文献情報
文献番号
200500760A
報告書区分
総括
研究課題名
神経伝達機能イメージングを用いた機能性精神疾患の治療効果の客観的評価法および診断法の確立に関する研究
課題番号
H15-こころ-003
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
大久保 善朗(日本医科大学精神医学教室)
研究分担者(所属機関)
- 須原 哲也(独立行政法人放射線医学総合研究所・分子イメージング研究センター)
- 松浦 雅人(東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科)
- 加藤元一郎(慶応大学医学部精神神経科学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
39,710,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
Positron Emission Tomography (PET)による神経伝達機能イメージングの技術を用いて、1)薬理治療研究として:抗精神病薬・抗うつ薬の作用・副作用と脳内特異的作用点の変化との関連を調べ、治療効果の客観的評価法を確立し、合理的治療法の開発を行う。さらに2)病態診断研究として:統合失調症および気分障害患者など機能性精神疾患の神経伝達機能の異常を調べ、病態診断および早期診断法の開発を目指した。
研究方法
1)薬理治療研究として:抗精神病薬および抗うつ薬による治療効果および副作用とドパミン(DA)およびセロトニン(5-HT)系の機能変化の関連を調べ、向精神薬による治療効果の客観的評価法の確立を目指した。うつ病に用いられる薬物療法以外の電気けいれん療法(ECT)や反復性経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)のDAや5-HT系への影響を調べた。
2)病態診断研究として、精神疾患のドパミン(DA)およびセロトニン(5-HT)神経伝達機能の異常を調べた。
2)病態診断研究として、精神疾患のドパミン(DA)およびセロトニン(5-HT)神経伝達機能の異常を調べた。
結果と考察
1)薬理治療研究では、抗精神病薬の中には受容体占有率の点から臨床用量の見直しをする必要な薬剤があることを明らかにした。抗うつ薬による5-HTトランスポーター占有率の経時変化から血中濃度と脳内作用の乖離を明らかにした。ECT前後における5-HT1A受容体結合能には統計学的には有意な変化は認められなかった。同様にrTMS前後でうつ症状は改善したが線条体の[11C]raclopride 結合能の変化を認めなかった。
2)病態診断研究では、DAトランスポーター(DAT)の評価のため[11C]PE2Iを用いて、統合失調症のDATの予備的評価を行ったが、線条体および視床において、統合失調症と健常者では結合能に有意差を認めなかった。しかし、[11C]DOPAを用いた神経終末のDA合成能の評価では統合失調症患者の前部帯状回と尾状核においてはDA合成能の亢進を認めた。この所見は統合失調症におけるドパミン仮説を支持する。さらに、MRI、MEG、神経心理検査を用いた高次脳機能測定によって、統合失調症や妄想性障害などの病態の一端を明らかにした。
2)病態診断研究では、DAトランスポーター(DAT)の評価のため[11C]PE2Iを用いて、統合失調症のDATの予備的評価を行ったが、線条体および視床において、統合失調症と健常者では結合能に有意差を認めなかった。しかし、[11C]DOPAを用いた神経終末のDA合成能の評価では統合失調症患者の前部帯状回と尾状核においてはDA合成能の亢進を認めた。この所見は統合失調症におけるドパミン仮説を支持する。さらに、MRI、MEG、神経心理検査を用いた高次脳機能測定によって、統合失調症や妄想性障害などの病態の一端を明らかにした。
結論
PETで測定した脳内占有率の観点からは現在の向精神薬の中に用量設定の見直しが必要なものがある。また抗精神病薬や抗うつ薬の中には血中濃度と脳内占有率の乖離が認められることが明らかになった。以上から、今後、脳内動態を考慮した科学的な処方法の設定が望まれる。さらに、病態診断研究を通じて統合失調症および妄想性障害の病態の一端を明らかにした。
公開日・更新日
公開日
2006-06-27
更新日
-