シックハウス症候群の疾患概念に関する臨床的・基礎医学的研究

文献情報

文献番号
200501209A
報告書区分
総括
研究課題名
シックハウス症候群の疾患概念に関する臨床的・基礎医学的研究
課題番号
H16-健康-050
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
鳥居 新平(愛知学泉大学家政学部)
研究分担者(所属機関)
  • 坂本 龍雄(名古屋大学大学院医学系研究科小児科学)
  • 秋山 一男(独立行政法人国立病院機構相模原病院臨床研究部)
  • 西間 三馨(独立行政法人国立病院機構福岡病院)
  • 高橋 清(独立行政法人国立病院機構南岡山医療センター)
  • 永井 博弌(岐阜薬科大学)
  • 岡本 美孝(千葉大学大学院医学研究院耳鼻咽喉科頭頚部腫瘍学)
  • 池澤 善郎(横浜市立大学大学院医学研究科生体システム免疫システム医科学、環境免疫病態皮膚科学)
  • 小倉 英郎(独立行政法人国立病院機構高知病院)
  • 内尾 英一(福岡大学医学部眼科学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
22,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
SHSの臨床的特徴、病態を明らかにすることにより、SHS予防・治療のための資料を作成する。
研究方法
患者用の調査票の解析、臨床的研究、動物モデルの作成など。
結果と考察
 SHS患者調査票の統計的解析からその臨床的特徴が明らかになり、その臨床的診断の基準案を作成した。
 臨床的にはFAの短期間、大量曝露によって発症する過敏症状、嗅覚異常などはその環境を回避することにより短期間に軽快、消失する(解剖実習担当教官、実習生を対象)点、SHSとは異なる点であるが、SHSでは複数の化学物質の影響や生物学的因子あるいはその他の素因も考慮する必要がある。
 生物学的因子についてはSHSの関連物質の1つとして注目されているLPSが影響を及ぼしたと思われる1例を経験したが、SHS、アレルギー疾患、健常人の住居の家屋塵中のLPS濃度の測定結果の比較では統計的に有意差なし。
 SHSの眼症状はアレルギ—性結膜炎類似症状とくに、角膜の損傷が目立つがアレルギー性結膜炎の重症型の春季カタルのような症状はみられず、また化学物質による炎症とも異なっていた。
 高脂血症治療薬のコレスチラミン(陰イオン交感樹脂剤)は解毒剤としても用いられるが、5例のSHS患者に1カ月投与した結果、血中VOC濃度の低下が著明であった2例に一時的に臨床症状の改善がみられた。したがってSHSの病態に脂溶性のVOC蓄積による中毒の関与の可能性あり。
 SHS発症前の生活習慣に関する調査では飲酒習慣、喫煙習慣、運動習慣の頻度が同年齢対象に比べ有意に低下していた。その理由としてはSHS患者は発症前から煙、アルコールに過敏であったのか、運動不足は基礎代謝の低下、自律神経失調をもたらし、このような素因がSHS発症に関与していた可能性あり。
 SHSの病態における知覚神経C-fiber過敏性亢進については臨床的にも基礎的にもこれを示唆する成果が得られている。
 3年間の動物モデルを用いた実験は化学物質曝露による知覚神経の過剰分布と免疫系のTH2シフトがSHSの病態への関与を示唆しており、これはアレルギー性炎症の病態との類似性も示唆している。
結論
SHSの臨床的特徴を明らかにすることができた。
 病態に関しては知覚神経過剰分布、免疫系のTH2へのシフトの関与、また脂溶性VOCの毒性学的機序の関与などを示唆する成果が得られた。
 発病前の生活習慣の特徴に一部も明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2006-05-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200501209B
報告書区分
総合
研究課題名
シックハウス症候群の疾患概念に関する臨床的・基礎医学的研究
課題番号
H16-健康-050
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
鳥居 新平(愛知学泉大学家政学部)
研究分担者(所属機関)
  • 坂本 龍雄(名古屋大大学大学院医学系研究科小児科学)
  • 秋山 一男(独立行政法人国立病院機構相模原病院臨床研究部)
  • 西間 三馨(独立行政法人国立病院機構福岡病院)
  • 高橋 清(独立行政法人国立病院機構南岡山医療センター)
  • 永井 博弌(岐阜薬科大学)
  • 岡本 美孝(千葉大学大学院医学研究院耳鼻咽喉科頭頚部腫瘍学)
  • 池澤 善郎(横浜市立大学医学研究科生体システム免疫システム医科学、環境免疫病態皮膚科学)
  • 小倉 英郎(独立行政法人国立病院機構高知病院)
  • 内尾 英一(福岡大学眼科学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
シックハウス症候群(SHS)の統一した疾患概念を確立し、その病態を明らかにすることにより、予防治療対策のマニュアル作成の資料づくりを目標とする。
研究方法
質問票による患者さんの病状の把握と医師の認識の把握、発病前の生活習慣などの調査結果の統計学的解析、患者さんを対象とした臨床研究、室内汚染調査、動物実験などを用いた。
結果と考察
a.発症のきっかけが転居、建物の増築、広範な改築など、b.自宅内の特定の部屋、新築や改築後の建物内で症状が出現する、c.問題になった場所から離れると症状が消失するか軽快する、d.問題になった場所や状況に出会うと症状が10回中5回以上出現するという4つの条件を全て満たした場合、MCSとの比較で感覚刺激症状、全身症状など12項目が特徴ある症状として抽出された。合併頻度が高いアレルギー疾患(ア疾患)との比較ではSHSでは皮膚粘膜刺激症状や全身症状、嗅覚異常など10項目が有意な症状として抽出され、原因物質に関してもMCSとは異なった特異的な10物質が抽出された。
 このような結果からは以上の基準により診断されたSHSは独立した疾患単位として認知しうるものと考えられる。
 臨床的研究から生物学的因子の1つであるLPSのSHSの病態への関与の可能性、また高脂血症治療薬(陰イオン交換樹脂製剤)がコレステロールとともに脂溶性のVOCの排出を促し、症状の軽減に寄与する可能性、知覚神経C-fiberの病態への関与の可能性、VOC短期大量曝露の一過性SHS様症状、嗅覚異常発現を示唆する成績が得られた。
 さらに発症前の生活習慣に関する調査では健常者に比べ有意にa.飲酒習慣、b.喫煙習慣、c.運動習慣が有意に低かった。
 動物実験からはFAやVOCの反復曝露が知覚神経の過敏亢進と免疫系におけるTh2へのシフトすることが明らかになり、これはSHSと類似の病態と考えられた。
 また動物実験からFAがVOCsに比べ最もその病態を引き起こす作用が強いことも明らかにされた。
結論
結果の項で述べた発症・軽快、悪化に関する4つの条件を診断基準とすれば最も特異的なSHSの診断が可能であることが明らかになった。
 病態には動物実験や臨床研究からから反復するVOC曝露による知覚神経過敏(知覚神経の過剰分布)と免疫系のTH2へのシフトの関与が示唆される。

公開日・更新日

公開日
2006-04-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200501209C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 カプサイシン吸入咳誘発試験により、SHSではC-finerの過敏性亢進があること、動物実験ではホルムアルデヒド(FA)や芳香族有機化合物はC-fiber を介する神経原性炎症を惹起すること、その刺激作用はFAが最も強いことを明らかにした。
 FA反復曝露動物モデルにより知覚神経(C-fiber を含む)の過剰分布と免疫系のTH2シフトが病態に大きく関与している可能性を示唆する成績が得られた。
臨床的観点からの成果
 患者記述用調査票の解析から特異的な症状、原因と思われる物質を抽出できる疾患単位としてのSHSの診断基準案を作成。
 SHS発症前の生活習慣では飲酒習慣、喫煙習慣、運動習慣が有意に少ない。
 解剖実習担当教官、実習生などの検討からFAの大量短期曝露にみられるSHS様症状は一過性。
 眼病変はとくに好酸球を介する反応が強く、組織障害性反応が病態形成に関与。生物学的因子としてエンドトキシンが関与する可能性と血液中のtVOCを減少に伴い症状の軽快する毒性学的機序の関与を示唆する症例を経験。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
9件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
32件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-11-20
更新日
-