電子カルテシステム導入が診療記録の質に与えた影響と、その結果としての医療の質の改善の評価に関する研究

文献情報

文献番号
200501348A
報告書区分
総括
研究課題名
電子カルテシステム導入が診療記録の質に与えた影響と、その結果としての医療の質の改善の評価に関する研究
課題番号
H17-医療-038
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
阿曽沼 元博(国際医療福祉大学 国際医療福祉総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 梅里 良正(日本大学医学部 医療管理学)
  • 鳥羽 克子(国際医療福祉大学 医療管理経営学科)
  • 中村 清吾(聖路加国際病院 ブレストセンター)
  • 内藤 恵子((医)高邦会 高木病院 予防医療センター)
  • 小出 大介(東京大学大学院医学系研究科クリニカルバイオインフォマティックスユニット)
  • 開原 成允(国際医療福祉大学 副学長)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は,紙の診療録と、標準化を前提として原則的にSOAPの形式で記載されている電子化診療録を比較し、情報の質や量及び記載内容の質的変化を明らかにするものである。そして、その変化が医療の質的向上や患者安全の向上にどの様に寄与したかを併せて明らかにする。電子カルテシステム導入が診療録の質的向上をもたらし、そのことが医療の質向上と患者安全に具体的にどう影響したかを具体的に検証する。更に検証結果を基に医療の質向上や患者安全の向上に寄与する電子カルテシステムが具備すべき機能を具体的なガイドラインとして示すものである。
研究方法
今年度は、電子カルテシステム導入済病院の1病院で導入前の紙の診療録と電子化診療録の量的チェック(胃潰瘍,子宮筋腫,前立腺肥大,乳癌,肝癌,胆石症)を、また未導入の1病院で紙の診療録を、導入済1病院では電子化診療録の量的チェックを行い評価・分析する。併せて、医療の質を測る目安となる臨床指標(CI)の測定を退院患者(糖尿病及び救急医療診療として脳血管障害と心筋梗塞とし、夫々30症例抽出)についてレトロスペクティブに試みる。なお、本調査は想定した研究方法の検証としてのパイロットスタディとしても有効であると考えた。更に導入済み71病院に対して,「電子カルテシステムの機能調査及び利活用状況」を把握するためアンケート調査を実施した。
結果と考察
 本年度は、広範なデータ収集を行い基礎的資料を作成したが、多くの課題も明らかになった。例えばカンファレンス記録、問題点リスト作成などは病院間格差が大きく、調査員も診療録情報管理士・医師・看護師・学生等と多種多人数(12名)であった為、統一調査規格を作成し、綿密な計画策定と意識のすり合わせを行ったが、記載内容の判定で調査の主観混入が避けられなかった。今後、さらに調査対象・項目・方法の再検討を行い、データの確実性検証を行う。また情報記載の有無や記載密度などについてはさらに調査の必要があること、疾患・診療科・医療者別ごとのバラつき等については今後の検討課題とした。
結論
 量的チェックでは、多くの項目で電子化診療録の優位性が明らかになると共に、質的チェックとしてのCI調査でも、必要情報収集の容易性等大きなメリットがある事を確認できた。今年度のデータ収集と引き続き行っている評価を踏まえ、今年度対象疾患以外の疾患やCI項目の再検討、データ収集方法の改善を行い複数病院に調査フィールドを拡大し、本格的調査を実施する予定である。最終的に電子カルテシステムが診療録の質向上に寄与するツールであるか否かを具体的に検証する。

公開日・更新日

公開日
2007-10-15
更新日
-