科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイトラインの開発に関する研究

文献情報

文献番号
200620029A
報告書区分
総括
研究課題名
科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイトラインの開発に関する研究
課題番号
H17-子ども-一般-010
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
島田 三恵子(大阪大学大学院 医学系研究科保健学専攻)
研究分担者(所属機関)
  • 杉本 充弘(日本赤十字社医療センター 産科)
  • 縣 俊彦(東京慈恵医科大学 環境保健医学教室)
  • 大橋 一友(大阪大学大学院 医学系研究科保健学専攻 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
2,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成17度の全国調査に基づいて、
1)妊娠出産する母親側から見て快適で満足な妊娠出産ケアの指標を科学的に抽出し、
2)日本の母親にとって快適で安全な出産環境を整備するガイドラインの開発を目的とした。
研究方法
平成17年度に実施した産後1か月の母親3852名の全国調査から、実際に受けた妊娠分娩産後ケア・医療処置等と満足感とのロジスティック解析により、女性の満足感と独立して有意に関連する変数34項目が抽出され、快適で満足な妊娠出産ケアの指標を見いだした。この34項目から介入や行為を表す5項目とそれに関連する3項目、新たに導入を検討する医療行為1項目、今回の全国調査で明らかにされた多数が導入しているが検証すべき医療行為5項目、合計14項目をリサーチクエスチョンとして選択し、各リサーチクエスチョンに関してRCT等の系統的検索および本研究班の全国調査のデータにより、科学的根拠に基づいたガイドライン(案)を作成した。
更に、平成17年度に同様に実施した473施設の産科責任者の施設調査を基に、マンパワーと医療体制と快適性や満足に関連すると想定される妊娠出産ケア・出産環境・医療処置等との関連を検討した。
結果と考察
満足なお産の指標として34項目が抽出され、1)コミュニケーション、2)説明と情報提供、3)正常に経過すること、4)お産のやり方、5)継続ケア、6)母乳育児、7)育児相談、8)その他、のカテゴリーに大別された。
Research Questionとして採択された以下の14項目に関して、ガイドライン(案)を作成し、意見公募を行った。RQ1.プライマリ施設での出産、RQ2.家族の分娩立ち会い、RQ3.分娩の担当者(助産師が介助)、RQ4.終始自由な姿勢、RQ5.産痛緩和、RQ6.説明と対応(コミュニケーション)、RQ7.継続ケア、RQ8.バルサルバ法でいきみを誘導すること、 RQ9.ルチンの会陰切開、RQ10.ルチンの点滴、RQ11.連続CTG、RQ12.新生児の蘇生、RQ13.ルチンの口腔内吸引、RQ14.早期授乳、の14項目に関してガイドライン(推奨案)を作成し、意見公募を行った。
施設調査から、安全性が医師ならびに助産師の人数、および医師の年休や年間休暇取得日数に正の相関が認められた。助産師は1人当たりの分娩数の増加と共に説明や助産ケアが少なくなり、分娩時の医療介入が増えることが示された。
結論
抽出された満足なお産の指標を基に作成したガイドライン(案)14項目に関して、それを提供するために必要なマンパワー等の具体策に基づいた分析が更に必要である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200620029B
報告書区分
総合
研究課題名
科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイトラインの開発に関する研究
課題番号
H17-子ども-一般-010
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
島田 三恵子(大阪大学大学院 医学系研究科保健学専攻)
研究分担者(所属機関)
  • 杉本充弘(日本赤十字社医療センター 産科)
  • 縣 俊彦(東京慈恵医科大学 環境保健医学講座)
  • 大橋一友(大阪大学大学院 医学系研究科保健学専攻)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)妊娠出産育児の保健医療福祉サービスの利用者である女性側から評価を行い、主任研究者が平成11年に行った全国調査をベースライン値として「健やか親子21」における快適な妊娠・出産のための支援の中間評価を行い、日本の快適な妊娠出産のケアの現状と満足している人の割合の推移および改善点を明らかにする。
2)女性が快適で満足と感じる妊娠出産ケアの指標を明らかにする。
3)それを提供する医療者側にとって快適な妊娠出産ケアを提供するために最低限必要なマンパワーとシステム等の体制について検討する。
4)快適な妊娠・出産のためのガイドラインを開発する。
研究方法
平成17年度に目的1),3)に関して、前回調査と同様に層化無作為抽出法により、全国48都道府県の産後1ヶ月の母親3852名、および一般病院、大学病院、診療所・助産院など出産施設の周産期部門管理者約477名を対象として、質問紙による全国疫学調査を実施した。
平成18年度に目的2),4)に関して、今回の母親対象の調査から女性が快適で満足と感じる妊娠出産ケアの指標を抽出し、これらの指標とRCT等の系統的検索により快適な妊娠出産のためのガイドラインを開発し、意見公募した。
結果と考察
1、妊娠中のケアと分娩時の医学的処置は変化なく、夫立会、分娩後1時間以内の母子接触と早期授乳が5割まで普及した。産後1か月の心配事と育児支援ニーズは不変だが、子育て世帯の優遇税制、夜間診療の小児科医、一時預かり保育、父親の柔軟な勤務体制を望んでいた。働く母親が増加しており、仕事と育児を両立する支援が必要としている。
2、産科医の労働時間は週平均61時間/週、年間休暇平均50日で、当直回数は月平均17回、97%の産科医は当直明けで継続して過酷な勤務をしていた。
3、満足なお産の指標として34項目が抽出され、大別してコミュニケーション、説明と情報提供、正常に経過すること、お産のやり方、継続ケア、母乳育児、育児相談等であった。
4、Research Questionとして採択された14項目に関して、ガイドライン(案)を作成し、意見公募を行った。
結論
出産時の医学的処置は不変だが、夫の立会分娩、早期母子接触が増加普及した。夜間小児科医、優遇税制のニーズが高く、働く母親が増加し両立する育児支援が必要である。
産科医の過酷な労働に対して、快適で安全な妊娠出産のためにも、マンパワーの増加が必要である。抽出された満足なお産の指標等から快適な妊娠出産のためのガイドライン14項目が開発された。

公開日・更新日

公開日
2007-04-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200620029C

成果

専門的・学術的観点からの成果
産後1か月の母親を対象とした母親調査、および施設の周産期医療責任者を対象とした施設調査のいずれも、全国48都道府県から層化無作為抽出による大規模で学問的な疫学研究の方法論を提示した。
また、ガイドラインに選定されたResearch Questionに関して、国内外のRCTや対照研究を検索した結果、日本全体のデータとしては本研究班の研究以外に見当たらず、日本のローリスクの周産期医療のデータとして国際的に価値が高い。
臨床的観点からの成果
ガイドラインの各項目が国内外のRCTや対照研究の系統的検索による科学的根拠に基づいた、1つ1つのシステマティックレビューである。臨床におけるローリスクの妊産褥婦のケアや医療処置に際し、最新の知見と日本の周産期医療に適した妊娠出産ケアの指針を臨床の実践家に提供できる。
ガイドライン等の開発
本研究班の日本の母親調査から満足なお産の指標を抽出し、それを基に14項目のResearch Questionを選定した。このような研究データに基づくガイドラインの開発は関係者から関心を集めている。英国のガイドライン開発の専門家のsuperviseの下で、各Research Questionに関してRCTや対照研究、および本研究結果から、快適な妊娠出産のためのガイドラインを作成した。
平成20年9月10日から、日本医療機能評価機構(Minds)ホームページで一般公開されている。
その他行政的観点からの成果
1,妊娠出産ケアに満足する人の割合の推移から目標値の「健やか親子21」の達成度、女性や母親達のニーズと評価、快適な妊娠・出産の支援の指標を明らかにできたことにより、後半の「健やか親子21」施策の更なる推進に貢献できる。
2,産科医の過酷な労働実態が明らかにされ、医師の労働環境の改善や周産期医療のマンパワーの確保の基礎データとして重要である。
3,平成18年版 少子化社会白書:第3章子どもの成長に応じた子育て支援(p.38)に参考文献として引用された。
その他のインパクト
1)朝日新聞、平成18年6月13日朝刊の第1面、報道タイトル:夫の半数出産立ち会い-産後は親頼み、全国454施設厚労省調査、2)朝日新聞、平成18年6月19日朝刊の第2面、報道タイトル:産科医過酷さ鮮明、週61時間労働・当直明け17回、厚労省調査、3)朝日新聞、平成19年6月7日朝刊の生活面、報道タイトル:出産立ち会った夫その後は、育児分担し妻なごませて、4)共同通信社、平成18年7月10日最新医療情報 MEDICAL NEWS、報道タイトル:お産の満足、意思疎通が鍵、厚労省研究班が指針

発表件数

原著論文(和文)
1件
産後1ヶ月間の母子の心配事と子育て支援のニーズおよび育児環境に関する全国調査-「健やか親子21」5年後の初経産別・職業の有無による比較検討-.小児保健研究,65:752-762,2006.
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
島田三惠子、杉本充弘:快適な妊娠出産のためのガイドライン2006、周産期医学, 40(4):459-463, 2010.4月
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
1)日本の出産ケア、2)陣痛室での付添と立会分娩、3)分娩施設の選択理由、4)妊婦健診での医療者の対応と情報提供およびバースプラン、5)妊娠出産の継続ケアと満足度および臨床結果に関する全国調査.
学会発表(国際学会等)
2件
1. A nation-wide survey concerning birth care and treatment in Japan. ICM, UK, 2008.
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
平成18年版 少子化社会白書:第3章子どもの成長に応じた子育て支援(p.38)に参考文献として引用
その他成果(普及・啓発活動)
1件
平成20年9月10日から、日本医療機能評価機構(Minds)ホームページ掲載:科学的根拠に基づく「快適な妊娠出産ケアのためのガイドライン」厚生科学研究班

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
島田三恵子、杉本充弘、縣俊彦
産後1ヶ月間の母子の心配事と子育て支援のニーズおよび育児環境に関する全国調査-「健やか親子21」5年後の初経産別・職業の有無による比較検討-
小児保健研究 , 65 , 752-762  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
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