ラベル化造影剤を用いた超音波によるがんの超早期診断システムの研究開発

文献情報

文献番号
200609021A
報告書区分
総括
研究課題名
ラベル化造影剤を用いた超音波によるがんの超早期診断システムの研究開発
課題番号
H17-ナノ-一般-013
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
大川 清(東京慈恵会医科大学 生化学講座第1)
研究分担者(所属機関)
  • 田尻久雄(東京慈恵会医科大学 内科学講座消化器・肝臓内科)
  • 松藤千弥(東京慈恵会医科大学 生化学講座第2)
  • 宮本幸夫(東京慈恵会医科大学 放射線医学講座)
  • 松浦知和(東京慈恵会医科大学 臨床検査医学講座)
  • 石橋由朗(東京慈恵会医科大学 外科学講座消化器肝臓外科)
  • 山田恭輔(東京慈恵会医科大学 産婦人科学講座)
  • 相澤 守(明治大学 理工学部 セラミックス工学)
  • 日下部守昭(財団法人 動物繁殖研究所)
  • 伊藤貴司(アロカ(株)研究所 超音波診断装置)
  • 射谷和徳(アロカ(株)研究所 バイオ関連装置)
  • 阿部正彦(東京理科大学 理工学部 工業化学科)
  • 酒井秀樹(東京理科大学 理工学部 工業化学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
24,447,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
浸潤・転移マーカーCD147を癌標的分子とし、新規開発高安全性のCD147高親和性物質標識超音波造影剤(マイクロ・ナノバブル以下バブルと略)を集積させ、臨床で汎用の超音波診断法で高悪性度微小癌を超早期に画像化する。また抗癌剤等包含標識バブルを微小癌に集積、収束超音波利用で加療する技術開発もする。本年度は分子描出に適した新規超音波造影剤開発、腫瘍モデルでのバブル超音波描出の検討、バブルのCD147認識抗体MAb12C3標識法の改良、バブル高感度検出技術の開発(FMCW法)、収束超音波治療技術の開発を進めた。
研究方法
1)微小腫瘍における標的分子CD147蛋白発現と臨床有用性の確認
2)超音波評価用腫瘍モデル(三次元培養癌浸潤モデルと担癌動物モデル)の確立
3)新規界面活性剤を用いた超音波造影剤(バブル)の創生とラベル化
4)FMCW法利用バブル新規高感度検出技術の開発
結果と考察
1)超音波誘導針生検早期極微小肝癌(平均腫瘍径14.5mm)や超音波内視鏡下針生検組織をはじめ 婦人科、消化器早期癌でもCD147は高発現し診断に有用だった。
2)三次元マウス培養肝臓癌浸潤モデルへのヒト癌細胞注入でCD147陽性癌細胞を検出した。またIRDye800WC標識MAb12C3のiv投与は2時間後既に担癌マウスヒト腫瘍径0.8cmを描出した。抗癌剤結合MAb12C3も標的特異抗癌効果を発揮した。超音波造影剤(MAb12C3標識バブル)集積性、描出検討がin vitro, in vivoで可能となった。
3)生体にやさしく生分解性に優れた新規超音波造影剤シクロアミロース界面活性剤とタウリン誘導ジェミニ型陰イオン界面活性剤でバブル調整(0.06-1μm)に成功し充分な供給も可能である。分子標的性付与は独自に検討中で、標的性向上のアプタマー作成準備も整った。
4)バブル振動と組織非線形効果解析各シミュレーターを開発し、エコーの非線形特性利用でのバブル振動で生ずる第2高調波(ハーモニック)と組織の高調波を識別する技術開発を行い、従来比2倍以上の高い検出感度と、空間分解能1mm以下の高解像度が得られた。
結論
CD147の癌標的分子としての有用性が再確認され、バブル開発も成功した。今後CD147認識抗体標識バブルを作成し、生体内安定性、生体内バリアー通過性の癌モデルでの検証研究は超音波利用分子画像化技術の進歩・実現に可能性を示す。幾つかの技術的ブレイクスルーの後、我国独自の集積超音波造影剤と高感度画像化技術開発実現は、日本発の強力な癌早期診断・治療技術となり、社会医療の面にも貢献できる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-05
更新日
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