データベース利用による訪問看護サービス評価の開発

文献情報

文献番号
200619040A
報告書区分
総括
研究課題名
データベース利用による訪問看護サービス評価の開発
課題番号
H17-長寿-一般-029
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
荒井 由美子(国立長寿医療センター研究所長寿政策科学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 工藤 啓(宮城大学大学院看護学研究科)
  • 池田 学(熊本大学大学院医学薬学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
5,440,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、平成17年度の研究事業において既に開発されている、Home Care Quality Assessment Index (HCQAI;荒井ら、日老医誌2005; 42(4),432-443.)を組み込んだ「国立長寿医療センター方式訪問看護データベース入力支援システム」(NCGGシステム)の問題点を検証し、実用可能性を検討することを目的とした。
研究方法
NCGGシステムは、平成17年度に愛知県内の訪問看護ステーションに試験導入された。試験導入後、改善の要望を集約し、NCGGシステムに改善を加えた。また、システムの実用可能性を検証するため、記録書および報告書の記録時間および訪問看護スタッフのバーンアウトについて、NCGGシステム導入に伴う変化を検討した。さらに、他地域・他機関の在宅医療専門家によるNCGGシステムの実用性に関する調査を行った。
結果と考察
NCGGシステムの試験導入後、訪問看護スタッフから、記録書および報告書の自由記述欄の拡大について要望が挙げられた。これをふまえ、自由記述欄3箇所の拡大が行われた。さらに、NCGGシステム導入前、導入直後、フォローアップの記録業務時間の変化を検討したところ、報告書の記録時間は、NCGGシステム導入前よりも導入後で有意に短縮され、フォローアップまで維持された。他方、バーンアウトについては変化が見られなかった。さらに、他地域・他機関の在宅医療専門家からも、NCGGシステムについての高い評価を得た。以上の結果から、NCGGシステムは、訪問看護スタッフの記録業務の負担を軽減することが可能であることが示唆された。
結論
以上により、平成17年度において開発されたNCGGシステムの実用可能性が検証された。その結果、NCGGシステムは訪問看護スタッフのバーンアウトを高めることなく導入することが可能であり、かつ、記録業務時間の短縮が可能であることが示唆された。今後は、本システムの実用可能性を、他地域・他機関においてさらに検証していくことが課題である。

公開日・更新日

公開日
2007-03-29
更新日
-

文献情報

文献番号
200619040B
報告書区分
総合
研究課題名
データベース利用による訪問看護サービス評価の開発
課題番号
H17-長寿-一般-029
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
荒井 由美子(国立長寿医療センター研究所長寿政策科学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 工藤 啓(宮城大学大学院看護学研究科)
  • 池田 学(熊本大学大学院医学薬学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、Home Care Quality Assessment Index (HCQAI;荒井ら、日老医誌2005; 42(4),432-443.)を組み込んだ訪問看護記録の統一様式を作成し、さらにこれをもとにした「国立長寿医療センター方式訪問看護データベース入力支援システム」(NCGGシステム)の開発・実用化を行うことを目的とした。
研究方法
愛知県内の訪問看護ステーションのスタッフらとの協議の上、システム開発会社とともにシステム開発を行った。本システムは、1)利用者基礎情報マスタ、2)訪問看護・リハビリ記録書(日々の訪問看護・リハビリの記録)、3)訪問看護・リハビリ報告書(訪問看護・リハビリの実施内容と利用者の状態に関する主治医への報告文書)、の3点を主要構成要素とした。開発されたシステムを協力機関に試験導入し、スタッフに対する講習会を行った。試験導入後、改善の要望を集約し、NCGGシステムに改善を加えた。また、システムの実用可能性を検証するため、記録書および報告書の記録時間および訪問看護スタッフのバーンアウトについて、NCGGシステム導入に伴う変化を検討した。さらに、他地域・他機関の在宅医療専門家によるNCGGシステムの実用性に関する調査を行った。
結果と考察
利用者基礎情報マスタ、記録書、報告書のそれぞれについて、訪問看護において評価の必要な項目が網羅された。報告書にはHCQAIの評価項目が組み込まれ、利用者の状態だけでなく、家族介護の状況の評価も可能となった。そのほか、利用者基礎情報マスタと報告書ならびに記録書との連動、入力補助機能の充実などにより、全体として入力が容易なシステムが開発された。試験導入後、スタッフからの要望により、自由記述欄3箇所の拡大が行われた。さらに、報告書の記録時間は、NCGGシステム導入前よりも導入後で有意に短縮され、フォローアップまで維持された。他方、バーンアウトについては変化が見られなかった。さらに、他地域・他機関の在宅医療専門家からも、NCGGシステムについての高い評価を得た。
結論
以上により、NCGGシステムが開発され、本システムは訪問看護スタッフのバーンアウトを高めることなく導入することが可能であり、かつ、記録業務時間の短縮が可能であることが示唆された。今後は、本システムの実用可能性を、他地域・他機関においてさらに検証していくことが課題である

公開日・更新日

公開日
2007-03-29
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200619040C

成果

専門的・学術的観点からの成果
訪問看護における系統的な記録および客観的な在宅ケアの質の評価を可能とするシステム、「国立長寿医療センター方式訪問看護データベース入力支援システム」(NCGGシステム)が開発され、その実用可能性が示された。NCGGシステムを利用してデータを蓄積していくことによって、利用者の状態に影響を及ぼす諸要因の分析が可能である。本研究事業の成果については、日本医事新報、日本老年医学会、日本疫学会等にて公表され、多くの研究者から大きな反響があった。
臨床的観点からの成果
NCGGシステムは、訪問看護スタッフとの協同により開発されたため、訪問看護現場に即応用でき、かつ、在宅ケアの多面的・客観的な評価が可能である。また、NCGGシステムは、訪問看護スタッフのバーンアウトを増大させることなく、記録業務時間を短縮することが示され、多職種間連携の促進、訪問看護業務の負担軽減に貢献し、在宅ケアの質向上につながると考えられる。NCGGシステムについては、国内外の臨床医や訪問看護スタッフ、研究者等から、既に多くの問い合わせを受けている。
ガイドライン等の開発
本研究においては、ガイドライン等の開発は行われていない。しかしながら、本研究事業では、NCGGシステムの開発過程において、訪問看護においてどのような項目を評価すべきかについて検討を重ねているため、訪問看護をはじめとする在宅ケアにおける評価項目の選定に関して、ひとつの指針となると考えられ、将来のガイドライン開発の一助となるものと考えられる。
その他行政的観点からの成果
NCGGシステムは、訪問看護をはじめとする在宅ケアにおける多面的・客観的評価と、系統的な記録を可能にし、医療従事者、各自治体の担当者を含めた、多職種における連携の促進に貢献しうるものである。また、国レベルで高齢者の在宅医療が推進されている昨今、NCGGシステムの利用によって、現場の実状に即した在宅医療の実現がさらに可能になると考えられる。
その他のインパクト
在宅ケアの質の評価およびNCGGシステムについて、あいち健康長寿産業クラスター形成事業県民講座にて、一般市民や医療従事者だけでなく、産業界にもその意義について啓発を行った。また、長寿科学振興財団のパンフレットや、主任研究者の所属部署のホームページにて、在宅ケアの質の評価およびNCGGシステムに関する研究内容および研究成果を公表し、一般国民への普及・啓発活動を行った。

発表件数

原著論文(和文)
20件
原著論文(英文等)
24件
その他論文(和文)
54件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
30件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
あいち健康長寿産業クラスター形成事業県民講座講演、研究部WEB(http://www.nils.go.jp/department/dgp/index-dgp-j.htm)、長寿科学総合研究パンフレット

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kumamoto K, Arai Y, Zarit SH.
Use of home care services effectively reduces feelings of burden among family caregivers of disabled elderly in Japan: Preliminary results.
Int J Geriatr Psychiatry , 21 (2) , 163-170  (2006)
原著論文2
Arai Y.
Family caregiver burden and quality of home care in the context of the Long-Term Care insurance scheme: An overview.
Psychogeriatrics , 6 (3) , 134-138  (2006)
原著論文3
熊本圭吾,荒井由美子.
在宅ケアの質評価法 Home Care Quality Assessment Index: HCQAIの妥当性の検証.
日本老年医学会雑誌 , 43 (4) , 518-524  (2006)
原著論文4
荒井由美子,佐々木恵,熊本圭吾.
国立長寿医療センター方式訪問看護データベース入力支援システムの開発.
日本医事新報 , 4285 , 69-73  (2006)
原著論文5
Sasaki M, Arai Y, Kumamoto K, et al.
Factors related to potentially harmful behaviors towards disabled older people by family caregivers in Japan.
Int J Geriatr Psychiatry , 22 (3) , 250-257  (2007)
原著論文6


公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-