ナンセンス変異型筋ジストロフィーのリードスルー薬物による治療法の確立

文献情報

文献番号
200500805A
報告書区分
総括
研究課題名
ナンセンス変異型筋ジストロフィーのリードスルー薬物による治療法の確立
課題番号
H16-こころ-027
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
松田 良一(東京大学大学院 総合文化研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 池田大四郎(財団法人 微生物化学研究会 微生物化学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
9,482,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 点変異により生じた未熟終止コドン(PTC)を薬物により読み越え【リードスルー】させ,野生型正常タンパク質を作らせることができれば,単一遺伝性疾患の3割を占めるナンセンス変異型筋ジストロフィーの化学治療が可能になる。本研究は,独自のリードスルー活性解析系となるトランスジェニック(Tg)マウスを用いてリードスルー薬物の投与経路や投与量の最適化を行い,リードスルー薬物のナンセンス変異型筋ジストロフィーに対する治療効果を検証する。
研究方法
 3種のPTCをそれぞれ挿入したβ-ガラクトシダーゼとルシフェラーゼのデュアルレポーター遺伝子を組み込んだトランスジェニック(Tg)マウス3系統を作成し,アミノグリコシド系抗菌性物質製剤及びin silico三次元データ解析により105万種以上の化合物から選定された,ネガマイシンの立体配位形成に適合する類似物質から選定した化合物をTgマウスに一週間連日皮下/経皮投与した後,大腿部骨格筋組織抽出液のルシフェラーゼ活性とβ-ガラクトシダーゼ活性をルミノメータで定量し,リードスルー活性をルシフェラーゼ/β-ガラクトシダーゼとして算出した。
結果と考察
 TAA,TAG,TGAのPTCをそれぞれ挿入したデュアルレポーターTgマウス3系統を確立し,in silico検索により選定された化合物群のリードスルー活性を検討したところ,現在までに新規リードスルー惹起物質を4種見出し,これらは比較的低分子であることから,今後の開発に期待をもつことができる。また,ゲンタマイシンC1aのジヒドロ体であるシソマイシンや,ゲンタマイシンC2bであるミクロノマイシンのリードスルー活性を確認した。皮膚外用剤によるリードスルー活性の評価を等用量のゲンタマイシンの経皮/皮下投与の比較から,経皮投与による高いリードスルー活性を確認した。皮膚を介した投与法は,局所的に適用することが可能で,消化器系副作用が少なく,持続性があり,投与による負担を軽減できるなど有用性が高いと考えられる。
結論
 リードスルー活性を測定するためにデュアルレポーター遺伝子を持つTgマウスを作成した。これらを用いてゲンタマイシンやネガマイシンの類似物質のリードスルー活性を検討したところ,4種の新規リードスルー惹起物質を見出した。また,経皮治療システムでナンセンス変異型筋ジストロフィーを克服する可能性を提示した。

公開日・更新日

公開日
2006-04-18
更新日
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