脳卒中危険因子・発症・要介護・医療費に関する大規模縦断研究

文献情報

文献番号
200619036A
報告書区分
総括
研究課題名
脳卒中危険因子・発症・要介護・医療費に関する大規模縦断研究
課題番号
H17-長寿-一般-025
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
小川 彰(岩手医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 坂田 清美(岩手医科大学 医学部)
  • 岡山 明(国立循環器病センター 予防検診部)
  • 寺山 靖夫(岩手医科大学 医学部)
  • 安村 誠司(福島県立医科大学 医学部)
  • 中村 元行(岩手医科大学 医学部)
  • 樋口 紘(八角病院)
  • 吉田 雄樹(岩手医科大学 医学部)
  • 赤羽 卓朗(岩手県 保健福祉部)
  • 田澤 光正(岩手県 盛岡保健所)
  • 生田 孝雄(岩手県 久慈保健所・二戸保健所)
  • 小泉 明(岩手県 花巻保健所)
  • 小野田 敏行(岩手医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
10,115,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 要介護状態と医療費の抑制はわが国において喫緊の課題であるが、要介護に至る原因疾患と社会的な負荷に関する包括的な研究はみられない。本研究では要介護の最大の原因疾患である脳卒中について大規模な前向き研究を実施し、健康診断データと脳卒中の発症及び要介護について順序を踏まえた検討を行って、脳卒中が社会に与える負荷について総合的評価を実施する。
研究方法
 平成14年から17年にかけて岩手県北の二戸、久慈および沿岸の宮古の3保健医療圏17市町村において開始時調査を実施して設定した26,472名(平均年齢62.1歳±11.6歳、男9,162名、女17,310名)の地域コホート集団について、県および県医師会が実施する地域脳卒中登録事業と連携し、対象者の脳卒中発症の有無を明らかにする。また、対象者の要介護度の認定状況および認定調査結果からADLの低下の状況を明らかにして開始時調査および脳卒中発症との関連を検討する。
結果と考察
 二戸保健医療圏9,411名のうち脳卒中既往のない者では男86名、女86名に新規の脳卒中発症が確認された。型別では男で脳梗塞74%、ついで脳出血20%、女で脳梗塞49%、脳出血41%の順に多かった。また、同じく脳卒中の既往のない者で、新規に介護認定を受けた者は男107名、女210名であり、男35名、女37名が介護認定に対して脳卒中が先行していた。
 検診項目と脳卒中罹患および要介護認定との関連では、男女ともに血圧が脳卒中の新規罹患の危険因子として確認された。また、HDLは女で保護的であった。要介護認定では女では血圧の関連は明らかではなかった。LDLは男女ともに高いほど保護的であった。今後も精度の高い追跡を継続して詳細な検討を行いたい。
 健康観などを尋ねた問診票との関連では、多くの項目が要介護認定に関連しており、要介護の申請もしくは認定の過程には多くの社会的因子が関与しているものと考えられた。運動に関する質問ではその後の要介護との関連は弱かった。一方、1キロメートル以上歩くのを難しいと思うか、の質問ではやや難しい、難しいと答える者は男女ともにその後の要介護および脳卒中罹患の双方に関連を認めた。簡便な質問であり、検診時の設問として有用性が高いものと考えられた。
結論
 広域において脳卒中発症および新規の介護認定を悉皆的に調査して大規模なコホート研究のエンドポイントとして活用した。比較的短期間の観察であり、基本健康診査の項目では血圧以外の項目は脳卒中、要介護ともに危険因子として検出できなかったが、いくつかの問診項目で関連性が確認された。

公開日・更新日

公開日
2007-04-14
更新日
-

文献情報

文献番号
200619036B
報告書区分
総合
研究課題名
脳卒中危険因子・発症・要介護・医療費に関する大規模縦断研究
課題番号
H17-長寿-一般-025
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
小川 彰(岩手医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 坂田 清美(岩手医科大学 医学部)
  • 岡山 明(国立循環器病センター 予防検診部)
  • 寺山 靖夫(岩手医科大学 医学部)
  • 安村 誠司(福島県立医科大学 医学部)
  • 中村 元行(岩手医科大学 医学部)
  • 樋口 紘(八角病院)
  • 吉田 雄樹(岩手医科大学 医学部)
  • 赤羽 卓朗(岩手県 保健福祉部)
  • 田澤 光正(岩手県 盛岡保健所)
  • 生田 孝雄(岩手県 久慈保健所・二戸保健所)
  • 小泉 明(岩手県 花巻保健所)
  • 小野田 敏行(岩手医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 要介護状態と医療費の抑制はわが国において喫緊の課題であるが、要介護に至る原因疾患と社会的な負荷に関する包括的な研究はみられない。本研究では要介護の最大の原因疾患である脳卒中について大規模な前向き研究を実施し、健康診断データと脳卒中の発症及び要介護について順序を踏まえた検討を行って、脳卒中が社会に与える負荷について総合的評価を実施する。
研究方法
 平成14年から17年にかけて岩手県北の二戸、久慈および沿岸の宮古の3保健医療圏17市町村において開始時調査を実施して設定した26,472名(平均年齢62.1歳±11.6歳、男9,162名、女17,310名)の地域コホート集団について、県および県医師会が実施する地域脳卒中登録事業と連携し、対象者の脳卒中発症の有無を明らかにする。また、対象者の要介護度の認定状況および認定調査結果からADLの低下の状況を明らかにして開始時調査および脳卒中発症との関連を検討する。
結果と考察
 二戸保健医療圏9,411名(男3,364名、女6,047名)の追跡では、平均3.6年の観察で184名(男111名、女73名)の死亡が確認された。脳卒中発症登録情報の確認を全対象地域でほぼ終了した。二戸および久慈地域では、初発脳卒中の年齢調整率罹患が男186対10万人年、女112と高かった。同時期同地域の脳卒中死亡数との比も1.8前後と高かった。二戸で、脳卒中の既往なく、新規に介護認定を受けた者は男107名、女210名であり、男は35名(33%)、女は37名(21%)が介護認定に対して脳卒中が先行していた。
 検診項目と脳卒中罹患および要介護認定では、年齢を調整すると血圧以外の危険因子は検出できなかった。問診項目では主観的健康観や生活の満足度などで否定的な回答の群で男女ともに要介護認定が有意に増加していた。特に1キロ歩行を困難と思う、と答えた群では要介護、脳卒中ともに増加していた。また、男では既婚であること、家族数が多いことが要介護認定の回避につながっていた。
結論
 広域大規模な前向き研究により要介護に関連する社会的な因子を検出した。また、脳卒中が要介護に及ぼす影響について資料を得た。研究成果の公表を進めるとともに、今後も後発の他地域も含めてより詳細な検討を継続して行いたい。

公開日・更新日

公開日
2007-04-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200619036C

成果

専門的・学術的観点からの成果
岩手県北広域においてほぼ全数の診療録を確認して脳卒中罹患率を型別に明らかにした。また、地域脳卒中発症登録において初発脳卒中罹患数と脳卒中死亡数との比が、1.8前後の数値であることが確認された。健常成人9,411名の追跡では、脳卒中発症の危険因子として年齢、血圧以外では関連が明らかな検査項目はなかった。要介護認定も年齢、血圧が関連した。血中脂質は高いほどその後の要介護認定は少なかった。
臨床的観点からの成果
健康診断における問診項目として、多くの項目でその後の脳卒中罹患および要介護認定に関連がみられた。特に1キロ歩行をやや難しい、難しいと思うと答えた者ではその後の要介護認定が有意に増加し、また、脳卒中罹患にも関連がみられた。しかし、運動量を問う設問では関連は少なかった。また、男では独居や独身で要介護認定が増加した。1キロ歩行などは簡便な設問であり、検診時の設問として有用性が高いものと考えられた。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
岩手県および岩手県医師会の行う地域脳卒中発症登録事業の枠組みを利用して研究を実施し、結果について同登録運営委員会に報告した。報告内容について、岩手県医師会報等を通じて広報を図る。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
13件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
板井一好,大澤正樹,丹野高三,他
岩手県北コホート研究の登録時横断解析結果ならびに初期追跡調査結果:介護認定、脳卒中発症登録に着目した解析結果
岩手公衆衛生学会誌 , 18 (2) , 25-41  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-