健康長寿に関与する要因の研究-超百寿者及び長寿sib調査

文献情報

文献番号
200619030A
報告書区分
総括
研究課題名
健康長寿に関与する要因の研究-超百寿者及び長寿sib調査
課題番号
H17-長寿-一般-019
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
広瀬 信義(慶応義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 稲垣 宏樹(東京都老人総合研究所 自立促進と介護予防研究チーム)
  • 小島 俊男(理化学研究所 比較システム解析研究チーム)
  • 三木 哲郎(愛媛大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
15,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
個人的にも社会からも強く望まれている健康長寿達成の秘訣を調べるために人長寿モデルである百寿者の調査が行われてきた。百寿者の状態を解析し、超高齢期の機能にどのような因子が関与するか、100歳以降の予後を決定する因子は何かを明らかにする。百寿者ではなく超百寿者(SSC)が真のヒトの長寿モデルであることを示唆する特徴について検討する。
研究方法
東京百寿者調査については東京都23区在住の百寿者を対象に超百寿者調査、90歳以上の同胞調査は全国を対象に包括調査を行った。
<倫理面への配慮>
本調査に当たって、本人及び家族に十分な説明を行い、本人(可能な場合は)または家族より同意文書への署名を得た。
結果と考察
1)血圧、総コレステロール、HDLコレステロールと機能
血圧、総コレステロール値(TC)、HDLコレステロール値(HDL)とADL,認知機能の関係を調べた。ADL・認知機能ともに、高血圧(+)群、高TC群、高HDL群の方で有意に良好であった
2)百寿者の性格特性
NEO-FFIを用いて百寿者性格特性を調べた。百寿者では開放性(男女)、外向性、誠実性(女性)が高いことが示された.これらが長寿の関連する可能性が示唆された.
3)情動関連遺伝子の長寿への影響
百寿者を対象に、不安等の負の感情に対する感受性との関連が指摘されているセロトニントランスポーター(5-hydroxytryptamine,5HTT)遺伝子の多型性を検討した。女性百寿者では、不安の低さ関連するとされるL型を持つものが多く存在した。
4) 百寿者の予後に関する因子の研究:予後決定因子系の確立
東京百寿者調査に参加した百寿者304名の予後調査を行い、100歳以降の余命決定因子検討システムを確立した。 アルブミン、ADL,性差が予後と関連した。
5)超百寿者の特徴と意義
百寿者の急増、様々な状態の百寿者の存在から105歳以上者(超百寿者)の検討を行った。105歳以降での死亡率の低下、遺伝多型性が百寿者と異なること、超百寿者になる確率は3000名に一人であることなどからヒトの長寿モデルである可能性が示唆された。
結論
今後超百寿者を検討することにより、長寿関連遺伝子の同定、ヒトの老化の究極像が明らかになり健康長寿達成の秘訣解明を目指す。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200619030B
報告書区分
総合
研究課題名
健康長寿に関与する要因の研究-超百寿者及び長寿sib調査
課題番号
H17-長寿-一般-019
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
広瀬 信義(慶応義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 稲垣 宏樹(東京都老人総合研究所 )
  • 権藤 恭之(東京都老人総合研究所)
  • 小島 俊男(理化学研究所)
  • 三木 哲郎(愛媛大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康長寿に関連する遺伝素因および環境要因の解明
研究方法
1,健康長寿のモデルである105歳以上者(超百寿者、SSC)、長寿同胞(90歳以上の同胞)とそれにふさわしい対照群の収集を行う。
2,SSCと対照群で高密度SNPを用いてwhole genome scanを行う。3,長寿者の特徴を検討して人の究極の加齢現象を明らかにする。4,長寿の環境要因についての検討を行う。
結果と考察
1,超百寿者の人口動態的特徴と意義 
SSCは2002年には全国849名存在した。SSCまで生存できる確率は3200名に1人であった。100歳以上者の死亡率は105歳以降低下傾向を示した。100歳ではなくSSCが人の長寿モデルと考えられる。
2, SSCの医学、遺伝的な特徴 
SSCと百寿者(100-104歳)では医学所見、遺伝多型性が異なり人の加齢現象を調べること、長寿遺伝子同定に最適のグループと考えられた。
3,proteomicsとglycomics 
SSC血漿でproteomicsを行い、異なるタンパク濃度が判明した。ABO血液型でB型が多いことは糖鎖が長寿に関連することを示唆する。今後proteomics、glycomicsが人の老化研究で重要な解析方法となろう。
4、百寿者の機能、病歴
高い機能の百寿者は約20%であり、ほぼ全数が何らかの疾患を持っていた。
高血圧群、高TC群、高HDL-C群では機能が有意に良好であった。
5,百寿者におけるアデイポネクチンの研究―長寿と脂肪組織―
百寿者ではアデイポネクチン濃度が若年群より2倍高かった。相関関係を検討し抗炎症作用、抗動脈硬化作用、抗糖尿病作用をもつ可能性が示唆された。これは機能の良い脂肪組織を持つことが長寿につながる事を示唆する。
6,百寿者の余命検討系の確立
304名の死亡率を6年間にわたり追跡し100歳以降の予後検討系を確立した。ADL,アルブミン、性が関与することが判明した。
7, 百寿者の性格と遺伝素因
百寿者では開放性(男女)、外向性、誠実性(女性)が高かった。神経症、欝と関連するセロトニントランスポーター(5HTT)の多型性について検討した。神経症になりにくいl/lタイプの頻度は百寿者で高かった。
結論
SSCを対象に長寿遺伝子の同定が可能となろう。Proteomicsを用いて抗老化物質の網羅的検討が可能となろう。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200619030C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究の終了時超百寿者は180名、百寿者は250名の調査を完了した。この群全例の50万SNPを用いたwhole genome scanが終了した。今年の7月までに比較対照群の収集が完了する。既に対照群80例の解析が終了しており、近々に世界で初のwholegenomescanを用いた長寿関連遺伝子のリスト作成が完了する。思いがけない遺伝子が現れてくることが予想され今後の老化研究に有用な手がかりを与えるものと期待される。
臨床的観点からの成果
遺伝解析と平行して100歳以降の余命検討系を確立した。どのような因子が余命に関与するかが明らかになってきた。超高齢期の余命延長の為にどのような因子を改善すればよいのかが明らかに出来よう。Proteomicsの結果よりいくつかのタンパク質の濃度がSSCと若年群で異なることも判明した。これにより老化指標、抗老化物質の網羅的検討が可能となる。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
平成18年4月5日 NHK<試してガッテン>取材
メデイカルトリビューン h18年1月5日 39巻1号新春特集<超高齢社会を展望する>
メデイカルトリビューン h19年3月15日40巻11号平成18年度厚生労働科学研究長寿科学総合研究成果発表会

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
12件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Du Y, Hirose N, Ping J et al.
Analysis of growth hormone receptor polymorphism in Japanese semisupercentenarians
Geriatr Gerontol Int , 6 (2) , 82-86  (2006)
原著論文2
Gondo Y, Hirose N, Arai Y,et al
Functional status of centenarians in Tokyo, Japan:Developing better phenotypes of exceptional longevity
Journal of gerontology , 64 (3) , 305-310  (2006)
原著論文3
Arai Y, Nakazawa S, Kojima T et al
High adiponectin concentration and its role for longevity in female centenarians
Geriatr Gerontol Int , 6 (1) , 32-39  (2006)
原著論文4
Gondo Y, Hirose N, Arai Y, et al
Contribution of an affect-associated gene to human longevity:prevalence of the long allele genotype of the serotonin transporter-linked gene in Japanese centenarians
Mechanisms of ageing and development , 126 (11) , 1178-1184  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-