高齢者の口腔乾燥改善と食機能支援に関する研究

文献情報

文献番号
200619052A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の口腔乾燥改善と食機能支援に関する研究
課題番号
H17-長寿-一般-042
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
柿木 保明(公立大学法人九州歯科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 西原 達次(公立大学法人九州歯科大学)
  • 小関 健由(国立大学法人東北大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
12,580,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究課題は、口腔機能と大きく関連する高齢者の口腔乾燥状態と食機能を、より客観的に評価する方法を確立し、口腔乾燥に伴う誤嚥性肺炎の発症や口腔感染症のリスクを減少させ、高齢者の栄養状態や全身状態、QOLを向上させることを目的とした。
研究方法
分担研究として(1)唾液と食機能支援および口腔領域のパワーリハビリ、(2)口腔乾燥と自浄作用、(3)口腔乾燥症の予防、の3課題を実施した。分担研究1では、口腔乾燥の自覚症状、口渇を生じる薬剤、音波歯ブラシの口腔刺激による唾液の物性変化、保湿ゲル剤の曳糸性、唾液曳糸性の因子解析、唾液曳糸性と歯周病の関連、舌苔付着度と口腔機能の関連、嚥下時の食塊水分量と嚥下閾、ピエゾセンサーを用いた嚥下センサー、口腔乾燥症患者の剥離上皮膜、就寝前の口腔ケアの効果、口腔ケアの現状と課題の12課題について、それぞれ調査研究を行った。分担研究2では、口腔乾燥に伴って生じやすい口腔カンジダ症に着目して研究を実施した。分担研究3では、開発した改良ワッテ法を高齢者の歯科健診で実施し、安静時唾液流出量に関連する因子を検索した。
結果と考察
分担研究1では、高齢者の口腔乾燥は、年齢によっても自覚症状が異なり、心身医学的薬剤による副作用が大きく関連していた。音波歯ブラシの口腔刺激が口腔乾燥改善に有効であった。唾液曳糸性は、全身的な状態や服用薬剤、歯周疾患も関連していることが認められ、舌苔の付着状況は口腔機能が関連していた。食塊の嚥下には、食塊内の一定量の水分量が必要であることが認められた。ピエゾフィルムを用いた嚥下センサーは、嚥下運動を簡便に描出できた。分担研究2では、ヒアルロン酸が分子量に依存してカンジダ菌属の増殖を静菌的に抑制した。分担研究3では、改良ワッテ法は煩雑な操作や難しい操作を要求することなく,不快を感じさせない所要時間で安静時唾液流出量検査を実施でき、関連因子の解析ができた。
結論
高齢者の口腔乾燥は、客観的な評価が必要で、関連の情報提供が、口腔機能向上と誤嚥性肺炎の予防においても重要であると思われた。音波歯ブラシの口腔刺激は、口腔乾燥に有効で、リハビリ的な使い方が可能と考えられた。舌苔の評価は、口腔機能評価に有用である可能性が示唆された。ピエゾフィルムを用いた嚥下センサーは、簡便で高齢者の誤嚥性肺炎防止や口腔機能改善に有用であり、これらの研究結果から、唾液を指標とした口腔機能向上プログラム作成が可能と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200619052B
報告書区分
総合
研究課題名
高齢者の口腔乾燥改善と食機能支援に関する研究
課題番号
H17-長寿-一般-042
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
柿木 保明(公立大学法人九州歯科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 西原 達次(公立大学法人九州歯科大学 )
  • 小関 健由(国立大学法人東北大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
口腔機能と大きく関連する高齢者の口腔乾燥状態と食機能を、より客観的に評価する方法を確立し、口腔乾燥に伴う誤嚥性肺炎の発症や口腔感染症のリスクの減少、口腔機能の改善により、高齢者の栄養状態や全身状態、QOLを向上させることを目的とした。

研究方法
分担研究1の唾液と食機能支援および口腔領域のパワーリハビリに関する研究では、高齢者の口腔乾燥とBody Mass Indexとの関連、音波歯ブラシの口腔刺激の効果、口腔乾燥の自覚症状、口渇を生じる薬剤、音波歯ブラシの口腔刺激による唾液の物性変化、保湿ゲル剤の曳糸性、唾液曳糸性の因子解析、唾液曳糸性と歯周病の関連、舌苔付着度と口腔機能の関連、嚥下時の食塊水分量と嚥下閾、ピエゾセンサーを用いた嚥下センサー、口腔乾燥症患者の剥離上皮膜、就寝前の口腔ケアの効果、口腔ケアの現状について、それぞれ調査研究を行った。分担研究2の口腔乾燥と自浄作用の研究では、唾液成分でもあるヒアルロン酸の真菌に対する増殖抑制効果について実験的に検証した。分担研究3の口腔乾燥症の予防研究では、改良ワッテ法の高齢者の歯科健診における有用性と、安静時唾液流出量の関連因子を検索した。
結果と考察
口腔乾燥の高齢者はBMIが有意に低下し、85歳以上では、口腔乾燥感の自覚率が低下していた。乾燥の自覚症状は、舌粘膜上に存在する唾液量に影響され、有意にうつ状態尺度の得点が高かった。年齢によっても乾燥の自覚症状が異なり、心身医学的薬剤による副作用が大きく関連していた。音波歯ブラシの口腔刺激が口腔乾燥改善に有効であった。唾液曳糸性は、全身的な状態や服用薬剤、歯周疾患も関連していることが認められ、舌苔の付着状況は口腔機能が関連していた。食塊の嚥下には、食塊内の一定量の水分量が必要であることが認められた。ピエゾフィルムを用いた嚥下センサーは、嚥下運動を簡便に描出できた。ヒアルロン酸が分子量に依存してカンジダ菌属の増殖を静菌的に抑制した。改良ワッテ法は煩雑な操作や難しい操作を要求することなく,不快を感じさせない所要時間で安静時唾液流出量検査を実施でき、関連因子の解析ができた。
結論
高齢者の口腔乾燥は、栄養状態指標のBMI低下と関連し、また嚥下機能障害や味覚障害、うつ状態、歯周病悪化、口腔環境、口腔機能とも大きく関連していることが示唆されたことから、口腔乾燥に継発する誤嚥性肺炎予防の観点からも、口腔機能向上プログラムに、数値化可能な唾液を指標とした評価を取り入れるべきと思われた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200619052C

成果

専門的・学術的観点からの成果
口腔乾燥と唾液に関する検討では、高齢者の口腔乾燥は、年代によっても唾液の分布状態と自覚症状の関係が異なることから、より客観的な指標による評価が必要と思われた。口腔乾燥および唾液分泌低下の原因には、名全身疾患や心身医学的な薬剤による副作用が大きく関連していることが示唆されたことから、患者およびその介護スタッフに対する口腔乾燥に関する情報提供が、口腔機能向上と誤嚥性肺炎の予防においても重要であると思われた。
臨床的観点からの成果
高齢者の口腔乾燥の改善に、音波歯ブラシの口腔刺激を用いたところ、唾液の粘性と相関する曳糸性が低下して、口腔内の機能や環境、自浄作用にも良好な状態になることが示唆された。また、唾液の湿潤度も正常範囲に収束することが認められた。さらに、音波歯ブラシの刺激は、口腔内感覚の改善にも有用である可能性が示唆され、今後、パワーリハビリ的な効果も期待できると考えられた。
ガイドライン等の開発
高齢者および障害者にも応用できる臨床診断基準を作成して、口腔水分計の測定値や唾液湿潤度、自覚症状と有意に相関することから、臨床上、有用であることが示唆された。これらの客観的数値を用いることで、高齢者における口腔乾燥の評価が可能になり、治療や改善方法の選択に役立つと考えられた。さらに、改善効果の判定にも利用できることから、ガイドライン作成のための基礎データが得られた。
その他行政的観点からの成果
これらの研究成果から、高齢者の口腔乾燥は、栄養状態指標のBMI低下と関連し、また嚥下機能障害や味覚障害、うつ状態、歯周病悪化、口腔環境、口腔機能とも大きく関連していることが示唆されたことから、口腔乾燥に継発する誤嚥性肺炎予防の観点からも、口腔機能向上プログラムに、数値化可能な唾液を指標とした評価を取り入れるべきと思われた。
その他のインパクト
地元のFMラジオ局で、高齢者の口腔乾燥に関する研究成果と臨床応用について、取り上げられた。」また、高齢者の口腔乾燥の研究成果に関連して、舌の症状について4月8日付けの日本経済新聞に取り上げられた。北九州市において、一般市民向けの公開シンポジウム「唾液と健康」を開催した。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
13件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
14件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
松坂利之、井上裕之、長谷則子、etal
口腔乾燥における心理的因子に関する研究
障害者歯科 , 26 (2) , 180-188  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-