院内感染対策の有効性および費用効果に関する研究

文献情報

文献番号
200501268A
報告書区分
総括
研究課題名
院内感染対策の有効性および費用効果に関する研究
課題番号
H15-医療-073
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
新保 卓郎(国立国際医療センター研究所医療生態学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 森本 剛(京都大学医学部附属病院)
  • 松井 邦彦(熊本大学医学部附属病院総合臨床研修センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究3年目の活動として、過去2年の研究結果をさらに精緻にし、費用効果分析を完成させることを目標とした。また、いくつかの研究の報告がピアレビュー誌に受理されることを目指した。
研究方法
メタ分析やその他関連研究の成果を整理した。2005年も過去2年に引き続いて院内での患者調査を行い、院内感染の発症や感染症の治療状況に関するデータを集め、よりデータの信頼度を高めた。そして、費用効果分析を行った。費用効果分析の実施にあたっては、TreeAge Proを用いて決断樹によるモデルを構築し、メタ分析結果や院内調査から得られた結果を入力し、確率的感度分析を行い検討した。
結果と考察
一般病院における院内感染対策の費用便益分析を行ったところ、Infection control team (ICT)の導入でネットベネフィットが得られ、院内感染症が6.79/1000 patient-daysの250床の一般病院(年間医療費収入約47.5億円)で、院内感染対策を行う専任の医師と看護師を一人ずつ雇い、感染対策を進めることで、約2億円の医療費の節約となることが推定された。さらに、費用効果分析を行ったところ、ICTの導入はこれをしない場合に比べて、効果が大きく、かつ費用を最終的には小さくする介入であることが示された。Monte Carlo simulationを用いた感度分析でも、この結果がrobustであり、変数の不確実性による影響は小さいことが示された。
また関連した研究の英文論文数報が受理された。一つは、水うがいによる上気道炎の予防効果をランダム化比較試験で検討した研究である。冬季に水でうがいをすることにより、上気道炎の罹患率を0.64まで小さくすることを示した。あるいは、入院患者において菌血症を発症しているか否かを臨床所見などから予測する臨床予測式を開発した研究、抗癌剤による化学療法中の抗真菌薬による治療の費用効果性を検討した研究、また1才以下の小児に対するoseltamivirの安全性を検討した研究などが受理・報告された。
結論
ICTの導入などの院内感染対策は、効果が高く、また最終的には費用を小さくする介入であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2018-06-06
更新日
-

文献情報

文献番号
200501268B
報告書区分
総合
研究課題名
院内感染対策の有効性および費用効果に関する研究
課題番号
H15-医療-073
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
新保 卓郎(国立国際医療センター研究所医療生態学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 森本 剛(京都大学医学部附属病院)
  • 松井 邦彦(熊本大学医学部附属病院総合臨床研修センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
院内感染対策は重要と考えられているが、その対策には費用が必要である。特に出来高払いの健康保険支払い方式では病院に負担が生じる。このような院内感染対策が費用対効果という点で優れているのかを検討した。
研究方法
院内感染対策(Infection control team: ICTやサーベイランス)の有効性についてメタ分析を行い、このような活動により院内感染の発症率がどの程度減少するかを検討した。また舞鶴市民病院、洛和会音羽病院にて、2003年から2005年にかけ、各年の10月から12月に入院した患者について医師と医事経験者が独立して診療録をレビューし、院内感染症の発症状況や、感染症の治療状況を検討した。このような情報に基づき、費用便益分析や費用効果分析を行った。
結果と考察
メタ分析により、院内感染対策組織の介入により院内感染全体の発症率は39%減少すると考えられた。各部位別では、手術部位感染は11%、肺炎は41%、血流感染は52%、尿路感染は33%の減少が推定された。介入方法による影響力の違いとしては、全院内感染では教育だけでは32%の減少であったが、サーベイランスを併用する事により43%の減少となり、サーベイランスを同時に行うことの有効性が確認された。各部位別の介入内容毎の効果の大きさでは、部位ごとにより効果の大きさが異なる事が明らかとなった。
 また、病院での調査により、新しい感染症教育・対策が市中肺炎の治療に与える影響を評価したところ、院内全感染症症例に対するカルバペネム系抗菌薬の使用が減少し、抗菌スペクトラムが狭域なβラクタム系抗菌薬の使用比率が増加していることが示された。
一般病院における院内感染対策の費用便益分析を行ったところ、ICTの導入ではネットベネフィットがあり、院内感染症が6.79/1000 patient-daysの250床の一般病院(年間医療費収入約47.5億円)で、院内感染対策を行う専任の医師と看護師を一人ずつ雇い、感染対策を進めることで、約2億円の医療費の節約となることが推定された。さらに、費用効果分析を行ったところ、ICTの導入はこれをしない場合に比べて、効果が大きく、かつ費用を小さくする介入であることが示された。Monte Carlo simulationを用いた感度分析でも、この結果がrobustであり、変数の不確実性による影響は小さいことが示された。
結論
ICT導入などの院内感染対策は、効果が高く、また最終的には費用を小さくする介入であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2018-06-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200501268C