薬剤耐性菌の発生動向のネットワークに関する研究

文献情報

• 文献番号: 200500653A
• 報告書区分: 総括
• 研究課題名: 薬剤耐性菌の発生動向のネットワークに関する研究
• 課題番号: H15-新興-010
• 研究年度: 平成17(2005)年度
• 研究代表者(所属機関): 荒川 宜親(国立感染症研究所 細菌第二部)

研究分担者(所属機関)

• 岡部　信彦(国立感染症研究所感染症情報センター)
• 小崎　繁昭(（社）日本臨床衛生衛生検査技師会)
• 畝　博(福岡大学　医学部)
• 武澤　純(名古屋大学　医学部)
• 宮崎　久義(国立病院機構　熊本医療センター)
• 山口　惠三(東邦大学　医学部)
• 吉田　勝美(マリアンナ医科大学)
• 小西　敏郎(NTT東日本関東病院)
• 北島　博之(大阪府立母子保健総合医療センター)
• 藤本　修平(群馬大学　医学部)

• 研究区分: 厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
• 研究開始年度: 平成15(2003)年度
• 研究終了予定年度: 平成17(2005)年度
• 研究費: 15,000,000円
• 研究者交替、所属機関変更: -

研究報告書（概要版）

研究目的

医療現場を脅かす現実的な脅威となっているMRSAやVRE、多剤耐性緑膿菌など様々な薬剤耐性菌の分離状況、薬剤耐性獲得状況、院内感染の発生状況などについて把握する情報ネットワークを構築する。また、薬剤耐性菌などによる院内感染の発生を低減化させるための個別の研究を実施する。

研究方法

厚労省の院内感染対策サーベイランス(JANIS)事業の検査部門、集中治療部門、全入院患者部門、手術部位感染症部門、新生児集中治療部門の5つの部門について、提出データの集積、点検、集計・解析結果、還元など様々な段階における検討やチェックを行いJANIS事業の円滑な運用を支援した。同時に、細菌の同定や薬剤感受性試験法の精度管理法の向上や、研究班用サーバーシステムの構築、院内感染症などから分離された薬剤耐性菌の解析が実施された。

結果と考察

JANIS事業の一般公開集計が、５つの部門で完了した。MRSAの感染率、罹患率については、徐々に上昇している傾向が示唆され、リスク調整された人工呼吸器関連肺炎の感染率が増加傾向にあることが示され、これまで以上にMRSAに対しての実効ある総合的な対策の実施が急務である。手術部位感染症では、概して、直腸や大腸など消化器系の手術で感染症の発生件数や発生率が高い事が確認された。生後28日以内の新生児でMRSA感染症データを抽出、解析した結果、産科の混合病棟の改善が必要である事が強く示唆された。その他NICUにおける感染症は、肺炎、敗血症、尿路感染症が多く、原因菌としてはMRSAが28例(21.2%)を占め、デバイス数が４以上になると感染リスクが急激に増加する事が再確認された。
　最近、大学附属病院などで院内感染の起因菌として問題となっている多剤耐性緑膿菌(MDRP)についても今後の動向を監視して行く必要がある。

結論

国内の医療施設では、様々な対策にもかかわらず、MRSAの分離やそれによる感染症の発生頻度は徐々に増加している可能性が示唆された。また海外で蔓延している第三世代セファロスポリン耐性の大腸菌や肺炎桿菌の分離率は、横ばいあるいは若干減少傾向にある事が伺えるが、多剤耐性緑膿菌(MDRP)の分離頻度は2-3%程度を推移しておりMDRPの動向については今後も注意深く監視と対策を継続する必要がある。NICUへのMRSAの侵入を阻止する為、我が国固有の「混合病棟」の早急な解消と、特に1000g以下の低体重時への感染防止の徹底を図る必要がある事が、疫学的な詳細な解析でも強く支持された。

公開日・更新日

• 公開日: 2006-06-14
• 更新日: -

文献情報

• 文献番号: 200500653B
• 報告書区分: 総合
• 研究課題名: 薬剤耐性菌の発生動向のネットワークに関する研究
• 課題番号: H15-新興-010
• 研究年度: 平成17(2005)年度
• 研究代表者(所属機関): 荒川 宜親(国立感染症研究所 細菌第二部)

研究分担者(所属機関)

• 畝　博(福岡大学　医学部　)
• 岡部　信彦(国立感染症研究所　感染症情報ｾﾝﾀｰ)
• 北島　博之(大阪府立母子保健総合医療センター　)
• 小崎　繁昭(（社）日本臨床衛生検査技師会)
• 小西　敏郎(NTT東日本関東病院)
• 武澤　純(名古屋大学　医学部)
• 藤本　修平(群馬大学　医学部)
• 宮崎　久義(国立病院機構熊本医療センター)
• 山口　惠三(東邦大学　医学部)
• 吉田　勝美(聖マリアンナ医科大学)

• 研究区分: 厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
• 研究開始年度: 平成15(2003)年度
• 研究終了予定年度: 平成17(2005)年度
• 研究者交替、所属機関変更: -

研究報告書（概要版）

研究目的

医療現場での現実的な脅威となっているMRSAやVRE、多剤耐性緑膿菌など様々な薬剤耐性菌の分離状況、薬剤耐性獲得状況、院内感染の発生状況などについて把握する情報ネットワークを構築する。また、薬剤耐性菌などによる院内感染の発生を低減化させるための個別の研究を実施する。

研究方法

厚労省の院内感染対策サーベイランス(JANIS)事業の検査部門、集中治療部門、全入院患者部門、手術部位感染症部門、新生児集中治療部門の5つの部門について、提出データの集積、点検、集計・解析結果、還元など様々な段階における検討やチェックを行いJANIS事業の円滑な運用を支援した。同時に、疫学解析、細菌の試験法の精度管理法の向上、研究班用サーバーシステムの構築、院内感染症分離菌の解析などが実施された。

結果と考察

３年間を通じて、検査部門、集中治療(ICU)部門、全入院患者部門に加え、新生児集中治療室(NICU)部門と手術部位感染症(SSI)部門の各部門の５つのサーベイランス部門について、データ提出のオンライン化や集計の自動化を目指し、各々のサーベイランス部門毎にワーキンググループや研究協力者等の会議を持ち様々な研究が実施された。
その結果、概して言えば、院内感染症の起因菌としては依然としてMRSAが最も多く、感染症としては肺炎が大半を占めている。この数年間に黄色ブドウ球菌に占めるMRSAの割合や院内感染症患者の発生状況には全体としては大きな変動は見られないものの、MRSAによる院内感染症がICUなどで徐々に増加している事などが示唆され、それらの動向については、多剤耐性緑膿菌今後も監視を継続し、実効ある対策が一層重要となっていいる。

結論

MRSAの分離頻度や、それによる院内感染には、急激な増加は見られないものの、MRSAが院内感染症の種たる原因菌である状況は変化していない。また、多剤耐性緑膿菌やESBL産生菌も分離が見られる為、引き続き、薬剤耐性菌の監視と対策強化が必要である。

公開日・更新日

• 公開日: 2006-06-05
• 更新日: -

行政効果報告

• 文献番号: 200500653C

成果

• 専門的・学術的観点からの成果: 国内の多施設の参加を得て薬剤耐性菌の発生やそれによる感染症の発生動向を監視する、厚生労働省の「院内感染対策サーベイランス事業」の運営を、専門的な観点から支援するとともに、疫学的、細菌学的な様々の観点からの研究に関する成果を上げる事ができた。
• 臨床的観点からの成果: 国内では、MRSAやそれによる感染症の発生については、最近、話題になる事は少なくなったが、医療の現場では、依然としてMRSAの分離やMRSA感染症の発生は継続しており、さらに、多剤耐性を獲得した緑膿菌、腸内細菌などの出現と蔓延にも警戒と対策が必要である事が明らかとなった。
• ガイドライン等の開発: 病院感染対策ガイドライン、第３章 ２ 人工呼吸器関連肺炎防止（p６６－７８）等 武澤 純
• その他行政的観点からの成果: 本研究班の支援により実施されている院内感染対策サーベイランス事業の集計解析結果は、厚労省第二回院内感染対策中央会議（３月２２日）で報告され検討が行われ、ホームページに公開された。
• その他のインパクト: 平成１７年度の新興・再興感染症推進事業により、米国ピッツバーグ大学医療センターのDr. Patersonを招聘して、国内の５カ所で医療従事者を対象としたセミナーなどを開催し、好評を得た。

発表件数

• 原著論文（和文）: 28件
• 原著論文（英文等）: 38件
• その他論文(和文): 9件
• その他論文(英文等): 0件
• 学会発表(国内学会): 10件
• 学会発表(国際学会等): 1件
• その他成果(特許の出願): 0件 ; 「出願」「取得」計0件
• その他成果(特許の取得): 0件
• その他成果(施策への反映): 0件
• その他成果(普及・啓発活動): 0件

主な原著論文20編（論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る）

• 原著論文1: N. Shibata, H. Kurokawa, Y. Doi, et al.; PCR classification of CTX-M-type beta-lactamase genes identified in clinically isolated gram-negative bacilli in Japan; Antimicrob. Agents Chemother. , 50 (2) , 791-795 (2006)
• 原著論文2: J. Wachino, H. Kurokawa, S. Suzuki, et al.; Horizontal transfer of blaCMY-bearing plasmids among clinical Escherichia coli and Klebsiella pneumoniae isolates and emergence of cefepime-hydrolyzing CMY-19; Antimicrob. Agents Chemother. , 50 (2) , 531-541 (2006)
• 原著論文3: J. Wachino, K. Yamane, K. Shibatyama, et al.; Novel plasmid-mediated 16S rRNA methylase, RmtC, found in a proteus mirabilis isolate demonstrating extraordinary high-level resistance against various aminoglycosides; Antimicrob. Agents Chemother. , 50 (1) , 178-184 (2006)
• 原著論文4: K. Yamane, J. Wachino, Y. Doi, et al.; Global Spread of Multiple-aminoglycoside-resistance Genes; Emerg. Infect. Dis. , 11 (6) , 951-953 (2005)
• 原著論文5: T. Yagi, J. Wachino,H. Kurokawa, et al. ; Practical Methods for Identification of Class C β-Lactamase-Producing Klebsiella pneumoniae and Escherichia coli Using Boronic Acid Compounds; J. Clin. Microbiol. , 43 (6) , 2551-2558 (2005)
• 原著論文6: H. Nishio, M. Komatsu, N. Shibata, et al.; Metallo-β-lactamase-producing gram-negative bacilli: laboratory-based surveillance in cooperation with 13 clinical laboratories in the Kinki region of Japan; J. Clin. Microbiol. , 42 (11) , 5256-5263 (2004)
• 原著論文7: N. Nagano, Y. Nagano, C. Cordevant, et al.; Nosocomial Transmission of CTX-M-2 β-Lactamase-Producing Acinetobacter baumannii in a Neurosurgery Ward; J. Clin. Microbiol. , 42 (9) , 3978-3984 (2004)
• 原著論文8: J. Wachino, Y. Doi, K. Yamane, et al.; Molecular characterization of a cephamycin-hydrolyzing and inhibitor-resistant class A β-lactamase, GES-4, possessing a single G170S substitution in the Ω-loop; Antimicrob. Agents Chemother. , 48 (8) , 2905-2910 (2004)
• 原著論文9: Y. Doi, J. Wachino, M. Ishiguro, et al.; Inhibitor-sensitive AmpC β-lactamase variant produced by an Escherichia coli clinical isolate resistant to oxyiminocephalosporins and cephamycins; Antimicrob. Agents Chemother. , 48 (7) , 2652-2658 (2004)
• 原著論文10: Y. Doi, J. Wachino, K. Yamane, et al.; Spread of novel aminoglycoside resistance gene aac(6’)-Iad among Acinetobacter clinical isolates in Japan; Antimicrob. Agents Chemother. , 48 (6) , 2075-2080 (2004)
• 原著論文11: K. Yamane, Y. Doi, K. Yokoyama, et al.; Genetic environments of the rmtA gene found in Pseudomonas aeruginosa clinical isolates; Antimicrob. Agents Chemother. , 48 (6) , 2069-2074 (2004)
• 原著論文12: J. Wachino, Y. Doi, K. Yamane, et al.; Nosocomial spread of ceftazidime-resistant Klebsiella pneumoniae strains producing a novel class A β-lactamase, GES-3, in a neonatal ICU in Japan; Antimicrob. Agents Chemother. , 48 (6) , 1960-1967 (2004)
• 原著論文13: Y. Arakawa, Y. Ike, M. Nagasawa; Where has vancomycin-heterogeneously resistant Staphylococcus aureus gone?; Lancet , 363 (9418) , 1401-1401 (2004)
• 原著論文14: Y. Doi, K. Yokoyama, Yamane, et al.; Plasmid-mediated 16S rRNA methylase in Serratia marcescens conferring high-level resistance to aminoglycosides; Antimicrob. Agents Chemother. , 48 (2) , 491-496 (2004)
• 原著論文15: Y. Shiraki, N. Shinata, Y. Doi, et al.; Escherichia coli producing CTX-M-2 β-lactamase in cattle, Japan; Emerg. Infect. Dis. , 10 (1) , 69-75 (2004)
• 原著論文16: K. Yokoyama, Y. Doi, K. Yamane, et al.; Acquisition of 16S rRNA methylase gene in Pseudomonas aeruginosa; Lancet , 362 (9399) , 1888-1893 (2003)
• 原著論文17: N. Nagano, N. Shibata, Y. Saitou, et al.; Nosocomial Outbreak of Infections by Proteus mirabilis That Produces Extended-Spectrum CTX-M-2 Type β-Lactamase; J. Clin. Microbiol , 41 (12) , 5530-5536 (2003)
• 原著論文18: N. Shibata, Y. Doi, K. Yamane, et al.; PCR Typing of Genetic Determinants for Metallo-β-Lactamases and Integrases Carried by Gram-Negative Bacteria Isolated in Japan, with Focus on the Class 3 Integron; J. Clin. Microbiol , 41 (12) , 5407-5413 (2003)
• 原著論文19: H. Kurokawa, N. Shibata, Y. Doi, et al.; A new TEM-derived extended-spectrum β-lactamase (TEM-91) with an R164C substitution at the Ω-loop confers ceftazidime resistance; Antimicrob. Agents Chemother. , 47 (9) , 2981-2983 (2003)
• 原著論文20: J Alba, C. Bauvois, Y. Ishii, et al.; A detailed kinetic study of MOX-1, a plasmid-encoded class C beta-lactamase; FEMS Microbiol. Lett. , 225 (2) , 183-188 (2003)

公開日・更新日

• 公開日: 2016-06-27
• 更新日: -