特定建築物における屋内化学物質汚染の実態と健康影響との関連に関する研究

文献情報

文献番号
200501213A
報告書区分
総括
研究課題名
特定建築物における屋内化学物質汚染の実態と健康影響との関連に関する研究
課題番号
H16-健康-058
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
嵐谷 奎一(産業医科大学 産業保健学部)
研究分担者(所属機関)
  • 欅田 尚樹(産業医科大学 産業保健学部 )
  • 内山 巌雄(京都大学大学院 工学研究科 )
  • 加藤 貴彦(宮崎大学 医学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
9,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特定建築物は比較的多くの人が利用し、また従業員の生活の場となるため、健康被害防止のためには空気環境の状態を調査することが重要である。
本研究では、種々の特定建築物中の化学・物理的因子の計測及び、健康度調査を実施し、室内汚染状況等を把握すると共に、室内汚染の低減への指針を示すことを目的とした。
研究方法
(1)本年度調査対象建築物は3大学、3書店、美術館、博物館、市役所、3ホテル、国際会議場、JR駅の14施設である。(2)化学物質の計測はすべてパッシブサンプラーを用い、24時間放置して捕集した。揮発性有機化合物(VOCs)はGC/MS、アルデヒド類は高速液体クロマトグラフ、NO2は吸光光度法によってそれぞれ定量した。(3)物理的因子の測定は温・湿度、照度、輻射熱、風速、粉じん濃度である。(4)健康度意識調査はMillerらの化学物質曝露及び過敏症の質問票を参考にして作成したものを用いた。また、疫学調査は厚生労働省「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト」の作成したアンケートを用いて行った。
結果と考察
比較的高い測定値を持つVOCsは、JR駅で18種類と最も多く、ついで書店8種類、ホテルと市役所で7種類、大学で6種類、それ以外の施設は4種類以下であった。JR駅は、脂肪族飽和炭化水素などが比較的高濃度、書店はトルエンなどが比較的高濃度で、印刷物による影響と考えられる。
市役所はトリメチルベンゼンの濃度が高く、床材等のワックスによる影響と考えられる。
大学の施設内の実験室でキシレン、四塩化炭素は高く、化学実験に起因していると考えられる。
ホルムアルデヒドはいずれもアセトアルデヒド類に比べ高値で、ホテル、博物館、美術館、国際会議場で比較的高い濃度レベルであった。
NO2はいずれの特定建築物とも低い濃度レベルであった。物理因子はいずれの特定建築物でも比較的適性であった。
従業員の健康度の調査については、特定建築物ごとの母数が少ないために業種ごとの特徴などについて明らかにならなかった。なお、空気質とは関係なく、全体として、疲労、ストレスを感じる人が比較的多くいることが判った。
結論
業種の内容により明らかに発生する化学物質の種類、また濃度に違いがあることが明らかになったが総じて良好な環境にあった。使用されている、床材、壁紙の材質、塗料等の影響を受けていると考えられた。また疲労感とストレスを感じる人が比較的多いことも認められた。
今後、化学的因子の発生源、疲労、ストレス感の原因を検討し、快適な職場環境形成への指針を示すことが必要であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2006-04-28
更新日
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