パーキン蛋白の機能解析と黒質変性及びその防御

文献情報

文献番号
200500786A
報告書区分
総括
研究課題名
パーキン蛋白の機能解析と黒質変性及びその防御
課題番号
H16-こころ-018
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
服部 信孝(順天堂大学医学部神経学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 啓二(東京都臨床医学総合研究所)
  • 高橋 良輔(京都大学医学部神経内科)
  • 澤田 誠(名古屋大学環境医学研究所脳生命科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
パーキンソン病 (PD) の本質的原因究明は、進行阻止可能な創薬を可能にすると考えており、単一遺伝子異常である遺伝性パーキンソン病の原因遺伝子産物の機能解明は、最も有効な孤発型PDの病態解明戦略と考えている。本課題では、パーキン遺伝子異常に伴う常染色体劣性若年性パーキンソニズムの解明から黒質神経変性の機序解明を目指すことを目的とする。
研究方法
遺伝子改変モデルとして、パーキンノックインマウス、パーキンノックアウトマウスの作製し、行動学的、組織学的、生化学的検討を行った。またパーキンの基質であるパエル受容体をアデノウィルスベクターに組み込み正常マウス及びパーキンノックアウトマウス、小胞体シャペロンORP150ノックアウトマウスに注入して細胞死の有無を検討した。遺伝学的アプローチでは、更に症例数を増やしてパーキン遺伝子変異陰性例について検討した。マイクログリアの細胞死への関与も検討した。
結果と考察
パーキン陰性例では、新たにα-synucleinのduplicationの症例がわが国にも存在することが分かった。またlate-onset PDで劣性遺伝形式を呈する家系が西日本に集中して存在していることが分かった。パーキン遺伝子変異解析では、約30症例についてヘテロ接合体で発症することが分かり、現在変異分布と発症年齢の関係について解析している。パーキンの機能解析については、in vitroの系では、複数のmonoubiquitin化を触媒することが分かった。またパーキンノックインマウスの解析では、ドパミン遊離の低下を主因とするドパミン代謝異常が観察された。パエル受容体を正常マウスに注入すると小胞体ストレスが誘導され、細胞死が惹起された。またこの現象は、パーキンノックアウトマウスでより増強された。これら所見は、パーキンがシナプス小胞輸送や小胞体ストレスへの関与を示すものと考える。また、マイクログリアの毒性転換にNef関連分子の関与を明らかにした。
結論
パーキン遺伝子変異陰性例の一部は、α-synucleinのmultiplication, PINK1, LRRK2変異が存在した。またautosomal recessive late-onset PDの家系が存在することが分かり、現在マッピングを行っている。パーキンの機能としては、リガーゼであるがmonoubiquitin化にも関与していることが分かった。またパーキンノックインマウスの解析で、ドパミン遊離に関与していることが判明した。パエル受容体による小胞体ストレスによる細胞死は、パーキンノックアウトマウスで増強されることが分かった。

公開日・更新日

公開日
2006-04-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-10-30
更新日
-