自殺企図の実態と予防介入に関する研究

文献情報

文献番号
200500782A
報告書区分
総括
研究課題名
自殺企図の実態と予防介入に関する研究
課題番号
H16-こころ-012
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
保坂 隆(東海大学医学部基盤診療学系)
研究分担者(所属機関)
  • 人見佳枝(近畿大学医学部精神神経科学)
  • 伊藤敬雄(日本医科大学精神神経科学)
  • 酒井明夫(岩手医科大学神経精神科学)
  • 黒木宣夫(東邦大学医学部付属佐倉病院精神神経医学研究室)
  • 増子博文(福島県立医科大学医学部神経精神医学)
  • 岸 泰宏(埼玉医大精神科)
  • 町田いづみ(明治薬科大学医療コミュニケーション学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
2,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
自殺者数を減少させるためにはまず自殺企図者の背景を調べることが必要である。本研究では1,000例の自殺企図者の背景因子を明らかにするために,多施設研究を行った。第2の研究としては,ハイリスク・グループとして,在宅介護者の希死念慮を調査した。
研究方法
三次医療施設の救命救急センター4カ所で,共通したケースカードを用いて自殺企図者のケースを集積しその背景因子などを分析した。
第2の研究では,うつ状態を測る質問表などを作成して,在宅介護者の希死念慮を調査した。
結果と考察
研究開始から2年目で目標としていた1,000例を超え,1,025例が集積できた。1回目の自殺企図に限って分析を行ったところ,既遂者のほうが未遂者よりも有意に高齢であり,既遂者は男性で多かった。自殺未遂も既遂も,事前に周囲(家族・友人・医師ら)に相談することは少なく,1回目の企図で完遂してしまう深刻な群では,男性で1割,女性で2割しか周囲に相談していなかった。自殺既遂者が130例集積されたが,どの年齢にもピークがなく若年層から高齢者まで等しく多かった。さらに,既遂例の自殺企図の手段は,飛び込み,飛び降り,焼身,縊頸などが多かった。また,自殺既遂例130例中自殺企図回数が不明だったケースを除いた85件中の76件(約90%)は1回目の企図であった点は非常に重要である。さらに,未遂例に対した既遂例の特徴は,①男性であること,②高齢であること,③精神科の既往歴がないこと,④同居者がいないこと,⑤初回の自殺企図であること,⑥事前に周囲に相談していないこと,⑦短期間でのストレスは少ないこと,⑧うつ病であること,⑨手段が飛び降り・飛び込み・焼身・縊頸であること,⑩希死念慮が強いこと,などであった。
在宅介護者8,000人の調査結果から,在宅介護者の4人に1人はSDSによる軽度以上のうつ状態がみられ,65歳以上の高齢介護者にあってはその3割以上に希死念慮があり,そのほとんどは適切な治療を受けていなかった。介護保険導入後,急速に増加しつつある在宅介護者が,自殺の一次予防の対象ともなるべきハイリスク・グループであることが明らかになった。
結論
交通事故死に関して言えば,春と秋に行われる交通安全週間の効果と思われるが,1万人以上の交通事故死は平成17年には7,000人以下に激減してきた。それを考えると,「自殺予防週間」ならぬ「こころの安全週間」を新設すれば,予想以上の効果が期待できるのではないかと思い提言としたい。

公開日・更新日

公開日
2006-05-24
更新日
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