化学物質リスク評価における定量的構造活性相関に関する研究

文献情報

文献番号
200501160A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質リスク評価における定量的構造活性相関に関する研究
課題番号
H15-化学-003
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
林 真(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
研究分担者(所属機関)
  • 鎌田栄一(国立医薬品食品衛生研究所 総合評価研究室)
  • 広瀬明彦(国立医薬品食品衛生研究所 総合評価研究室)
  • 青木康展(独立行政法人国立環境研究所 化学物質環境リスク研究センター 健康リスク評価研究室)
  • 広野修一(北里大学 薬学部)
  • 山添 康(東北大学大学院 薬学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
既存化学物質リストには約2万以上の化学物質が登録されているが,安全性の情報は皆無に等しい。しかし,全ての化学物質について一律の試験を行うことは非現実的であり、(定量的)構造活性相関((Q)SAR)の有効利用が必須である。化学物質のリスク評価上必要な試験項目について、国際的に汎用されている(Q)SARモデルの検証を行い、アルゴリズムの改良を行うと共に、標的分子との結合能を指標にした3D-QSARの方法開発、毒性予測におけるCoMFAモデルの適用性、化学物質の代謝活性化予測モデルの構築を目的とする。
研究方法
染色体試験用の(Q)SARモデルの精度向上を行い、その精度を比較する。AMES試験において文献上の結果とin Silicoでの結果で齟齬が見られた化学物質について、再実験を行う。反復投与毒性試験を指標にした3次元構造活性相関モデルに関しては、肝毒性について、PPAR結合活性を測定し、肝毒性との相関を検討する.化学物質の代謝活性化の予測モデルに関しては、ヒトCYP1A2の基質特異性と代謝反応部位を予測する手法を開発した。
結果と考察
染色体試験用(Q)SARモデルの精度向上のため、ClassPharmerを使用して共通構造を抽出し、各モデルに反映して精度向上につなげた。さらに、AMES試験結果とin silicoの結果が異なっていた化合物について再試験したところ、2物質において文献結果と齟齬が見られた。種々のCoMFAモデルの構築に関する研究で作製された、3D-QSARモデルを使用することで新規リガンドのPPARα結合活性を予測出来ることが明らかになった。化学物質の代謝活性化の予測モデルに関しては、ヒトCYP1A2の基質特異性と代謝反応部位を予測する手法を開発した。
結論
染色体試験用(Q)SARモデルについて改良した結果、精度の向上が見られた。AMES試験に関して予測結果が整合しなかった化合物の一部は,試験結果を再現することができなかった.反復投与肝毒性予測のために、物理化学パラメータの他にPPARの活性値等を考慮する必要のあることが判明した。CoMFAモデルの構築に関しては、PPARαアゴニストに加え、アンタゴニストでも毒性発現に至る可能性があることを示した。ヒトCYP1A2の代謝可否と酸化部位の特定が可能となった。

公開日・更新日

公開日
2006-06-06
更新日
-

文献情報

文献番号
200501160B
報告書区分
総合
研究課題名
化学物質リスク評価における定量的構造活性相関に関する研究
課題番号
H15-化学-003
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
林 真(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
研究分担者(所属機関)
  • 鎌田 栄一(国立医薬品食品衛生研究所 総合評価研究室)
  • 広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所 総合評価研究室)
  • 青木 康展(独立行政法人国立環境研究所 化学物質環境リスク研究センター 健康リスク評価研究室)
  • 広野 修一(北里大学 薬学部)
  • 山添 康(東北大学大学院 薬学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
既存化学物質リストには約2万以上の化学物質が登録されているが,安全性の情報は皆無に等しい。しかし,全ての化学物質について一律の試験を行うことは非現実的であり、(定量的)構造活性相関((Q)SAR)の有効利用が必須である。国際的に汎用されている(Q)SARモデルの検証を行い、アルゴリズムの改良を行うと共に、安全性評価のための決定樹の構築を行う.また,標的分子との結合能を指標にした3D-QSARの方法開発、毒性予測におけるCoMFAモデルの適用性、化学物質の代謝活性化予測モデルの構築を目的とする。
研究方法
Ames試験ならびに染色体試験用の(Q)SARモデルについての精度向上を、質の高いデータベースを用いて行う。また,複数のモデルで統一的に予測不可能である化学物質に対しては実際のAMES試験を行い、試験結果の信頼性を確認する。反復投与毒性試験用のモデル化は、まず肝毒性について行う。3次元構造活性相関モデルに関しては、肝毒性、染色体の数的異常誘発性について行い、ヒトCYP1A2代謝活性予測モデルを代謝データベースに基づいて構築する。
結果と考察
変異原性予測のための(Q)SARモデルの精度向上を行うことができた。化学物質安全性評価のための決定樹を、検討物質の分子量を組み込み,3種類の(Q)SARモデルの結果を組み合わせる戦略を用いて構築した。反復投与毒性の予測システムについては,肝毒性を示す物質の共通構造を抽出し、各モデルに反映した。種々のCoMFAモデルの構築に関する研究で作製された、3D-QSARモデルを使用することで新規リガンドのPPARα結合活性を予測出来ることが明らかになった。化学物質の代謝活性化の予測モデルに関しては、ヒトCYP1A2の基質特異性と代謝反応部位を予測する手法を開発した。
結論
複数の(Q)SARモデルを組み合わせて用いることにより,化学物質の遺伝子突然変異ならびに染色体異常誘発性を精度良く予測できる決定樹を構築することができた.反復投与毒性結果の予測に関しては、今後の課題となった。3D-QSARモデルの構築に関しては、PPARαならびにチュブリンとの結合性に関する知見を得、ヒトCYP1A2の代謝活性予測モデルと共に今後統一システムを構築することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2006-06-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200501160C

成果

専門的・学術的観点からの成果
毒性評価の為の(Q)SARモデルを使用した決定樹の作成を行い、AMES試験ではほぼ使用に耐えうる状況になったが、染色体試験と反復投与試験については、さらに個々のモデルの信頼性向上に努めると共に、反復投与試験では作用機序のメカニズムを(Q)SARに反映することの重要性が示された。また、ヒトCYP1A2の代謝データを収集し、酵素3Dモデルに依存することなく、代謝データから条件を導くことで予測可能な手法構築に成功した。
臨床的観点からの成果
本研究は一般化学物質の安全性評価作業の効率化を目的としている。最終的には国民の化学物質による危険性を迅速に軽減することが可能となる。
ガイドライン等の開発
今後、OECDを中心とした国際的な動きの中で、(Q)SARモデルを使用した化学物質の安全性評価におけるガイドラインの作製が行われる可能性がある。その際はこの研究成果を提案する。
その他行政的観点からの成果
薬事・食品衛生審議会薬事分科会化学物質安全対策部会化学物質調査会において、AMES試験用の予測決定樹を用いて新規化学物質の予測結果を参考資料として提出している。また、OECDの(構造)活性相関ワーキンググループに参画している。
その他のインパクト
平成17年5月に開催された「第1回カテゴリーシンポジウム」において本研究班の成果を公表した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hayashi M, Kamata E, Hirose A et al.
In silico assessment of chemical mutagenesis in comparison with results of Salmonella microsome assay on 909 chemicals
Mutation Research , 588 , 129-135  (2005)
原著論文2
R.Ueda, H. Iketaki, Y. Yamazoe et al.
A common regulatory region functions bi-directionally in transcriptional activation of the human CYP1A1 and CYP1A2 genes
Mol. Pharmacol. , 69 , 1924-1930  (2006)
原著論文3
Tsuchida K, Chaki H, TakakuraT, Kotsubo H, Tanaka T, Aikawa Y, Hirono S, et al.
Discovery of Nonpeptidic Small-Molecule AP-1 Inhibitors: Lead Hopping Based on Three-Dimensional Pharmacophore Model
J.Med.Chem. , 49 (1) , 80-91  (2006)

公開日・更新日

公開日
2013-04-02
更新日
-