文7
西井研治、正影美恵子、守谷欣明 ほか
住民を対象とした胸部CT検診での胸膜プラークの検討
CT検診 , 13 (2) , 133-137  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-09-18
更新日
-